おじいさんと小さい男の子

中編3
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おじいさんと小さい男の子

中学校の修学旅行の話。

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何県に行ったかは覚えていないが、東北だったことは覚えてる。

区民なら安く泊まれる保養所があり、そこが宿泊先だった。

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その宿に行くまでに長いトンネルがあり、

そのトンネルは“出る”と有名なトンネルであると、バスガイドさんが話していた。

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バスの中でいつも悪ふざけをしている男子Aが、

「おじいさんと男の子が見えた!」と騒いでいたが、

みんな、またか。といった感じで信じてなかった。

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しばらくバスに乗って保養所に到着。

保養所は何となく暗くて、古い建物だった。

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すごい印象に残っているのが、

赤いフロアマットの廊下の途中

廊下のど真ん中に地下におりる階段があって、

階段は閉鎖されているのだが、

のぞき込むと真っ暗で少し埃っぽい感じがして、すごい怖かった記憶がある。

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それぞれ部屋にいくと、まだまだこどもで

みんな押し入れを開けはじめる。

開けた押し入れの奥には地蔵がずっしりと居座って俺たちに笑いかけていた。

(宿の押し入れに地蔵があるなんで、今考えるとなかなかにおかしな話)

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当時は「やべーよ!地蔵がある!」とか言ってはしゃいでいた。

他の部屋には何があるのか興味がわいた俺たちは、まず隣の部屋におじゃました。

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そしたら隣の部屋の押し入れには、日本人形が何体か入っており

「この宿やべーよ!こえ~」と、期待通り、

いやそれを超える押し入れの中に興奮をしていた。

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その日の夜は肝試しのリクリエーションがあったが

Aは高熱を出したらしく欠席してた。

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翌日、同じクラスの真面目な男子Bがすごく怯えており、

どうかしたのかと声をかけた。

「俺も…。俺もあのトンネルでおじいさんと小さい男の子見えたんだ。

Aはきっと見えちゃったから熱出してるんだと思う…宿もなんか変だし…」

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自分含めてその話を聞いていた周りのクラスメートは少し驚いた。

Bの怯え方も異様、

そもそもBはAと正反対のタイプであり、嘘をつくような生徒ではなかった。

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その日の夜

男子大浴場で事件が起きた。

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突然

バリーーン!!!!!

と大きな音を立てて、

本来なら割れるはずなんてない、大浴場の分厚い窓ガラスが割れたのだ。

しかも外から内側にかけて。

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大浴場の外側は塀があり

塀と風呂場の間は林みたいになっていて、外から風呂場が見えないような構造。

もちろん客はそのスペースに入ることはできなくて、その時外には誰もいなかった。

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割れた大き目のガラスの破片が風呂に浸かっていたBの背中に刺さっており

背中から血がだらだらと出ていた。

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俺も、その場にいたみんなもすぐには状況把握できないくらい突然の出来事。

みんな軽いパニックだった。

Bはものすごく怯えていて、泣いていた。

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その場にいた男子生徒がすぐに先生を呼んできて、先生はすぐに救急車を呼んだ。

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他にも何人か飛んできた破片で怪我をしていたが

みんなBほどの重傷ではなかった。

(後々聞いた話では、Bは背中を何針も縫ったらしく、大きな傷跡が残ったらしい。)

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風呂場にいた生徒はみんな集められて、先生たちから事情聴取をうけた。

ふざけてた生徒はいないかとか、誰かがガラスに物を投げたりしてないか、とか。

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でもみんな「何もしてない、わからない、突然割れた」と言うしかなかった。

本当にそうだったから…

仮に物を投げたからって割れるようなものでもないと思うが・・・

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みんな部屋に戻されて、もちろんその日の夜のリクリエーションは中止になった。

救急車の音が聞こえて、部屋の窓からAがストレッチャーで救急車に乗っていくのを見ていた。

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