この度、結婚することになった。相手は学生の頃からずっと付き合っていた久美子という女性。もう7年の付き合いになる。
結婚するに至り、俺は久美子を両親に会わせた。てっきり大喜びしてくれるものだと思ったんだが…どうにも態度がおかしい。
よそよそしいというか…戸惑ってるっていうか。両親はずっと苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
久美子の名誉のため言っておくが、彼女は外見も性格も申し分ない。美人だし優しいし、料理の腕も最高だ。
その代わり、物凄いヤキモチ焼きで束縛が激しいのだが…欠点はそれくらいだ。
しばらくして久美子がトイレに行くと、俺は堰を切ったように両親を責め立てた。あんなよそよそしい態度を取らなくてもいいじゃないかと言うと、父親と母親は気まずそうに顔を見合わせた。
「ちょっと待ってて。お前に見せたいものがあるの」
母親は立ち上がり、一旦部屋を出た。そして1枚の写真を持って帰ってくる。
それは俺が生まれた時の写真だった。産婆さんが俺を抱いている。母親は後ろで微笑んでいた。
「ここ…見てごらん」
母親が指差したのは、産婆さんの傍に置かれてある産湯の入った桶だ。目を凝らしてよくよく見ると、人の顔と腕のようなものが見える。
まるで産婆さんが抱いている赤ん坊の俺を奪い取ろうとしているかのように、まっすぐ腕を伸ばしている人物が水面に映っていたのだ。
その人物の顔は…久美子だった。
作者まめのすけ。