俺は仕事が終わり、いつもの様に電車に乗り
最寄り駅から歩いて自宅のアパートへ帰っている。
心が沈んで足取りも重い。
まさか彼女が飛び降り自殺をするなんて
思ってもみなかった。
最後の夜、あのビルの上で俺が「さよなら」と
言った時、彼女は叫んだ。
「私はそんなの認めない!別れる気なんて全く無いから!!」
「覚えておいて!私はあなたを離さないから!!」
背中でその声を聞き俺は一瞬立ち止まったが、
もう話すことなど無いと無視してその場を立ち去った。
あれが彼女の最期の姿だった。
彼女はそこから飛んだのだ。
葬儀の席では彼女の両親や友人達から憎悪の
視線を浴び焼香をしただけで直ぐに帰った。
居場所なんて無かったから。
今日で初七日になる。
ふと思い返す。
そもそも俺が何故、彼女との別れを決めたのか。
それは彼女の異常なほどの嫉妬心に疲れたからだ。
毎日、朝昼晩、決められた時間に電話をしなければならない。彼女から電話があれば仕事中だろうが何をしていようが出なければならない。携帯の電話帳にある女性の電話番号やメルアドも片っ端から消されてしまった。
それだけじゃ無い。例を上げればきりが無いほど彼女の中では俺の行動の全てが「浮気」へと直結しているかの様だった。
もう限界だったんだ。
思い返しているうちに俺は自宅であるアパートへ着いていた。
鍵を出そうとポケットに手を入れる。
(ん?)
俺の手に鍵では無い丸められた紙の様な物が
手に当たる。
(何だこれ?)
ポケットからその紙を出して広げてみる。
そこには
(これからはずっと一緒だよ。)
と書いてある。
その時だった。
「だから言ったでしょ。あなたを絶対、離さないって…」
生暖かい風と共に彼女の囁く声がした。
作者zero
グロや残酷な話では無いのですが大変後味の悪い怪談になりましたので閲覧注意にさせて頂きました。