短編2
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エレベーター•ガール

私はあの日、ある家を家庭訪問に訪れた。

茂井ゆかちゃん…。彼女はもう半月、学校へ来ていない。

担任教師として、これは心配だった。

(何か病気でも患ってるのか、それとも悩みがあるのだろうか…)。

お宅に電話をしてみても、携帯に電話をしてみても、保護者であるお母様が一向に出られない事も更に心配だ。

一年生の時に担任していた先生の記録を見ると、母子家庭でお母様は日中、仕事をしているとある。

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(そろそろ夜の8時だ。もうお母様はお帰りだろうか…)。私はそう思いエレベーターのボタンを押す。

502号室、私はエレベーターを待ちながら(何だか寂しいマンションだな。築何年だろう…? 人気を感じないんだけど…)。

そう思っていると、エレベーターが到着してドアが開いた。

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するとそこに一人の小さな女の子が乗っていた。

私は (あれ?もう夜の8時なのに、この子は一人? これからどうするんだろう…?)

そう思ってエレベーターの中に入り、俯く女の子の前にしゃがんで問いかけようとした時だった。

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まだボタンも押していないエレベーターのドアが閉まり、勝手に動き始めたのだ。

そして私が不思議に思って立ち上がった、その時。バッと横からその女の子が私の足にしがみついた。

ハッとして私が、その子に目を遣ると

女の子は私を見上げ、異様なほどに目を見開き

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「ねぇ!ねぇ!」

と言い出した。そして私の足にしがみつく手に更に力を入れ

「ねぇっ!! ねぇっ!!」

と狂った様に繰り返す。

「ねぇっ!!! ねぇっ!!!」

「ねぇっ!!! ねぇっ!!!」

硬直して動けない私が見ていると、その女の子の目の縁から真っ赤な血が滲んで来た。

背中に鳥肌が一気に立つ。

「ねぇっ!!!! ねえっ!!!!」

その声は段々、高くなると今度は音を遅回しにする様に低く歪んでいった。

女の子の目から血がツーッと頬に流れる。

そしてある瞬間、パッとエレベーターは電気が切れ動きを止めた。

そしてぼんやりと非常灯が着き、私は急に何も言わなくなった女の子へ恐る恐る目を遣った。

そこには、私の足にしがみつき腐乱した様に崩れた顔で見上げる女の子の姿があった。

そして性別も年齢も分からぬ様な不気味な声で

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shake

「ねぇ?コワイでしょ?」と言った瞬間、

非常灯がパッと消え、ガタンッとエレベーターが激しく揺れると、次の瞬間、私の身体はフワッと宙に浮いた。

それが私の生前の最期の記憶だ…。

私は今日もぼんやりと薄暗く、無機質なエレベーターの箱の中で、誰かが来るのを待っている。

腐乱した顔で私を見上げ、

しがみついたまま離れない女の子と一緒に。

(誰かお乗りの方はございませんか?)

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どうぞ、お乗りの際は

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十分に

お気を付け下さい……。

Concrete
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