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短編2
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息子

ある初老の男性はとても酒癖が悪く毎日朝から酒を飲み家庭も一切顧みなかった

ある時もう成人していた息子が死んだがそれも男性にはどうでもよく酒を飲み続けた

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とうとうある時肝臓を壊し酒を止めるか死ぬかになり、男性は酒をやめた

それからは毎日が空虚で何をしていいか分からなかった

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ある日ふと死んだ息子の部屋に入ると

息子が小さい頃から大切にしていたオルゴールつきのムーミンの縫いぐるみがあった

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なんとなくネジを巻くとあの歌が流れ始めた

「ねぇムーミンこっち向いて♪…」

その時男性は急にその歌が死んだ息子の声に聞こえてきた

「なぁ親父こっち向いてくれよ…」

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これがあいつが一度も父親らしいことをしなかった俺に本当に言いたかったことじゃないのか…

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すると男性はとても恐ろしくなって

息子の部屋も生きていたときそのままにし

夜には息子の魂が部屋に帰ってくる気がして、明かりもつけたままにした

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息子の魂がいつでも入れるよう息子の部屋の戸は5センチほど開けておいた

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ある日なんとなくテレビを見ていると歴史の番組になり

男性は興味がなかったが、そこに紹介されているある事にびっくりした

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京都に昔からある比叡山延暦寺という寺の一番偉い最澄という僧侶は

今でも魂が毎日帰ってくると考えられていて

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生前暮らしていたお堂の戸は数センチあけられ

毎日食事を備えられているという

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自分が息子への罪悪感から言い訳にやっている行動と

京都の高僧に行われる儀式が同じことに

男性は

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「飲んだくれのままの自分だったら

こんなことも気が付かなかったろう

これで良かったんだ…」と思ったという

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