短編2
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トンネル

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私の地元には、

「心霊スポット」と呼ばれる場所が

いくつかあります。

その中のひとつに

「幽霊が出没するトンネル」

というものがあります。

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最初に説明してしまうと、

このトンネルは峠道にあり、

住宅地から離れています。

つまりその「彼(少年)」が

そこにいるということ自体が

不自然である、という・・・

よく目撃されていたのは

夕刻、夕焼けの刻限を過ぎて

闇が落ちつつある時刻。

特に雨など悪天候の日。

実際に目撃したことのない人々は、

「気のせい」だとか

「噂システムでそう見えた錯覚」

などと笑い飛ばしていました。

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ある日、

そうやってその話を笑い飛ばしていた友人と

そのトンネルを通る機会がありました。

夕焼けも去り、闇の落ちる刻限。

天候は雨。しかも初冬。

「彼」はそこにいました。

歳は小学生ほど。

冬になろうかというのに薄着の夏服。

雨天なのに傘もさしていない。

行き交う車を眺めるでもなく、

ただ俯いて立ち尽くしていました。

一瞬、そちらに気を取られたらしい友人が

ハンドルを切りそこなうところでしたが、

なんとか持ち直してそのまま通過することが出来ました。

同じ「モノ」が視えていたのは明白でした。

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聞くところによると

「少年」はそのトンネルで事故にあったとかではなく、

事故にあったのは彼の家族なのだといいます。

「彼」は生き残ってしまい、

帰らない家族をそこで待ち続けているのだといいます。

今でも。

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@あんみつ姫
「事故にあった親」は
おそらく充分供養されている
のではないかと思います。
となると、やはり
遺された子供の寂しさ
のようなものが、
「彼」をそこに立たせているのでしょうか。
コメントありがとうございました。

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@塵 様
私も、母親です。もう息子はだいぶ大きくなりましたが、この話からは、親を思う子の心が痛いほど伝わってきます。子が親を思う心は、親が子どもを思うこと以上に強く尊いものです。
お言葉を返すようですが、これはあくまでも私の感想を述べたまでです。親の冥福については、もう十分とむらえているのではないかと思いますが、もし、それができていないのだとすれば、なぜ、そのままにしておくのか理解できませんね。
こういう形で伝わる話は、慎重に扱わなければならないと思います。
以上です。

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@あんみつ姫
実はこの話で一番の問題は
「少年の家族」だと思っています。
その冥福を祈る次第ですよ。

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@あんみつ姫
この少年に関する詳細は不明なのですが、
一説では
本人は遠くの親戚に引き取られた
とも、
後を追った
とも
言われています。

前者であれば生霊的なモノで、
自身はどこかで(それなりに)幸福に暮らしているか、
その暮らしが幸福でないので、
過去を懐かしんでいる可能性もある、
と思われます。

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