小学校のとき、俺は1年生からヒロシとツヨシってやつとつるんでいた。
ある日の小学校の朝礼で校長先生がいつもどうりに校庭の台に乗って、いつもと違う表情で皆に言った。
校長「えぇ~皆さんとってもいいお知らせがあります。今日は、はにわを持って来ました。このはにわはとっても貴重なので大事に扱って下さい。理科室に置いておくので、見たい方は理科室で見るように。」と嬉しそうに言った。
その翌日、また朝礼があった。
校長が台にのり昨日とは逆に険しい顔になっていた。
校長「えぇ~皆さんとっても悪い知らせがあります。昨日のはにわが理科室からなくなりました。もしも、はにわを持っていたら早めにもとの場所へ返して下さい。」と言った。
その後、結局もどってこなかった。
ある日のこと、授業の最中にヒロシが手を上げて言った。
ヒロシ「先生‼」
先生「どうした?」
ヒロシ「ツヨシが・・・」
皆は一直線にツヨシを見た。
ツヨシは机の上に前かがみにして、ヨダレをいっぱい出していた。
ヤバイと思い、俺とヒロシで急いで保健室に運んだ。
ツヨシはクラスでリーダ的な存在だった。
いつも休み時間になると誰よりも一足先に校庭に行って皆を引っ張るやつだったのに。
翌日、ツヨシは学校には来なかった。
その次の日もまたその日も来なかった。
俺は先生に聞いてみた。
俺「先生、あいつ大丈夫ですか?」
先生「あぁ、心配するな。ちょっと体調が悪いだけだ。」
俺「お見舞いに行きたいんですけど。」
先生「いや、行くな」
その言葉に俺は疑問に思った。
俺は親の事情で転校することになったので、どっちみち挨拶にいかなければならなかったのだ。
その日、自分一人でツヨシの家に行った。
ツヨシの家の前に着くと、庭の真ん中にある大きい石の上にツヨシが立っていた。
しかも、全裸で、小便をしていた。
完全にいかれてる。
俺は恐る恐る近づいてみた。
俺「おい、ツヨシ?」
ツヨシ「・・・」
ツヨシは無反応だった。
顔を見ると、目が上からみおろしていた。
また話をかけようとした瞬間、ツヨシがいきなり奇声を発して家に戻ったのだ。
あまりにも突然すぎて身体が硬直していた。
我にかえり慌てて自分の家に帰った。
もう一人の仲の良いヒロシにその出来事をいった。
ヒロシが俺の顔をみながら言った。
ヒロシ「おい、それってまるであのはにわみたいじゃね?」
確かに、あの上からみおろしている目といい、身体といい全部一致していた。
この出来事から3年の月日が流れた。
久しぶりにヒロシから電話して来たのだ。
あいつにしては珍しいと思い、電話にでた。
俺「もしもし、ヒロシ?」
ヒロシ「おう、久しぶりやったな」
俺「そっちから電話してくるなんて、珍しいじゃん。何かあったのか?」
ヒロシ「お前は鋭いな~。実はよツヨシって覚えてるか?」
俺「うん、覚えてる。ツヨシがどうしたん?」
ヒロシ「あいつさ、死んだって・・・」
俺「死んだ?何で死んだんだよ。」
ヒロシ「それがさ、ツヨシ一人で工場に乗りこみつまずいたのか分からんけど、鉄の棒に両目が刺さった状態でしんでたんだって。」
俺「両目に鉄の棒・・・。ヒロシそれってあのはにわみたいじゃね?」
ヒロシ「あ、ホンマや。はにわだ。」
ここで話は途切れた。
翌日、ツヨシの葬式に行った。
そこには、ツヨシの母親がいた。
俺は恐る恐る近づいて母親に話をかけた。
俺「あのー、何か力になれなくてすいませんでした。」
母親「良いのよ〜そんなに謝らなくても。あ、そうだ。あたし達ここの街から離れようとおもってるの。」
俺「なんでですが?」
母親「ずっと仕事ばっかであの子といられなかったことがほとんどだったから。せめて、静かな所で一緒に暮らそうかと思ったの」
俺「そうなんですか・・・」
半年後、ツヨシの家族はここの街を去った。
俺は確かめたかったことがある。
それは、ツヨシが本当にはにわと関係があるのかだ。
俺はヒロシに電話をかけた。
俺「なぁー、一緒にツヨシの家にいかない?」
ヒロシ「行ってどうするん?」
俺「はにわ探そうぜ。」
ヒロシ「あるわけ無いやろ(笑)」
俺「でも、行って見る価値はあると思うぜ。」
ヒロシ「わかったよ。そんじゃーあいつの前に集合な」
そして、ヒロシと一緒に家に行った。
半年もたっているせいか、ボロボロな状態だった。
それにしても、いくら半年とはゆえどうみても10年後の家のように見えた。
ヒロシ「なぁー、マジで入るのか?」
俺「当たり前だろ。ここまできて引き返すかよ。」
ヒロシ「なんならお前が先頭な」
俺「わかったよ。ちゃんとついて来いよ。」
俺は玄関のドアを開けた。
作りは昔のように音がするスライド式のドアだった。
「ガラ、ガラ、ガラ・・・」
足を一歩踏み出したとたん、空気が変わった。
よく、空気が寒いとかの表現があるがここは違った。
なんて言うか、湿気があって生暖かいような感じだった。
玄関から見ると、右側が上にあがる階段で奥がリビングになっている。
どうやら、ツヨシの部屋は二階から上がるみたいだ。
階段も古く一段歩くたびに「ミシッ、ミシッ」と嫌な音がした。
階段をあがりきると真っ正面に一つの部屋があった。
つまり、そこがツヨシの部屋だ。
ゆっくりとドアノブを回して開けた。
中ははごく普通の部屋だった。
左側には机があり右側にはベッドがあった。
ヒロシ「なーんだ、普通じゃん(笑)怖がる心配なんてなかったし。ってかはにわなんて何処にも無いんだよ。」
ヒロシはベッドに飛び込んだ。
その時、ヒロシが「痛っ」と叫んだ。
俺「何やってんだよ。」
ヒロシ「何か腰にあったたような感じが・・・」
俺は急いでベッドのカバーをはずした。
すると、ベッドの中にあのはにわがあったのだ。
俺「やっぱり・・・。あったじゃん」
ヒロシの顔をみながら言った。
ヒロシ「わ、わかったよ。俺の負けだ。で、あの時のはにわか?」
俺は、はにわをもってジッと見つめた。
はにわから叫びがかすかに聞こえた。
はにわ「はぁ〜」
だんだんと声がでかくなってくる。
はにわ「こ〜ろ〜す。ぜったいにこ〜・・・」
ヒロシが俺に向かって呼んだ。
ヒロシ「おい!しっかりしろ!」
俺「はっ!」
ヒロシ「お前、どうしたんだよ。なんかい呼んでも返事しねぇーしさ」
俺「す、すまん」
ヒロシ「すまんしゃねぇーよ(笑)。何を見たんだ?」
俺「いや、見たって言うかきいたんだよ。殺す、ぜったいに殺すって」
ヒロシ「誰を?」
俺「そんなん知らんわ。まっ、俺の気のせいだろ」
ヒロシ「だといいな」
結局、「はにわ」はツヨシが隠し持っていた。
あとからわかったんだが近所の人に聞いてみると、ツヨシはたまにあの家に出入りしていると言う噂だ。
作者悠太加