超短編小説「猫角家の人々」その21

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超短編小説「猫角家の人々」その21

一般論ではあるが、女性同性愛者の多い職業というと、看護職、介護職だという。3位が公務員というのが、興味深いが。要するに、人の体を触る仕事にレズビアンが多いということのようだ。レズビアンは、結婚しないし、子供も作れないから、一生自分だけで生きていくしかない。だから、公務員を目指すということらしい。その結果、公務員にレズビアンが多くなる。

看護職にレズビアンが多いということを示唆してくれたのが、福岡の連続保険金殺人犯、吉田純子であった。3人の同僚看護師をレズビアン仲間に引き込んで、女王として君臨した。同僚の看護師の夫二人を殺害して首尾よく保険金詐欺に成功した。同僚の池上某の夫に、池上が睡眠薬と酒を飲ませ眠らせる。その夫に四人はカリウム製剤と空気を注入した。夫は死に、保険金3450万円が支払われた。

カリウム注射は、人を殺すには最適の薬剤である。ほぼ確実に「心停止」する。元々は血液中のカリウム濃度の低い患者に、点滴に混ぜたりして投与するのだが、これを直接静脈に注射すれば、心臓は止まってくれる。さすが、看護師ならではの殺しの手口である。

同僚石井の夫の場合は、睡眠薬と酒で眠らされ、胃にチューブを挿入して酒を直接流し込んで、急性アルコール中毒で死亡するように企んだ。だが、なかなか死なないので、吉田の指示で空気を注射した。石井の夫は、救急車で運ばれ、病院で息を引き取った。保険金3300万円と退職金の大半は、吉田が分捕った。

「急アル」で死亡まで持っていくのは、結構ハードルが高い。だから、極端にアルコール度数の高い酒を無理やり飲ませる。保険金殺人史上名高い、上申書殺人事件の例では、被害者の口を無理やり開けさせ、度数の高い蒸留酒を丸ごと一本、無理やり飲ませている。

空気の注射とは、空気を静脈に送り込むことで空気塞栓を引き起こし殺害する方法である。成人なら、300ミリリットルを注入すれば死亡するという。空気塞栓で亡くなった場合、解剖では死亡原因を特定できないようだ。CTスキャン装置によるオートプシーイメージングが検出に有効と思われるが、未だ、検視段階ではほとんど使われてはいないようだ。それどころか、不自然な死亡例のうち、検視に回されるのは11%程度に過ぎないのだ。吉田純子は、急アル+空気注射なら絶対にばれないと踏んだのだろう。

吉田純子は、やりすぎた。事件は発覚し、女性には珍しく、死刑が執行された。戦後5人目の女囚の死刑執行であった。同僚看護師を操り服従させる場面で役だったのが、レズビアンの技術だった。(吉田に娘が3人いることが痛ましい。3人が、その後どんな人生を送っているかを考えると、心が塞がる思いがする。)

女性同性愛と通常の男女の行為との大きな違いは、前者には「際限がない」ことである。後者は、男性が「果て」てしまえば終了となる。だが、前者は、どちらも果てることがない。延々と続く。7時間も10時間も続くことがある。男女間よりも濃密で深い性関係が築かれるのだ。そのための器具も多用される。電動こけしなど、実は、レズビアンにより使われるケースが多いのだ。

マッサージなどの人の体を触る仕事に従事する者も、人数は少ないが、レズビアン率は異様に高いようだ。(続く)

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