深夜のことである。会社から急な用事で呼び出されてしまった俺は、タクシーを呼んだ。
本当は自分の運転で行きたいところだが、さっきまで酒をしこたま飲んでいたため、運転が出来ないのだ。最近、取り締まりも厳しいからな…。
自宅前からタクシーに乗り、行き先を告げる。タクシーの運転手さんはよく喋る人で、会社に着くまで俺達は盛り上がっていた。
「私もタクシーの運転手をやって10年になりますがねぇ。たまに幽霊も乗ってくるんですよ。幽霊ですよ、幽霊。お客さんは幽霊とか信じるほう?」
「いやぁ、幽霊か。うーん、俺には霊感ないから見えないんだよな。でも興味あるな。今までに何回乗せたことあるの?」
「そうですねぇ…もう4、5回は乗せたかな。幽霊はお金払ってくれないですからね。無賃乗車された気分ですよ」
「へえ」
「実はね、さっきも乗せてきたんです。あなたと入れ違いに降りたみたいなんですけど、気がつきませんでしたか?」
俺は一気に酔いが醒めた。
作者まめのすけ。