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中編4
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レインコートの男

少し残虐なシーンがございます。

ご気分を害してしまう可能性もございます。

苦手な方、気分が悪くなりやすい方はご注意ください。

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小さい頃から同じような夢を見た。

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毎回出てくるのは真っ黒のレインコートを着てフードを被った男。

ただ身長がかなり小さく、130㎝程であろうか。

顔は50-60代の男性のようで、ごわごわとした肌であった。

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初めてその夢を見たのは10歳頃。

私は夜の公園にいた。

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公園には、砂場と小さめの滑り台、ブランコがあった。

公園の奥にトイレがあり、そのトイレの前にレインコートの男がいる。

男は私に背を向けて立っており、私はその男に対し怖いという感情を持ちながらもなぜか男に近づいていく。

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初めてその男を見た日、男の目の前にある壁には無数の蟻が這っていた。

男は目の前の蟻を1匹ずつ捕まえては親指と人差し指でつぶしている。

そしてゆっくり振り返る。男と目が合う。そこで目が覚める。

何となくリアルで気分が悪くなる夢だった。

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数か月がたった別の日、私はまたあの公園にいた。

夜中の公園はなんとなく気味が悪い。

(前にもここに来たことがある)

そう思っていると真っ黒なレインコートを着た男の姿が目に入った。

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男はトイレの壁の前で、私に背を向けて立っており、私はその男に近づいていく。

壁にはトカゲが何匹も張り付いていた。

男は目の前のトカゲを1匹ずつ捕まえては片手で握り潰しているようだった。

そしてゆっくり振り返る。男と目が合う。そこで目が覚める。

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実に不快な夢である。生き物が好きな私にとってはさらに気分の悪いものだった。

(この夢は前も見た。前は確か蟻だったはず…)

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その後も同じような夢をみた。

夜中の公園。真っ黒なレインコートを着た男。

私に背を向けて立っている。

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ある時は公園にたくさんの鳩がいた。

男はその鳩を捕まえてそのままトイレの中へ入ってしまった。

しばらくすると、

ドンッ…!

と低く鈍い音がした。

何があったのかは分からない。男が出てくる。目が合う。そこで目が覚める。

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目が覚めてすぐに吐き気がした。何が起きたのかは分からないが、何となく想像はつく。

蟻から鳩へ、生物が少しずつ大きくなっていくのも気味が悪かった。

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しかし、ある時からかレインコートの男の夢は一切見なくなった。

そしてすっかり記憶からも消えていった。

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数年後、社会人になった私は実家をでて引っ越していた。

近くには公園があり、その公園には砂場と小さめの滑り台やブランコがあり、昼間は子供たちがにぎやかに遊んでいた。

主要な駅からは少し離れているが、安いスーパーも近く、おだやかな住宅街でよいところに引っ越してきたなと思っている。

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会社へはバスで通勤しており、公園の前から乗ると、ちょうど会社の近くのバス停に停まるのだ。

帰りもバスに乗れたら楽なのだが、大抵終バスの時間には間に合わず、少し離れた駅から歩いて帰ってくるのが日常であった。

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私の勤めていた会社はどちらかというとブラック企業で、残業がない日はなかった。

いつも、なんとか終電には間に合うようにとの思いでみんな働いていた。

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その日は珍しく早く仕事が終わり、いつもより数時間早く上がれた。

(よし、この時間なら終バスに間に合う!)

少し小走りでオフィスを出て、バス停に向かう。

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バス停にはもうすでに終バスが停まっていた。

「あ!乗ります!」

私を乗せ、扉が閉まる。

(よかった、間に合った…)

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バスの中は私以外、誰一人も乗客がいない。

終バスだからだろう。乗客がいないことに対して何の感情も抱かなかった。

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バスは手前側がノンステップエリアになっており、後方は段が上がっている。

私は段を上がり、後方の一番手前、1人席に座る。

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上段一番前の席なので、足元のスペースが他の席よりもやや広く、狭っ苦しくない。

席が空いていれば、朝いつもそこに座っていた。

連日の残業で疲れすぎていたため、椅子に座ってすぐに寝てしまった。

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ふと目が覚めると、ノンステップエリア、後方上段へ上がる階段の前に真っ黒いレインコートを着た男が立っていた。

「次は○○4丁目~」

まだ自分が下りるバス停まで10分ほどあると分かり、再度目を閉じる。

(この時間でも乗る人はいるんだな…外は雨が降っているのか。あれ、今日雨予報だったかな?)と思いながらすぐに眠りに落ちる。

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「○○駅前~」

また、ふと目が覚める。私の席の真横に黒いレインコートの男が立っている。

少しびっくりしたが、疲れと眠気で正常な思考回路ではなく、まだ自分の降りる駅ではないことを確認し、目を閉じた。

席はたくさん空いているのに自分の横に立っていることに対しては何も思わず、(そういえば、ずいぶんと身長が低かったな。)そう思っただけだった。

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「○○公園前~」

(ああ、起きなければ。)うつらうつらしている中で、アナウンスが聞こえる。

思い瞼を開けると、自分の足元のすぐ目の前に人が立っている。

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すでに説明したが、上段一番前の席なので、足元のスペースが他の席よりもやや広い。

とはいっても足先から50㎝ほどの隙間しかない。

そこに真っ黒いレインコートを着た男が立っているのだ。

そもそも普通の人間は、手すりより内側に入ってこない。

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かなり驚いた私は顔を上げた。

ちょうど椅子に座っている私の顔と同じ高さに男の顔あった。

身長は130センチくらいだろうか。顔は50-60代、ゴワゴワとした肌。

しっかりと目が合う。

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気が付くと夜の公園にいた。家の近くの公園だ。

公園には、砂場と小さめの滑り台、ブランコがある。

公園の奥にトイレがあり、私はそのトイレの壁の前にいる。

前から真っ黒いレインコートを着た男が歩いてくる。

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