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超短編小説「猫角家の人々」その9

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超短編小説「猫角家の人々」その9

売却手続きを委託された不動産の代金8500万円を着服した75歳の弁護士。他に3億4千万円を無断で使った恐れがある。97歳の渋谷区の女性の成年後見人となり、土地とビルの売却代金の一部を懐に入れた。元事務員一名とともに警視庁に逮捕された。

合計で、4億を超える横領とは豪気だ。どうせ詐欺をやるなら、このくらいはやりたい。克子と蜜子は、鳩首を巡らす。捕まらないで億単位の金を手に入れる手段はないのかと。

成年後見人制度の利用者は増加している。2010年に14万件だったものが、2013年には17万を超えている。利用者の増加につれて、トラブルも増えている。逮捕はされないまでも、財産の横領や権限の乱用で成年後見人を解任されたケースは、2000年の10件から、2012年の254件と大幅に増加している。

さて、成年後見人として選任される者のうち4割が親族である。それ以外は司法書士が22%、弁護士が17%、社会福祉士が10%といったところだ。親族が成年後見人である場合、子が54%、兄弟姉妹が15%、配偶者が8%だ。

成年後見人制度は平成12年に始まったのだが、親族以外の第三者に任せる割合は、平成17年の22.6%から、平成24年には51.5%まで増加しているのだ。

克子蜜子姉妹は、二つの手口を思い浮かべる。親族を成年後見人に任じるなら、その親族を抱き込んでしまえばいい。司法書士や弁護士が、成年後見人となるなら、その連中と組んで、ボケた婆さんの財産を山分けすればいい。弁護士だって、苦しい時代だ。たちの悪い貧乏弁護士事務所にでも話を持ち掛ければ、渡りに船で乗ってくるはずだ。いずれにせよ、いかに「カモ」を見つけるかがこの事業のポイントだ。

文句を言う親族の少ない高齢の資産家。しかもボケていてくれた方があり難い。当然ながら、97歳の婆さんがくたばってくれた方が、財産を横領しやすいならば、くたばってもらうよう取り計らう必要がある。つまり、簡単な話が「殺し」だ。97歳の婆さんを殺したところで、誰も困らない。むしろ人助けみたいなものだ。蜜子はうそぶく。(続く)

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