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中編3
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これは、偶然酒の席で意気投合した。宮下さんが話してくれた話だ。

もう、10年前以上のことになりますけど、私が大学2年生の頃のお話なんですけどもね。

アルバイトで資金を貯めて、なんとか念願の1人暮らしをすることができたのよ。

築15年ほどの建物で、2dk、日当たりもいいし、ゲーセンなど娯楽施設も周りにあって、おまけに大学にも近いという最高の物件で、当時のチャランポランな私にはもったいないぐらいのところだったですけど…

ってもうビールないじゃないですか…定員さん生2つお願いします。

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あん時は、そりゃ講義そっちのけで毎晩飲み歩いてて深夜2時ぐらいに帰るのが当たり前の生活だったんですよ。

蒸し暑い夏の日でしたかね…

そんときは、アルバイト帰りに珍しく飲みにいかず、シラフの状態で家に帰ったんです。

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汗ながそうとシャワー浴びてるときでしたかね、爪先までお湯が浸かっているに気づいたんですよ。

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ありゃ、詰まっちゃったかと思いながら、ゴミを取ろうと排水溝の蓋を外してみたんですよ。

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すると、つーんと匂いがしたらしたんです。なんていうんでしょうね。

ほら、あれですよ、あれ。

プールに溶かすあの、そうです。そうです。

塩素の匂いです。

え?、あの匂いは塩素の匂いじゃないですか!?

尿の成分と反応して…あぁそうなんですか、よく知ってますね。初めて知りましたよ。

む〜、私理系だったんですがね…。お恥ずかしい。もっと勉強しとけばよかったですね。

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おっ、やっと、ビール来ましたね。と言いながら、麦酒一目見た後少し残念そうな顔をして、どうぞ、どうぞ、私に麦酒を勧めてくれた。

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あぁ、すみません。さっきのお話の続きですね。

そんでもって、排水溝の蓋開けてみたんですけど、ゴミとか貯めるカバーあるじゃないですか?

そこにゴミが詰まってると思ったんですけども、なかったんですよ。

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あちゃ~、こりゃ業者さん呼ばないと駄目かな〜と思いながら、できる限りのことをしてみようとカバー外して排水溝の中に手を突っ込んでみたんだよ…。

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そしたら、なんかヌルヌルした物に手があたってね。

それをグッと掴んで引っこ抜いたんですよ。

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本当にね、ベタな話で申し訳ないんだけど一房髪の毛だったんですよ、それ。

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長くて茶色っぽい色合いだったんだ気がしますね。

で、気づいたら風呂場で朝まで寝ていましたよ。いや、気絶したといった方が正しいかもしれませんね…

当然すぐにあの髪を探したんです。…でもね何処にもなかったんですよ。

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日頃の不健康な生活が祟って風呂場で寝てあんな夢を見てしまったと思いましたよ。

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でもね、ふと気づくとあるんですよ…

あのツーンと匂いがする一房の髪が

靴の中、大学の廊下、仕舞には、洋服のタンスの中にごっそりと入っていましたよ。

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当然、親に泣きついてすぐに引っ越しましたよ。前の家より2時間も早く起きないといけなくなりましたが、あの髪から逃げる為だったらどうってことなかった。

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そんでもって引っ越してこれでもう安心だって思ってたんですけども…

そう言って宮下さんは、先程注文した麦酒を少し傾けて中身を見せてくれた。

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そこには、蛇の様にうねる茶色の髪の毛が麦酒の中を漂っていた。

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逃げ切れたと思ったんだけどね…と最後に宮下さんはそう呟いた。

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この話から3年後宮下さんは、穿孔性腹膜炎という病気で37歳の若さで亡くなった。

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