長編8
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解離性同一性障害 其の二

「頭が痛い…」

夏子の口癖、正直…聞き飽きたくらいこの言葉を聞いた気がする…

合コンで良い男が居なかったからって機嫌の悪い夏子…

あたしの集めた男たちは確かに医療関係の人達だったが、ブサメン揃いだった…

一人を除いては…

ある日、あたしは仕事で医療関係の人と関わる機会があった…

その時に「合コンを持ちかけて!」と言ったのは夏子。

でも、やっとの思いでこぎつけた合コンにご立腹の夏子…

「何あれ?不細工ならまだしも、ヲタって…マジ、かんべん…」

「いや、でも…菅野さんとか、かなりいけてたじゃん?」

「ちょっとぉ…アレは医療関係っていってもアルバイトの奴だったでしょ?フリーターはダメだって!しかも34歳って…」

などと言ってはいるが、終始…彼にメロメロだった夏子…

その菅野さんは…というと、何時もの事だけど、美奈がお持ち帰り…

「美奈も美奈だよね!毎回毎回……。こういうのを阿婆擦れ女って言うのよ!」

悔しくて堪らないご様子だが、だいぶ酔ってるなこりゃ…

はぁ…この役回り…なんでいつもあたしなのさ…

いつもの様に夏子を彼女の部屋に連れ帰り、寝かせつける…時間はすでに1時をまわり、クタクタで夏子の部屋で一休みする事に…

すると、こんな時間に着信…

ガラケーからスマホに乗り換えたばかりのあたし。

あたふたしながら、ようやく出る。

『やぁ…菅野だけど…』

「へ?え…あの、はい先程はどうも…」

怪しい返事を返す辺りがあたしらしい…

『今、1人?』

「い?あ!いえ…夏子と…じゃない…1人です!…」

そう言えば…何故あたしの携帯番号を…

美奈だな…あいつぅ…

『出て来いよ…俺も1人なんだ。』

わお!結構強引…でも、俺様系の好きなあたし…

「はい…今どこですか?」……

……………

……………

どうしてこうなったのか…

ホテルのベット…

隣には彼…

てか、美奈は?

隣に目をやる…あ…さっきまでの鋭い目つきとは裏腹に寝顔は意外と無邪気そうで可愛い…

虜になりそう…

……………

……………

朝になるとすでに彼は居なく、私1人…

代金がベット傍に置かれて居た。

カラダ目的?…だよね…そりゃそうだ。

美奈のわがままに付き合いきれなくなって、あの後別れ、あたしに電話して来たんだ…そうに違いない…

シャワーを浴びて、そろそろホテルの部屋を出ようとした時だった…ドアを叩く音がする

コンコン…

「わ!(誰?)はい…?」

カチャ…

「あ…」

「はぁ…はぁ…あの…財布、落ちてませんでした?」

はれ?菅野さん…

「い、いいえ…分からないです…」

なんか感じが昨夜と違う…目つきは優しげ、しゃべりもどことなく柔らかくて…まるで別人…

「ゴメンよ、ちょっと探させて…」

と、慌てた様子で部屋に………

「あの…ありました?」

「あぁ…良かったぁ……あったぁ…

ゴメンね、見つかった…ベットの下にあった。」

「そうですか…良かったですね。菅野さん…」

「!?」

え?どうしたの?顔色が変わった。私、なんか悪い事言った?

「あの…どちら様?菅野ってそれ…どこで?」

信じられない!!

抱いた女を忘れる普通?!

しかもついさっきまで隣に寝てたくせに!!

………………………………………

私は怖い話、怖話を探して全国を旅する怖話ハンター、犬神 真也だ…

私事ではあるが聞いてもらいたい。

昔から私は記憶が曖昧だったり、途中で記憶が抜け落ちていたりと、どうもおかしな所があり、よく人に迷惑をかけたりする事があった…

例えば、自分では初めて会った知らない人物なのに、向こうは私に会ったことがあり知っている…などと気味の悪い経験が何度かあった…

インターネットで症状を調べると、解離性障害の疑いがあるとのアンサーが届いたので、私は精神科に受診する事にした…

今日も行ってきた…今回これが確か5回目の受診だ…

また記憶障害が出たと医師に話すと驚くべき事を話し始めた。

まず、驚いたのは…

今日、私が診察に来たのは、これで8回目だと言うのだ…

診察記録にも確かに、そう書かれていた…

あと、医師の話によれば、覚えの無い三回のうち二回の受診の時に、私は菅野 徹と名乗ったと言うのだ…

菅野 徹と言えば、中学の時に引っ越してしまって、顔は覚えてないが、そんな名前の友人がいたことを何と無く覚えていた…

他の友人は覚えてないなどと言っていたが、私には微かにだが記憶にある名前だ。

でもなんで彼の名前を?

医師は…これは、解離性同一性障害と言う病気だと話した。

つまり、多重人格だと言うのだ…

さらに、もう一人、ある人格があるとも話した…

名は私の名前を名乗ったそうだが、その人格は私と菅野の両方の記憶を持っていて、中間に位置して居るのだと言う…

一番、幼稚で言葉などもまるで、少年の様な話し方をするそうだ…

「菅野はどんな奴ですか?」

私がこの質問をすると、医師は少し顔を歪ませた…

何でも、冷血で血の気の多い危険人物を思わせる人格らしい…

何と無く、つかめて来た…

この間、加藤 弘(仮名)とあった時、恐らくあの場所に連れていけと言ったのは私…いや…菅野だろう…白骨化した死体を見つけたあの日、私は記憶を一部失っている…その間、菅野の人格が加藤と接触し、彼の過去を吐かせたのだろう…

……………

医師は、催眠療法を行いもう一度菅野と話がしたいと持ちかけて来た…少し怖かったが、私はそれを了承した…

……………

……………

目が覚めると当然、人格は私のままだった…

医師は疲れ切った表情でこう話した…

菅野は現れなかったがもう一人の犬神 少年が現れたと。

どんな話をしたのか聞くと…

「『菅ピー』…恐らく菅野 徹の事だと思います…彼は今、眠っていて…起こすことは危険だと話しました。どうしてか尋ねますと、菅ピーは寝起きが悪いから下手をすれば殺される…と…」

冷血で血の気の多い危険人物と言われるわけだ…

まさか自分の中にそんな危険な人格が眠っていようとは…

「他に何か言っていませんでしたか?」

「…菅野はあなたの事をよく思っていないと…録音したモノがあるんで聞いてみますか?」

「はい…見せて下さい」

すると、ハンディカムをTVに接続、大画面で上映してくれた…何故かワクワクしながら、その映像が始まるのを待つ私…

目線が落ち着かない少年の様な私が映し出される…

医師が…『君の名前は?』と尋ねると、『真也!』と元気に答える…

更に医師が…『菅野さんについて聞かせてもらえる?』と聞くと…

大人とは思えない仕草で、『うん!』と答える…

医師が聞く…

『菅野さんは犬神さんの事をどう思っているのかな?』

『犬神?もう一人の僕の事?……うーん、菅ピーは…あいつのこと嫌いなんだよ…ふふふ…僕も嫌い…』

何だこれ…

医師が続ける…

「実際、私が彼、菅野と面談した際にもあなたを批難して居ました…奴は邪魔な存在だ。消したいから協力しろと……」

嘘〜ん…酷く無〜い?

私が何をしたと?ドスケベがダメ?それとも、オカルト趣味が問題か?兎に角ぅ…私の何が気に食わないのか気になる所だ…

「犬神さん…菅野 徹という名は、あなたはご存知で?」

「え?ええ…小学校から中学の途中までよく一緒に遊ぶ仲だった奴の名前ですけど…」

嫌われ者の烙印を自分の中に居る二人の人格に押されショックに打ちひしがれ、更に不貞腐れながら答えると、医師は驚くべき事を口にした…

「実は、ウチの病院の入院患者に全く同じ名前の方が入院しているんです…」

別人でしょ…たまたま、同姓同名ってだけで、年齢とかも上だったり下だったりするんだきっと…

「年齢も同じなんです…」

ほう…凄い偶然だこと…でも、たまたまでしょ?同じ年で同じ名前、別に良くあることっしょ?

「あなたの中の菅野が教えてくれた生年月日と彼の生年月日も一致したんです…」

完璧じゃないか…

いや、パーフェクトだよ…

でもね?もしかしたら…

例えばよ…

ふた組の菅野さんに赤ちゃんが出来ましたとするだろ?

車で駆けつける二人の父親!

で、二人とも同じラジオ放送を聞いていたと…

渡辺 徹が番組のゲストで来たりして…

「とおる?トオル…徹…ふふ、良い名前だな…」ってな感じで、名付けちゃったりしたとしたら?

別に無い事もないでしょ?

「先程…催眠療法を行った際…彼にあなたを会わせました所…」

ちょっ!?

会ってるのかよ!

「…菅野 徹は酷く怯え…今も部屋に閉じこもったまま…一方あなたは、懐かしい友人に会えた事を喜び涙を流すほどでした…」

本物?マジか…

「あの…僕も会いたいんすけど…」

「無理でしょうな…あの怯えかたは尋常じゃない…」

「……そうすか…」

……………

まさかな、と…まだ疑いながら病院を出ると、タイミングを見計らったかのように携帯がなる…

『もしもし…加代です。』

一昨日の可愛子ちゃん!?

「先日はどうも…」

……………

実のところ私は彼女のことをよく知らない…

なんてったって、私は一昨日より前の一ヶ月間、記憶がない…

その間、どうやら菅野 徹の人格は医療事務の仕事をアルバイトとして手伝っていたようなのだ…

その際、仕事仲間内で開催された合コン、そこで彼女と知り合っていたようだ…

勿論、彼女には私の病気については話していない…

「菅野さん、私の事…思い出しました?」

「いえ…ゴメンなさい…多分酔っていたようで」

ファーストフード店の二階の席は平日だというのに、学生風のカップルで賑わっている。

「やっぱり…」

「すみません…酔うとどうも僕は…」

「違います。あの時の菅野さんと、なんていうか…まるで別人で…」

そりゃそうだ。

私は犬神なのだから…

「仕事場に行ったら、辞めたって言われたんですけど、今は何を?」

「え?はい…今は…いや、ずっとフリーライターを…やってまして。」

「ライター?医療関係の仕事じゃないんですか?」

「ええ…まぁ…」

まず、菅野が医療事務の資格を持っていた事すら知らなかった…ってかんじだ…

しかし、この娘…何が知りたいのか…?

「多重人格…」

「!!!!!!」

「な訳ないですよね…」

驚いた…気付かれたかと思った…

しかし、可愛いなこの娘…まさか、菅野ん時に抱いちゃってたりしてないよな…

…いやまて…

ホテル…

ベットの下に財布…

……まずいな…

抱いたなこりゃ…

「思い出しました?私の事…」

「へ?あ、うん!加代さん…」

「じゃ…一昨日の夜の事も?」

「はい…」

「凄かったです…」

最低だ!私は最低だ!こんな可愛い娘を抱いておいてなに一つ覚えてないなんて!

つづく…

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薄紅様、コメントありがとうございます。
こんな話を最後まで読んでいただいて、感謝です。

(自分)が知らない間に(別の自分)が色んな事をやらかしてて、それを(自分)だけが知らない…とか考えるとすっごく恐いです(;_q)
せめて記憶だけは残しておいてくれーって思いますね