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中編3
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ホテルの汚臭

最近はコロナの影響もあってなくなってしまったけど、以前は年に数回は出張で色んな所に行ってました。

あまり人が行きたがらない現場や勉強会にも率先して行っていました…、ただ仕事を終わらせてから地元の名所を巡ったり、名物を食べる…というのが趣味になっていただけですけど。

この時は一週間前に突然決まった出張で、ホテルや新幹線の手配も大急ぎでする羽目に。

しかし、どの予約サイトを見てもホテルの部屋が埋まっていて予約が取れない。

少し調べてみると地元の国立大学の入試の時期にかかっており、どこのホテルもすべて満室。

宿泊エリアをずらしてみても満室で、

「こりゃ、日帰りで帰ってくるしかないか…」

という思いと、

「経費は会社持ちなんだから、何とか泊まれるところを…」

自分のケチ臭さに呆れながら検索していると、比較的近くのエリアで一室の部屋が空いているのを発見。

ほっと一息ついて予約を入れ、今度は近くの飲食店のチェックを始めました…。

当日、つつがなく仕事を終え、接待という飲み会を終えて、ホテルにチェックイン。

ホテルの外観は年季が入っているけれど、掃除は行き届いていて清潔感のある感じ。

遅い時間にも関わらず、スタッフの丁寧な対応に感謝し部屋に入ると…。

ツーンと鼻の奥にぬめりつくような濃い悪臭。

いわゆるヤニ、タバコの匂いだ。

「確か予約の時は禁煙部屋だったけど…」

ただ、昔は部屋の中で喫煙が当たり前だった時代や、最近まで喫煙室だったんだろうと思い、気にしないでシャツとズボンを脱いでベッドに倒れこんだ。

タバコの匂いは気になったものの仕事の疲れとお酒の酔いで、電気をつけたままウトウトと意識が遠のいていく…。

ふと、匂いが鼻にツンとつき、夜中に目が覚める。

携帯電話を見ると夜中の3時。

部屋に入ってきたときよりも、明らかにタバコの匂いが濃くなっている…。

「空調の具合で喫煙部屋から煙が流れてきてるのかな…?」

ぼんやりとした頭の中で考える…。

しかし二度寝の誘惑には抗えずに、布団の中に潜り込んで、ぼんやりと明日の事を考える。

朝食はホテルのバイキングだけど、時間を合わせるのも面倒だし、食べなくてもいいかなぁ。

枕元の電気スイッチで部屋の電気を切り、再び目を瞑ると…。

フゥーーー

鼻をつくタバコの匂い…。

フゥーーー

フゥーーー

フゥーーー

顔に吹きかけられるようなタバコの悪臭…。

顔に直接吹きかけられているような耐え難い汚臭。

目を開けると真っ暗なはずなのに、白い煙が男の顔の形になって、

フゥーーーっと息を僕の顔に吹きかける…。

その時、ビクンッと無意識に跳ね起きて、逃げ出すために部屋のドアを開ける。

ガガッ!

ドアチェーンがかかっているため、隙間は空くがドアを開くことができない。

パニックになりながらもドアを閉め、ドアチェーンを解除し部屋の外に飛び出す。

もう腰が抜けて立ち上がることもできずに、尻もちをつくような体勢でドアを見つめて…。

…暗闇の中で、誰かにタバコの煙を吹きかけられた。

人間じゃない誰かだ…。

冷静にならなきゃ、冷静にならなきゃ、自分に言い聞かせながら部屋から這いずりながら離れようとする。

エレベーターの前にまで来て、自分の格好がTシャツにパンツ一丁の姿であることに気が付いた…。

その晩はフロントでオートロックで閉め出されたことを説明し、浴衣と毛布を借りて従業員の休憩室で休ませてもらうことに…。

今、考えるとスタッフの人も妙だった。

何があったのかも訊かないし、部屋番号を伝えたら何だかソワソワしていたし。

夜が明けて、ビクビクしながら部屋から荷物を取り出して、逃げるようにチェックアウトしました。

ちょっとだけ気になっているのは、チェックアウトの時に禁煙のはずのフロントがタバコ臭かったこと。

もしかしたら…、連れ出しちゃったかなぁと。 

Concrete
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