短編2
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キツネと草原

これは私の夢。

あまり記憶にもない程小さい頃から、中学生になるまで見ていた夢の話。

見る間隔はまちまち。週に一回だったり、一月に一回だったり、多いときは週に五回は見ていた気がする。

この頃の私は夢の中で、これは夢だと認識できていた。

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私が6歳、弟が5歳くらいの見た目。母に連れられて、いつもの黒のベンツに乗って夜に出掛けた。

行き先はわからない。

ふと、車窓から外を見ると、いつの間にか草原の様なところを走っている。草が高く、遠くまで見渡せないほど。その草原に砂利道のような土の道が一本。そこをひたすら母の運転で走っていく。大きな満月が空に浮かび、雲がない。月光なのか、その草原は、とてもキレイな淡い青色を放っていた。

しばらくボーッとしていると、不意に母が外に出ていった。「車が動かなくなってしまったから、電話をかけてくる。車から降りないでね。」と言い残し、母はどこかに歩いていった。

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はて、気がつくと、車が変わっていた。黒のベンツから、私の家にはなかった古びた、昔の型のクラウンのような車だった。

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うっすらと車が変わっている…と考えながら、母がいるかと周りを見回すと、草の上を何かが跳ねている。青白い火の玉だった。それが、ポーン…ポーン…とまるでボールように跳ねている。

近づいてきた。それは青白い焔を放つ、3匹の狐だった。いや、本当はもっといたのかもしれないが、その時は3匹だけだった。

それが少しずつ移動しながら跳ねていた。なんとなく、楽しそうだ…と感じた。怖い感じは全くなく、弟とずっと眺めていた。

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不意に車が走り出す。

運転席には誰もいない、少しずつスピードを上げながら、徐々に草原を抜けていく。え?え?と弟と二人恐怖に怯えながら先を見ると、赤信号と交差点。そして、角に建った古い家屋。

きゃーーー!!!お母さん!!助けて!!!どうしよう!?そうだ!これは夢だ!!覚めればいいんだ!!!

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気がつくと、朝方の少し空が明るくなったくらいだった。

すごい安堵感と共に、今見た夢を思い出す。

ああ、また見たのか…またあの夢か…

今度は楽しい夢が見たいと想いながら寝直すを繰り返していた。

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