中編3
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笑え

これは俺が大学生だった頃の後輩の話。

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俺は 「イベント愛好会」 というサークルに所属していた。

その名の通りあらゆるイベントに参加し、その感想を

動画や写真を加工し、HPを更新するというモノだった。

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イベントといっても皆がイメージする 「追っかけ」 とか

そういう類では無く、○○祭、○○フェスタ、主にそういうイベントに出かける。

美味しいものを食べ、飲み、遊びまくる・・・天国のようなサークルだった。

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そんなサークルだからか愉快な奴が多かった。

明るく、アクティブでノリの良い男女ばかりだが、

たまに空気の読めない・・・いわゆる 「バカ」 も居た。

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俺の可愛がっていた後輩の 「タツキ」 はまさにそんな感じで

ここで笑うか?このタイミングで・・・って時も爆笑するような奴で

けど、憎めない人懐っこさと愛嬌で周りからは割と愛されていたし

そんなタツキを俺は一番に可愛がっていたと思う。

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ある日、バイト終わりにタツキから呼び出された。

タ 「どうしても相談したいことがあります」 と。

俺はいつものファミレスで落ち合うことにした。

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俺 『おぅ、お疲れ。なんかあったか?』

タ 「お疲れ様です。実は・・・・」

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タ 「彼女が倒れて、意識不明の重体なんです。」

俺 『え・・・こんなところに居て良いのか?』

タ 「それは大丈夫です・・・今日はもう会ってきたので(笑)」

こんな悩みを抱えていたなんて気づかなかった。

どんな時も、話してる時のタツキ笑顔だったから。

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俺 『相談はそのことか?』

タ 「いえ・・・・あの、俺っていつもニコニコしてて変ですか?」

俺 『はぁ?(笑)それは、お前の良い所だろう』

タ 「良い・・・トコロ・・・ですか・・・(笑)」

タツキは笑顔のまま話し始めた。

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前に付き合っていた彼女が自殺したんです。

原因は・・・多分、俺が別れたいと言ってから

精神的に病んでいたからだと思います。

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僕の顔色を伺ってニコニコしてる彼女が嫌で

どんどんウザったく感じる様になってしまって

一緒に居ても溜め息ばっかりで、つまんなくって。

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でも、僕がつまらなそうな顔をする時だけ

「そんのタツキじゃない・・・笑って?いつもみたいに笑って!笑って!!」と

彼女はすごく怒るんです。

それにも嫌気がさして、突き放して、着信拒否にしてしまったんです。

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でも、別にストーカーになったとかそんなのじゃなくて

何事もなく終わったんですが・・・

彼女が亡くなってから後日、彼女の弟さんから彼女の日記を受け取りました。

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中には、僕への純粋な想いと思い出がいっぱい書き綴られていて

なんだか思い出すと悲しくなって、泣いてしまったんです。

どんどん読み進めて、最後のページには

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「なんで そんな顔するの なんで 笑ってくれないの なんで 笑って 」

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「私の命に代えても 笑っていて欲しいの タツキ 笑え タツキ 笑え ずっと 泣くな 笑え」

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「タツキ 笑って ずっと 笑っていて もう 泣けない 怒れない 笑うの タツキは 笑う」

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「私の為だけに 笑うの」 と書いてあったんです。

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ねぇ 先輩・・・

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こんなに苦しくて、悲しいのに

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わ、笑ってしまうのは ぼ、僕が オカシイからなのかな・・・?

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タツキから目を逸らし、外を行き交う人を見ながら 『さぁな・・・』と言うのが

精一杯の答えだった。

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苦悩に満ちた顔で、涙を流しながら、笑っていたタツキの顔が忘れられない。

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