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死ぬまでにしたい10のこと。

短編2
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死ぬまでにしたい10のこと。

一度は誰もが考えたことがあるだろう『死ぬまでにしたい10のこと』を。

一躍有名となった作品を初めとして、今や多くの作家が取り入れる要素だが、現実で余命宣告を受けた人達も旅立つ前の思い出作りとして行っているらしい。

恥ずかしながら、かくいう私もその内のひとりなのだが、私の場合は別に余命宣告は受けて……いや、ある意味余命宣告みたいなものですね。

そんな私は今、死ぬまでにしたい10のことリストのうち、いよいよ10番目、最後のしたいことを実践しているのです。

それは、高級な料理のフルコースを食べること。

最後にしてはいささかスケールが小さいとは思うのですが、今の私にはこれで充分。少しでも時間を稼げれば良いのですから。

身体を震わせ、震える手付きでフルコースの内、最後のメニューであるカフェ・ブティフール、(いわゆる食後のコーヒーとちょっとした茶菓子)に手を付ける。

実に美味。コーヒーと茶菓子といえど、今まで味わったことの無い程に美味しい。

しかし、これ程のものがあと少しもすれば終わってしまうことに未練を感じてしまう。

あぁ、まだ終わらせたくない。

未練がましくチビチビとコーヒーを啜り、ネズミのように少しずつ茶菓子を齧っていく。

まだ終わらせたくない。

随分と傷だらけな年期の入った椅子が揺れる程に貧乏揺すりをする。

終わらせたくない。

遂にはスープや飲み物、食べカス等が片付けられず、汚れに汚れてしまった机にも貧乏揺すりの振動が伝わり始める。

終わりたくない……!!

瞳から留まることを知らないように、涙が溢れ出す。

そしてーーー

「あ」

その手にあったコーヒーと茶菓子は遂に底を尽きてしまった。

終わってしまった……。

えもいわれぬ喪失感。それと同時に溢れ出す執着感。

「た、頼む……!お願いだから、まだ私を……!」

下手をすれば穴が空く程傷んだ床に這いずるようにして、自分の隣に立っていた男の脚にしがみつく。

「駄目だ」

しかし男は無慈悲にそう言い渡すと、自分の脚にしがみつく男のこめかみに銃口を当てる。

「うちのボスは寛容だからなぁ……とんだミスをしたお前の最後の願いを『死にたくない』以外で全部叶えてやると言い、そして……お前の願い10個位だったか?その全てを叶えて下さったんだ。これ以上は無理だ」

「た、頼むから……!命だk」

shake

パンッッッ

しかし無慈悲にも銃口からは火花が散り、部屋には乾いた音が鳴り響くのだった。

「…………しかしボスも質が悪い。わざわざ殺すことには変わり無いのに、死にたくない以外で願いを複数叶えてやると言って、1つずつ自分の願いが叶う事に近付いてくる死に対して恐怖して発狂する人の姿を見るのが堪らなく面白いだなんてな……」

発砲した銃をホルスターに直しながら、男はボロボロの部屋の片隅にひっそりと備え付けられた監視カメラを見つめ、そう呟くのだった。

Concrete
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