短編2
  • 表示切替
  • 使い方

覗く女

まだ実家から会社に通っているころ、ブラック企業で終電ギリギリまで仕事は日常茶飯事。

その日終電より早い上に珍しく空いていて、座って帰れることに「ラッキー」とその時は思っていました…。

約1時間の帰り道、携帯電話(当時はガラケー)をいじっていると、頭の上からブツブツと声が聞こえる…。

ハッと気が付くと目の前に女の人が立ってる。それもヒザとヒザが当たるような近い距離で。

ちらっと周りを見ると席はガラガラで空いてる席に座ればいいのに…。

酔っ払いかな…と思ってパッと見上げたら、上から見開いた目でこっちを覗き込んでるの。

「うわっ」てビックリして下向いたけど、一瞬だけ目が合っちゃって見えたのはすごく歪な瞳。

まるで紙にインクを垂らしたみたいに瞳の輪郭がぼやけてるの。

「どうしよう…変な奴に絡まれた」って逃げようにもずっと目の前にいるし、顔を近づけてきてるんじゃ…ってくらい声も聞こえるし。

変なことされないように下向いて息を押し殺してたんだけど、女が「〇駅、△駅、×駅」って到着駅をカウントダウンしてるの。

興味のないふりをして黙っていたんだけと、女がボソッと「お前は〇〇〇駅だろ」って、

ビクンって体が反応して自分の目的駅の手前なのに走って降りちゃった。

人間って自己防衛機能っていうのか、危機回避能力っていうのか、意識しなくても体って動くんですね。

プシュー、ってドアの閉まる音がして振り返ったら、女がドアのガラス越しにこっちを見て立ってて、また目が合ったんだけど急に気持ち悪くなって、その場でちょっと吐いちゃった。

電車が出発して女が離れていくと、体が急に楽になったけど、あのまま目を合わしてたらどうなってたんだろう…。

それからしばらくはビクビク通勤してたけど、二度と会うこともなく転職&引っ越ししました。

ここで終われば良いんだけど、最近聞いた噂話でまた体が固まりました。

地元で変な女が現れるらしい…。深夜に住宅街をうろついて、人んちを一軒一軒覗き込んでいるんだって。

まるで誰かを探しているみたいに。

Concrete
コメント怖い
1
5
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
返信