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こわばな、おわりか……。なごやか……。

短編1
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こわばな、おわりか……。なごやか……。

題名「礼」

 ──いつも私達のことを気遣ってくれて、ありがとう。

 庭に住んでるナメクジのナメ子は、そう思っていた。

 でも太郎君は気遣っているのではなく、きもいから踏まないようにしているだけだった。

 踏んだりして靴の裏に付くだけでも嫌なのだ。

 そうとは知らないナメ子は、太郞君にお礼をしたいと思っていた。

 だけどナメクジに出来ることは限られている。

 だがナメクジにはコンクリートでも削れるようなパワーが。

 ある日、ナメ子は、ひらめいた。

 その夜、仲間を引き連れて太郎君の枕元まで行くと、

「みんなー! 始めるよー!」

 それを合図に、爆睡している太郎君の口の中に次々と飛び込んで、歯石を削り取り始めた。

 翌朝、綺麗に歯石の取れた太郎君。

「へ?」

 目覚めると、口の中がネチャネチャのグチュグチュで、ネチョネチョのグチャグチャだった。

 良かったね。

題名「平和」

 今日は真っ白なワンピース姿だった。

 靴も靴下も同じく真っ白で、本当に可愛らしい女の子だ。

 毎日のように花時計の世話をしに公園に来ている。

 すぐ近くに住んでるんだろう。それにしても優しい女の子だ。

 ジョウロを使って花に水を与えていた。そして草を抜いてやろうとしゃがみ込んだとき、彼女に向かって初めて花時計が口を開いた。

「やあ! 君も僕と同じで今日は花柄だね!」

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