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皆さんのお話が怖いせいか、なんだか部屋の温度が恐ろしく下がっているような気がしません?
ちょっとゾクゾクが止まらないので、ここらへんでまた箸休めを挟んでもよろしいでしょうか。。。
ありがとうございます。
それでは。。。
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【六十六話目】
これは今から10年ほど前のお話になります。
当時アタシは九州では結構有名なキャバクラチェーン店に勤務していました。
過去にもいくつかそこでの体験話をさせて頂いておりますが、やっぱり薄暗くて人の集まる閉め切った空間って、色んなモノが集まって来ますよね。
そこでも、何度もびっくりするような事がありました。
夜のお仕事って、他のキャストの子達もそうなのですが、相性の良いキャストっていうのがあるんですね。
相性の悪いキャストと一緒に初めてのお客様に着くと、あまり良い結果が出せないのですが、相性の良い子と一緒になると、どちらのお客様も指名で帰ってきて下さる事が多いんです。
なので、複数で来られたお客様の席に、いつもだいたい同じ顔ぶれの女の子が着いている、というのは珍しくない光景でした。
その時も、たいてい一緒に指名される事が多い女の子の一人と、お客様のお見送りの為にエレベーター前に来ていました。
擬似恋愛の世界で、次に逢える日までのお別れを惜しむ付き合いたての彼女のように、アタシ達はお客様と繋いだ手を名残惜しそうに離します。
そして、「また逢いに来てね〜。待ってるからね〜。浮気したら許さないんだからね〜」なんて、真顔で言ったなら勘違いされる事が間違いないセリフを満面の笑顔で言った後、扉が閉まっても深々と頭を下げたまま、エレベーターが降り始めるまで待機します。
たまに閉まったと思って立ち去ろうとするタイミングで開ける、っていうのを、わざと繰り返すお客様がいらっしゃるんですよ。
その時も、エレベーターの表示が下がり始めたのを確認してから、アタシとその子は頭を上げました。
そして、お客様の前では話せない、次の来店に繋げる為の作戦会議とか、お客様へのちょっとした不満なんかを、しばらくエレベーターの前で話し込んでいました。
その時、アタシもその子も、エレベーターが上がってきている事に、全く気付いていなかったんです。
真剣に作戦会議をしていると、不意にエレベーターの扉が開きました。
アタシ達はてっきりお客様が来たのだと思って慌てて立ち去ろうとしながら、いつもの癖で誰のお客様が乗っているのか確認しようとチラリと目線を走らせました。
その、エレベーターの中に見えたのは。。。
扉の向かい側の壁に、つまりアタシ達から見て真正面の壁に、顔も体もピッタリとくっつけるようにしてこちらに背を向け立っている、スーツの男の人の姿でした。
扉が開いたという事は、彼がこの店の階数を押して乗ったという事です。
それなのに、彼はこちらに背を向け、扉から一番遠い場所に立ち、微動だにしないんです。
普通に考えて、おかしいですよね?
エレベーターの扉が開いた事で、マネージャーとレジの女の子が、
「いらっしゃいませ!」
と声を張り上げました。
エレベーター内の異様な光景に、立ち去ろうとした中途半端な姿勢のまま、声も出せずに固まるアタシ達。
そのうち、その人が降りることも無く扉は静かに閉じました。
マネージャーが怪訝な顔で、
「誰だったんですか?」
とか、
「早く次のお客様のところに戻ってください」
とか言っていました。
でもアタシ達はそれどころじゃありませんでした。
扉が閉まったエレベーターは、下に降りるでもなく、上に上がるでもなく、アタシ達のお店の階で止まったままなのです。
アタシ達のところへ来てマネージャーも異変に気付いたようで、しばらく無言でエレベーターを眺めた後、スッと開くボタンを押しました。
shake
あっ!やめて!
と言おうとした時には、既にゆっくりと扉が開き始めていました。
アタシ達はマネージャーの後ろで、無意識に抱きつくような感じで寄り添っていました。
そして、完全に扉が開いた時、アタシ達は思わず
shake
「きゃ━━━━━━━━━━━━っ!!!」
と悲鳴を上げて逃げ出してしまいました。
扉の開いたエレベーターの中には、誰もいなかったんです。
まあ、その後その子と回る全ての席で、話題に困らずに済みましたけど。うふふ。
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【六十七話目】
次のお話は先程のキャバクラで働いていた、あるウェイターのお話をしようと思います。
彼は、所謂「視える人」でした。
非常階段出入り口の内側に置かれたビールサーバーのある場所は、アタシも絶対に近寄りたくない場所だったのですが、彼はそこでお客様のビールを注ぐ度に、真っ青な顔で脂汗を大量にかいていました。
彼はちょっとふくよかな体型だったんですけど、それでかいている汗と違う事は、彼の表情でなんとなく察していました。
暇な時に、裏の洗い場でお客様へ営業メールを打ちながらその事を聞いたら、そこにいるモノを教えてくれました。
ビールサーバーと非常階段へ続く重い鉄扉との隙間に、真っ赤なドレスを来た女の子がいつもいて、ビールサーバーの所に立つと、彼の顔を感情のない顔で覗き込んで来るんだそうです。
それも、ビールサーバーと彼の顔の間に、頭を突っ込むようにして。
ちなみに彼はとても大人しくて気が弱く、キャストの女の子達のストレス発散の、恰好の的でした。
茶化したり弄りたおしたりして、その度に顔を真っ赤にしながら照れまくり、オドオドする彼の反応を女の子達は爆笑していました。
そんな彼ですから、この真っ赤なドレスの女の人の事も、スルーできなかったんでしょうね。
毎回ペコペコ頭を下げて、心の中で「すいません、ビール注がせてください。すぐ終わりますんで」と言っていたそうです。
絶対視えてる事を気付かれたらダメそうなタイプっぽいのに、それに向かってペコペコするなんて、彼らしいですよね。ふふっ。
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【六十八話目】
このお話も彼の話なのですが、このお店には裏の洗い場にも非常階段があって、出入口の鉄扉はいつも開放されていました。
そこは、レギュラーではないアルバイトの女の子達が、営業時間内に入退店する時に使用する出入口なのですが。。。
この階段の2階の踊り場部分が、なんと言うか、すごく気持ち悪いんです。
彼にその話をした事はなかったのですが、ある日、指名のお客様が来店する予定がなくて、お店も暇なので、洗い場のそばに置かれたお茶のダンボールに座って営業メールを打っていると、非常階段からものすごく焦った彼が、真っ白な顔をして駆け上がって来ました。
彼はキャストの一人から頼まれたストッキングを買いに薬局までお遣いに行っていたのですが、それをセンターに預けてくると、洗い場に戻って来るなり脱力しながら
「こ、怖かった。。。」
と呟いていました。
どうしたの?と聞いてみると、足に追っかけられた、と。
足????足だけ???
と理解に苦しんでいると詳しく話してくれたのですが、その話のせいで一人では絶対にその階段は通らない!と決意しました。
彼が言うには、その階段の2階には、いつもサラリーマンが立っているそうなのです。
最初は2階にあるお店の従業員だと思って、すれ違う時に
「お疲れ様です」
と頭を下げて通り過ぎていました。
視える人である彼が、この世の人ではないと気付かないほどに、とても普通に視えたのです。
でも、その【彼】は答えない。それどころか微動だにしない。
そこでようやく違和感に気付いて、そして同時に「ヤバイ!」と思いました。
ビールサーバーのそばの女の子にさえペコペコしてしまう彼でも、その階段にいるサラリーマンにはヤバさを感じたのです。
慌てた彼は、心の中で
「ごめんなさい、僕にはどうする事もできません。どうか付いてこないでください」
と言いながら通るようにしていました。
その日も、同じようにして通り過ぎた時、階段を踏み外してちょっと転けた彼。
その時、前のめりになった彼の視界の端、自分の足の少し下に、サラリーマンの足だけが彼の方向に向かって歩いて来ているのが視えました。
shake
「ヤバイ!付いてくる!」
彼の頭の中には、瞬時にその事が浮かびました。
慌てて階段を駆け上がり、頼まれていたストッキングをセンターに預けると、洗い場の方に来て、「怖かった」と呟いた後に、塩水でうがいをしていました。
話し終えた彼は最後に一言、
「もしこの階段を使う時は、2階では絶対に立ち止まらないようにしてくださいね」
と言ってホールへと戻って行きました。
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え〜、予定では2話のつもりだったんですが、話しているうちに思い出して3話になってしまいました。
小休止のおやつくらいにはなったでしょうか。
では、次の方、お願いします。
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作者まりか
【真夏の怪談フェス「百物語」 】
① タイトル形式(カウント付き)
② ストーリー形式(実話or実話風)
③ 表紙の統一(蝋燭)
④ 1度の投稿制限(長編9分)
⑤ 特設ページ(蝋燭【i】の投稿) http://kowabana.jp/boards/37
⑥ 持ち話数(1人5話) ※但し、2話+3話という形での投稿もOK、また5話は無理でも大丈夫!
⑦ 順番は挙手制
⑧ 期間は今の所、未定です。
⑨ 途中棄権可
⑩ これはロビンの勝手な提案ですが、百物語完成後に参加者全員で「ベストオブ百物語」を決めたいと思います。投票制で今回一番やばかった実話怪談を決めましょう!
優勝商品は二つ!ステータスと自己満ですw
皆様、とっておきの怖いお話をお待ちしております!
【現在参加予定者】※敬称略※
ロビンⓂ︎ 沙羅 まりか 紫音 よもつひらさか ラグト 怪談師 修行者 綿貫一 ゼロ プラタナス おでん屋 Glue ゴルゴム13 珍味 ともすけ こげ 細井ゲゲ 山さん バンビ 吉井 山サン sun
※ 予定人数の20名に達しましたが、飛び入り参戦希望の方がいらっしゃいましたら是非此方までご一報下さいませ
真夏の怪談フェス「百物語」
ロビンⓂ︎ 一話〜五話
http://kowabana.jp/stories/26981
沙羅 六話〜十話
http://kowabana.jp/stories/27066
まりか 十一話〜十三話
http://kowabana.jp/stories/27076
よもつひらさか 十四話〜十六話 http://kowabana.jp/stories/27078
ラグト 十七話~十八話
http://kowabana.jp/stories/27088
珍味 十九話〜二一話
http://kowabana.jp/stories/27089
おでん屋 二二話〜二四話 http://kowabana.jp/stories/27090
ゼロ 二五話〜二九話
http://kowabana.jp/stories/27095
山サン 三十話〜三一話
http://kowabana.jp/stories/27102
綿貫一 三二話〜三四話
http://kowabana.jp/stories/27105
バンビ 三五話
http://kowabana.jp/stories/27107
ともすけ 三六話〜三七話 http://kowabana.jp/stories/27114
sun 三八話
http://kowabana.jp/stories/27125
ロビンⓂ︎ 三九話
http://kowabana.jp/stories/27129
沙羅 四十話+注意書き
http://kowabana.jp/stories/27132
吉井 四一話〜四二話
http://kowabana.jp/stories/27136
よもつひらさか 四三話〜四五話 http://kowabana.jp/stories/27139
細井ゲゲ 四六話〜五十話 http://kowabana.jp/stories/27147
紫音五十一~五十三話
http://kowabana.jp/stories/27154
怪談師Lv.1五十四~五十七話 http://kowabana.jp/stories/27158
修行者五十八〜六十話
http://kowabana.jp/stories/27160
Glue六十一〜六十二話
http://kowabana.jp/stories/27163
プラタナス六十三〜六十五話
http://kowabana.jp/stories/27170