やあロビンミッシェルだ。
愈々、百物語も三分の一を過ぎ、チラホラと霊的な現象を感じておられる方もいらっしゃる様です。
僕も二十話を過ぎた辺りから、読んでいて全身に寒気を感じる様になりました。
皆様、本日からは寝る前に塩水でうがいをしてからお休み頂く事をお勧め致します…ひひ…
それではここで一つ、去年から僕のお店の常連客となった智津子さんから聞いたお噺をさせて頂きます。
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三十九話目
【花子お婆ちゃん】
智津子さんは窓から差し込むゆったりとした日光に誘われて、正座をしたままで眠りこけていました。
ここは彼女の実家です。
目の前のテーブルには一昨日、肺を患って天国へ行ってしまった花子お婆ちゃんの遺影と骨壷。
母から暫しの留守を任されていた智津子さんは、今朝方までのお葬式の疲れがドッと押し寄せたのでしょうか、知らない内に寝てしまっていたと言います。
「ちーちゃん、そんな所で寝てると風邪ひくがね」
夢か現か定かではない微睡みの中で、智津子さんは背中に右手から左手にスーっと移動する冷たい「何かの存在」を感じたそうです。
その時、視界の隅にお婆ちゃんがよく履いていたスカートの裾が見えました。
「花子お婆ちゃん?」
実家であるという事とまだお昼間だという事もあり、智津子さんは少しの恐怖を感じることもなく、死んだお婆ちゃんが会いに来てくれたのかな?いや、やっぱりこれは夢だよね!なんてブツブツ独り言をいっていたそうです。
すると二階で寝ていた筈の6歳になる姪っ子の鈴ちゃんが、飼い犬のタコワサを抱いてドタドタと階段を降りてきました。
鈴ちゃんはまっすぐ智津子さんの前まで来ると、こう言いました。
「ねえねえちーちゃん、二階にお婆ちゃんがいたー。タコワサの目が悪いから早く病院に連れていきなさいって」
半信半疑で動物病院へ連れて行くと、タコワサの左目は年齢のせいかもう殆ど見えていない状態だったそうです。
「あとねー、花子って呼ぶのやめろってお婆ちゃん怒ってたよ」
鈴ちゃんのその言葉に智津子さんはドキッとしたそうです。生前、花子お婆ちゃんは自分の名前が気に入らずに、ずっと改名を望んでいたからです。
というのもお婆ちゃんが生まれた時に、出生届を託された父であるお爺ちゃんが、役場まで行った所で決めていた名前をど忘れしてしまい「花子」でいいかーなどとその場で思いついた適当な名前を書名したそうなのです。
勿論、そんな経緯を鈴ちゃんが知っている筈もなく、智津子さんは鈴ちゃんの言葉で本当にお婆ちゃんが会いに来てくれたんだと確信したそうです。
「花子お婆ちゃんたら亡くなってまで名前にこだわるなんて、よっぽど自分の名前が嫌いだったんだねー」
親族で出前の寿司を摘みながら談笑していると、お婆ちゃんの骨壷が置いてある仏間から突然、ゴトリ!と物凄い音がしたそうです。
襖を引くと仏間は異常に冷えていて、誰が触った訳でもないのに、お婆ちゃんの骨壷が台から畳に滑り落ちていました。
「お婆ちゃんマジで怒ってなくね?」
叔父さんの一言でその日から親族内では「花子お婆ちゃん」と呼ぶ事がタブーとなり、生前、本人が強く改名を望んでいた「聖子お婆ちゃん」と呼ぶようになったそうです。
【了】
作者ロビンⓂ︎
* ルール説明 (随時変更あり)
① タイトル形式(カウント付き)
② ストーリー形式(実話or実話風)
③ 表紙の統一(蝋燭)
④ 1度の投稿制限(長編9分)
⑤ 特設ページ(蝋燭【i】の投稿)
http://kowabana.jp/boards/37
⑥ 持ち話数(1人5話)
※但し、2話+3話という形での投稿もOK、また5話は無理でも大丈夫!
⑦ 順番は挙手制
⑧ 期間は今の所、未定です。
⑨ 途中棄権可
⑩ これはロビンの勝手な提案ですが、百物語完成後に参加者全員で「ベストオブ百物語」を決めたいと思います。投票制で今回一番やばかった実話怪談を決めましょう!
優勝商品は二つ!ステータスと自己満ですw
皆様、とっておきの怖いお話をお待ちしております!
【現在参加予定者】
ロビンⓂ︎ 沙羅 まりか 紫音
よもつひらさか ラグト 怪談師
修行者 綿貫一 ゼロ プラタナス
おでん屋 Glue ゴルゴム13
珍味 ともすけ こげ 細井ゲゲ
山さん バンビ 吉井 山さん sun
※ 予定人数の20名に達しましたが、飛び入り参戦希望の方がいらっしゃいましたら是非此方までご一報下さいませ…ひひ…
…
真夏の怪談フェス「百物語」
ロビンⓂ︎ 一話〜五話
http://kowabana.jp/stories/26981
沙羅 六話〜十話
http://kowabana.jp/stories/27066
まりか 十一話〜十三話
http://kowabana.jp/stories/27076
よもつひらさか 十四話〜十六話
http://kowabana.jp/stories/27078
ラグト 十七話~十八話
http://kowabana.jp/stories/27088
珍味 十九話〜二一話
http://kowabana.jp/stories/27089
おでん屋 二二話〜二四話
http://kowabana.jp/stories/27090
ゼロ 二五話〜二九話
http://kowabana.jp/stories/27095
山さん 三十話〜三一話
http://kowabana.jp/stories/27102
綿貫一 三二話〜三四話
http://kowabana.jp/stories/27105
バンビ 三五話
http://kowabana.jp/stories/27107
ともすけ 三六話〜三七話
http://kowabana.jp/stories/27114
sun 三八話
http://kowabana.jp/stories/27125
ロビンⓂ︎ 三九話
http://kowabana.jp/stories/27129
沙羅 四十話+注意書き
http://kowabana.jp/stories/27132
吉井 四一話〜四二話
http://kowabana.jp/stories/27136
よもつひらさか 四三話〜四五話
http://kowabana.jp/stories/27139