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超短編小説「猫角家の人々」その10

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超短編小説「猫角家の人々」その10

死んだ親父が遺した財産を引き継いでいる老母、92歳。親族は、独身のまま古希を迎えた長女、62歳、ただ一人。老母が死ねば、相続した不動産を処分して、大金が手に入る。だが、老母は痴呆は進んでいるものの、身体の方はいたって元気だ。当分くたばりそうにない。

こんなケースが、「親族部門」の理想的な「カモ」なのだ。ただ一人の親族である62歳長女とねんごろになり、老母の成年後見人となれるよう斡旋してやる。手続きを代行する。成年後見人となった暁には、頃合いを見計らって、老母の財産の処分、換金を密かに始める。老母の財産を処分しても、文句を言う他の親族がいないところが味噌なのだ。下手に弟でもいれば、財産処分を咎められて警察や裁判所が動き出してしまう。

長女62歳は、手にした財産から猫角姉妹に分け前を渡すことを渋るかもしれない。「もともと母さんの財産なんだから、私が相続するのが筋なんだわ。あんたら他人に分け前を上げる筋合いはないわよ。」と。

そこで、62歳長女の欲深さに付け入って、分け前を手に入れる算段をする。「お母さん、もういい加減に充分生きたでしょう?恵子さん、お母さんは92歳じゃないの。お母さんをうまく使ってもっと大金を手に入れる方法があるのよ。」老母に保険金を掛けて、保険金殺人、保険金詐欺を仕込むのだ。億単位の保険金が、ちょっとうまくやれば手に入ると解説された恵子62歳は、欲に駆られて犯行に賛同する。犯罪に加担させることで、分け前を出す気にさせ、共犯者の意識を持たせることで、秘密を守らせる。これで、完全犯罪が仕組めるのだ。母親を殺してまでしても金を欲しがるクズ女、恵子62歳だからこそ、このプロットが仕組めるのだ。

だが、問題は、恵子62歳のような理想的な「カモ」をいかに捕まえてくるかなのだ。漫然と待っていても、カモは葱を背負ってやっては来ない。いかにして網を張り、カモを呼び寄せ捕まえるか?(続く)

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