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短編1
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体験談 其の壱

これは私が独り暮らしをはじめたばかりの頃の話。

新築のアパートに引っ越して

半年くらい過ぎた頃。

その夜、突然、金縛りに遭いました。

手足や指先どころか、呼吸すらしていない

という事実に、

目覚めて程なく気が付いたのです。

金縛りというのは初めての体験だったので

戸惑っていたのですが、

その視界の隅っこに

人影があるのに気づきました。

それは首を吊られて宙吊りにされている

スーツ姿の男でした。

彼は後ろ姿でしばらくそのままゆらゆらしていて、

そしてやがて消えました。

彼が消えると

呼吸が戻り、指先や手足の感覚も戻り、

躰を起こすこともできるようになったのです。

彼についての心当たりはありません。

その後5年間住んで実家に戻りましたが、

その部屋の借り手は今もいないとのことです

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