それから暫くして体調を崩されていたB寺の住職さんが回復されたと聞いた
それらの出来事を思い出した瞬間、身体に激しい悪寒が走ったのがわかった。
見たばかりの怪談話動画の中に寺では祓えない程強いモノを連れて来た人間への対処の仕方を話しているものがあり、憑いているモノを刺激しない様にお祓いを行わずに霊力のある場所で一定期間過ごしてモノの力を弱めるというのがあったからだ
それは私がA寺で対応されたやり方と同じものだった
そして他の怪談動画の中に寺では祓えない強い力を持った悪しきモノが憑いた人に対してお祓いをする前に住職が「憑いているのは怖がる様な悪いモノではない。」と言葉にしているシーンがあり、話の最後にそう言葉にしたのはあの時その人に憑いていたモノが余りにも恐ろしいモノで、ソレを刺激しない様にあの場ではああいうしか無かったと住職から打ち明けられるというものでそれとあの時のB寺の住職さんのお祓いの際の対応が同じものであった
悪しきモノが憑いた人間の話と自分の体験に共通項が二つ
一つならいざ知らず二つもあるという事実を突きつけられた私は浮かび上がる恐怖に震えながら認めるしか無かった
あの日あの時私にはあの怪談話に出てきた悪しきモノレベルの何かが憑いていたのだと
驚きの余り先程までの眠気は吹き飛び
気付けば身体をひき起こしていた
姿勢を整えた私はもう一度記憶を思い返しだす
当時の私には幾つも引っ掛かる事があった
何故、毎回庭の景色を眺めているだけの事を寺の人間が自分に勧めてきて、そこから一切踏み込んだお祓いに進まないのか?にも関わらず必ず通えと言われるのか?
何故B寺の住職さんが体調を崩された事でA寺の人間が私に嫌な顔をして近づきたがらなかったのか?
何故もう終わったから大丈夫、では無くもう来なくてもいいよなのか?
自分の中で当時抱いていた疑問の糸が時を経た今怪談動画で知識を得た事で一つに繋がった
その瞬間、浮かび上がった真実の余りの恐ろしさに心の底から震え上がった
B寺の住職は私に憑いたモノを細心の注意を払い刺激せぬ様に祓おうとされたがソレの怒りに触れてしまい体調を崩され、当然A寺の人間に手に負えるものではなかったのではないか
その為私を本堂になど入れられず代案として霊力のある寺の敷地内で長い時間過ごさせる事に決めたのではないだろうか
今思えば景色を眺めていれば良くなると説明してくれたA寺の人間の表情はひきつっていた。
幼い子供に君にはウチでは祓えないモノが憑いている、どうしようも出来ないとは言えなかったのだろう
あれから時が経ちB寺の住職さんも亡くなられた今となっては確かめる術は無いが、そうだとしたら私は救われた事になる
真実を知らされていたら当時の私は恐怖のあまりパニックに陥った事だろう
隠していてくれて有難うと心より感謝を述べたい
作者GK