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私の地元には、
「心霊スポット」と呼ばれる場所が
いくつかあります。
その中のひとつに
「幽霊が出没するトンネル」
というものがあります。
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最初に説明してしまうと、
このトンネルは峠道にあり、
住宅地から離れています。
つまりその「彼(少年)」が
そこにいるということ自体が
不自然である、という・・・
よく目撃されていたのは
夕刻、夕焼けの刻限を過ぎて
闇が落ちつつある時刻。
特に雨など悪天候の日。
実際に目撃したことのない人々は、
「気のせい」だとか
「噂システムでそう見えた錯覚」
などと笑い飛ばしていました。
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ある日、
そうやってその話を笑い飛ばしていた友人と
そのトンネルを通る機会がありました。
夕焼けも去り、闇の落ちる刻限。
天候は雨。しかも初冬。
「彼」はそこにいました。
歳は小学生ほど。
冬になろうかというのに薄着の夏服。
雨天なのに傘もさしていない。
行き交う車を眺めるでもなく、
ただ俯いて立ち尽くしていました。
一瞬、そちらに気を取られたらしい友人が
ハンドルを切りそこなうところでしたが、
なんとか持ち直してそのまま通過することが出来ました。
同じ「モノ」が視えていたのは明白でした。
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聞くところによると
「少年」はそのトンネルで事故にあったとかではなく、
事故にあったのは彼の家族なのだといいます。
「彼」は生き残ってしまい、
帰らない家族をそこで待ち続けているのだといいます。
今でも。
作者塵