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超短編小説「猫角家の人々」その13

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超短編小説「猫角家の人々」その13

モミモミンの店主、霊図美杏は、中年主婦に絶大な人気を誇る手技の持ち主だ。彼女の専門は「足裏」だ。足裏は、実は、女性にとって女性器、乳房に次ぐほどの性感帯なのだ。中世ヨーロッパでは、足の性感帯を刺激する役目の使用人を抱えていた金持ちもいたという。

特に足の指と指の間への刺激は、女性を頂点へと運んでくれる。足裏を指先で優しく愛撫することで、女性は今まで知らなかった快感に打ち震えるのである。何度か、モミモミンに通った主婦に、霊図美杏店長は、少しづつ、足裏性感帯開発施術を加える。臆面もなく感じまくった主婦は、以後、霊図美杏の言いなりとなる。霊図美杏に甘い眼差しを向け、手技を懇願する。こうなったら、主婦は店長の言いなりである。

頃合いを見計らって、「この精力剤、すごく効くのよ」と、目を熱い濡れタオルで覆われた主婦の二の腕にチクンとシャブの注射器を打つ。シャブの水溶液を入れたインシュリン注射器は、針が極細なので、ほとんど気が付かないうちにシャブが体内に送り込まれる。

霊図美杏の性感手技と相まって、シャブの快感が全身を掛け巡る。さらには、霊図美杏店長が、おもむろに足指に舌技を加える。陶酔の時である。かくして、主婦は、霊図美杏店長の完全奴隷となり、シャブ中毒となり、義母の保険金殺人に賛成させられるのだ。

義母をぶっ殺して金に換えたい中年主婦。これはこれで絵が描ける相手ではあるが、コストが掛かる。義母の死亡時保険金の半分は、主婦に取られてしまう。苦労するのはこっちなのに、実入りが少ない。

一番あり難いのは、カモ本人が網に掛かってくれるケースだ。70代の呆け老人本人が、モミモミンの店にやってくることがある。マッサージ店は、普通なら、この類の客を嫌がる。施術中に粗相をしてベッドを汚したりするからだ。だが、モミモミンの霊図美杏店長は、大喜びで呆け老女を迎える。至れり尽くせりで施術し、喜ばせる。紅茶を飲ませるが、毎回少しづつシャブを溶かし入れておく。15分くらいあとから覚醒効果が発生する。呆け老人は、急に元気になって「モミモミンで足揉んでもらったら、こんなに元気になった!」と喜んで帰っていく。

さて、この婆さん、連れ合いはとっくに亡くなったようだ。子供はいるのか?財産はあるのか?「カモ」なのか「ハズレ」なのか?いろいろ調べなくちゃいけない。だが、調べるにしても、司法書士や弁護士でないと、調べようがない要件がある。だから、悪徳弁護士の加担が必要になってくるのだ。(続く)

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