中編3
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存在しなかったお兄さん

こどものころの不思議な体験談です。

良ければお付き合いください。

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幼稚園や小学校低学年の頃だった気がします。

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当時、私は4つ上の姉、両親、祖父母と都内で暮らしていました。

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祖母の実家が福島にあり、1年に1度は家族で祖母の実家に帰省していました。

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祖母の実家は玄関を出ると目の前にはちょっとした短い坂道があり

坂道を下ると田んぼがあります。

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家の裏側には山があり、山を登っていくと牛小屋がありました。

たまに牛小屋へ連れて行ってもらい、牛の餌やりを手伝ったりしていました。

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牛小屋へ行かない日のお昼は、いつも私と姉と田んぼに行き

アマガエルを追っかけたり、お散歩をしたりして過ごすのが習慣でした。

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そのお散歩にいつも付き合ってくれるお兄さんがいて

お兄さんはいつも私たち姉妹が家を出るときに

誰に呼ばれたわけでもないのに家の奥からでてきてくれます。

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当時私の中でブームだったあやとりに付き合ってくれたり

話を聞いてくれたり

私はとにかく優しいお兄さんのことがすごく好きでした。

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大学生くらいの若いお兄さん。

顔はあまり覚えていません。

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家にいる間はおにいさんを見かけることはなかったのですが

お部屋にいるのかなと思う程度で、当時まだ小さかった私は気にも留めませんでした。

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小学校高学年の頃には祖母が入退院を繰り返していたこともあり、福島の家へ行く機会はなくなりました。

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中学校に上がった年、祖母は亡くなり

その後1度だけ福島の家へ行きましたが、あのお兄さんに会うことはありませんでした。

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成人になり、両親と昔話をしていた時

祖母の実家に帰るといつもお散歩についてきてくれたお兄さんの話になりました。

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そういえばあのお兄さんは、祖母とどのようなつながりなのか。

祖父母の親戚関係に疎かったこともあり、両親に聞いてみたんです。

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母「え・・・。大学生くらいの子なんていなかったよ。」

私「ええ、いたよ。いつもお散歩についてきてくれてたじゃん」

母「いやいや、いつも花乃(姉の仮名)と2人だったでしょ。」

私「え…?いや…いたけどな…」

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父「お化けだ、お化け!」

 笑いながら茶化す父。

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母「名前はなんていうの?みんなからなんて呼ばれてた?」

私「…分からない。呼ばれているところ見たことないから」

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母「どこのお部屋からでてきたの」

私「えー、分からないよ。玄関から向かって右側に廊下があるでしょ?

いつもお出かけするときにその廊下の奥から出てきてくれてたよ」

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母「あの廊下の奥にお部屋なんてないけど。その横の階段から降りてきたとかじゃなくって?」

私「階段ではない、廊下の奥からだよ」

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母「うーん・・・。ごはんの時とか、普段とか、誰とよく話してた?」

私「家の中では会わなかった。ごはんの時もいなかった。お散歩に出かけるときだけだよ」

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母「誰だろう、そんな人いなかったよ・・・」

父「花乃(姉)も話してたのか?」

私「話してたと思うよ」

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母「座敷童とかかなぁ」

父「座敷童ってこどもだろ?大学生の座敷童ってどうよ。」

母「本当にいたの?」

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まさかのお兄さんの存在を認識していなかった両親。

お兄さんの話を信じてもらえず

私はその場で、結婚して実家をでていた姉に電話をしました。

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姉「ああ、覚えているよ。20歳くらいだったきがする。

顔も名前も全然覚えてないけど、

いつも散歩ついてきてくれていたよね。」

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母「どんな服着ていた?」

姉「え?いや~服なんて覚えてないけど。

何も気にしてなかったから普通の服だったんじゃない?」

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母「そのお兄さんはいつも何していたの?」

姉「何していたって、散歩についてきてくれていただけだよ。

悠乃(私の仮名)の相手してくれたり、

カエル捕まえている時とかは後ろで見守ってくれているっていうか」

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よかった。

姉は覚えていた。

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でも結局誰かは分からず・・・

座敷童だったのかな?とか

守護霊だったのかな?とか

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私たち姉妹が、子供だけで外にでるのを見守ってくれていたのかな

なんて霊的かつ都合のいいような解釈に落ち着きましたが…

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あのお兄さんは誰だったのでしょうか。

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