中編3
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『夜の学校』

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クラスメイトの藤原君はかなりおかしい。

そう気付いてから数週間が経った頃、俺の学校には学園祭が近付いていて、

女子に命令されて衣装係になった俺と藤原君は、学園祭の準備の為に居残りをし、せっせと針仕事を頑張っていた。

藤原君はブツブツ文句を言っていたが、やはり女子の命令には逆らえないらしく衣装を縫っている。

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そのうちにあたりは真っ暗になり、時計は夜9時を指していた。

「そろそろ帰ろうか」

衣装も大分出来上がり、時間も時間なので俺は藤原君に声を掛けた。

だが藤原君はニタリと笑うと、

「キミはほんとに馬鹿だな」と暴言を吐いた。

ムッとして「なにがだよ」と言い返すと、藤原君は気味悪くニタニタ笑って、

「折角夜の学校なんて御誂え向きな場所にいるのに、さっさと帰るなんてバカバカしい。ホラ、行くよ」

と、恐ろしいことを言い切り、俺の手を引っ張った。

そこで嫌だと言えないのが俺の駄目なところで、引かれるまま俺は夜の学校の散策に出掛けた。

藤原君の進む先を見て俺は嫌な予感がした。

俺の学校には旧校舎があり、図書室と視聴覚室のみが時たま使用され、それ意外は普段はあまり使われていない。

故に夜なんかはかなり気味悪い。

しかも隣りには藤原君。どうしようもなく怖い。が、やはり藤原君は旧校舎に向かった。

「やっぱり帰らない?」と一か八か声を掛けるがアッサリ無視され、藤原君は旧校舎に入って行き、俺もそれに続いた。

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問題の旧校舎は暗くてすごく不気味だった。

床はギシギシ言うし、ガラスはヒビ割れてるし、作者なんかとっくに卒業してるであろう飾りっぱなしの書道作品も気味悪い。

俺ははずかしながら半泣きだった。が、藤原君はズンズン進む。

そしてある教室の前で立ち止まった。

「ココ、面白いね」

藤原君の長い前髪から覗く目が弧を描いた。

ヤバイと思ったがもう遅い。藤原君はガラリとドアを開け、床を軋ませながら中に入る。俺も恐る恐る後に続く。

中は普通の教室で、ずらりと机が並んでいた。

やはり書道作品や絵が飾られている。しかし特に嫌な気配はしない。

むしろ俺はいつの間にか降り出していた雨が気になっていた。古い校舎に雨粒が当る音がする。

「傘持ってくればよかったなあ」と呟いたとき、藤原君がケタケタと笑った。

「ココはほんとに面白いよ!!!ちまちま針仕事した甲斐があった!!」

俺にはサッパリわからなかったが、藤原君には相当楽しい場所らしい。

俺は藤原君のほうが気味悪くなって廊下に出た。

すると、洗面台と鏡があった。何気なく鏡を覗くと、後ろの誰かと目が合ってドキッとした。

が、それは背後の窓ガラスに反射した俺だった。

ホッとして振り返り、そろそろ本気で帰ろうと藤原君のいる教室に入った途端、俺は気付いた。

ガラスに反射した自分と、どうやって目が合うんだろう。

「藤原君!!!!!帰ろう!!!!!」

俺は全身に冷や汗をかきながら、まだケタケタ笑っている藤原君を引っ張って走った。

怖くて怖くて仕方なかった。藤原君は相変わらず笑っていた。

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旧校舎を出ると、雨は上がっていた。

藤原君はまたブツブツと文句を言っている。

「キミのせいで半分も楽しめなかった。面倒な針仕事を頑張ったのに意味がないじゃないか」

「まあまあ。雨も上がったし、タイミング良かったじゃん」

俺は藤原君を宥めにかかる。が、

「キミはバカだろう?何を言ってるんだ。雨なんか降ってないじゃないか」と、キョトンとして言った。

「何言ってるんだよ、あんなに激しく雨音が…」

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そこまで言って、怖くなってやめた。

現に、あれだけ雨音が響いていたにもかかわらず道には水溜まりひとつない。

ならあの音は何なのか?もう考えたくもなかった。

「ズルいよ。キミばっかり良い思いをしやがって」

藤原君は更にブツブツと文句を言っていたが、俺はもう相手にする気力もなかった。

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次の日、あまりにも衣装の出来上がりの悪さに俺たちは衣装係を外され、もう夜まで居残りすることはなくなった。

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