超短編小説「猫角家の人々」その12

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超短編小説「猫角家の人々」その12

「まあ、90歳代、80歳代となると、掛けられる生命保険は限られて来るし、保険料も割高になるね。結局、70歳代のぼけ老人にターゲットを定めるべきかな。問題は、どうやって、その辺りのカモを市中から拾ってくるかなんだよね。」

「漫然と待っていても、カモは葱背負ってやってこないわよ。こちらから、アンテナを張って、カモとの遭遇を演出しないとね。」

福祉機器の助成金を詐取する目的であちこちに「形だけ」設置したネコネコハウスの介護施設は、このカモを市井からさらうサルベージ船の役割を果たすことになる。それぞれのネコネコハウスの電話番号は違うが、電話は全て転送され、蜜子の事務所に掛かってくるようになっている。老親を施設に入れて厄介払いしたいお客を一人でも多く捕まえるには、ネコネコハウスの偽支店群が役に立つのだ。

そして、もうひとつ、カモ集客に威力を発揮するのが、外部の協力者である。毎日、体のどこかの不調を持つ患者がやってくる施術院。足揉み専門のモミモミンなるチェーン店の店主が、カモ集めに参画してくれることになる。

「お客さん、だいぶお疲れね。ここ、痛いでしょ?」

「あ、あー痛い~。」

「お仕事きつくないですかね?全身に疲れがたまってますよ。」

「仕事も…やりたくない仕事をいくらやっても大した金にならないし、旦那は、リストラで首になって家でぶらぶらしているし。イヤんなっちゃうわ。おまけに、70歳の義母が早々にボケちゃって、手間がかかるのよ。施設に入れて厄介払いしたいけど、そんな金もないし。八方塞がりよ。」

「奥さん、ワタシ、あなたの問題を解決できるかもよ。お金の心配のない余生を送ってみない?」

「え、そんな都合のいい話、本当にあるの?教えて!教えて!」 (続く)

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