子どもの頃は田舎の山間の小さな村に住んでた。
周りは田んぼだらけだったし、デパートなんて洒落たとこはないし、本当に田舎。ド田舎だった。
勿論ゲーセンなんて身近になかった俺らは、学校が終わると、近所の神社行って日が暮れるまで遊んでた。
その日も友達同士で集まり、かくれんぼして遊ぶことになった。ジャンケンの結果、俺が鬼。木の幹に顔を押し付けて数を数えていると、後ろから声を掛けられた。
「たっちゃん。私のとこ見つけてな。1番最初に見つけて。見つけてね」
嗚呼、まゆちゃんだ。声で分かった。
まゆちゃんはクラスメイトで、結構可愛い子だった。因みに俺の初恋はまゆちゃん。
俺は分かったと返事をし、50数えた後、張り切って探し始めた。ところが…他の仲間は次々と見つかっていくのに、まゆちゃんだけが見つからない。
「なぁ、まゆちゃん知らん?」
「え?まだ見つかってへんの?」
「ジャンケンした時はおったで」
「皆で探そうよ。もう暗くなってきたし…」
仲間内で神社をあちこち探したが、まゆちゃんは見つからなかった。もしかして家に戻ってるんじゃないかと思ったが、家にも帰ってきてはいなかった。
村中、総出でまゆちゃんを探した。山狩りもしたらしいが、結局まゆちゃんは見つからない。村の年寄りは「神隠しだ」「天狗どんに攫われたんだ」と言い出す者もいたが、真相は分からず終いだった。
「どこ行ったんよ、まゆちゃん…」
それから数十年の月日が経ち、俺は大人になった。中学、高校は地元だったが、大学、就職、結婚は全て東京でした。
そんなある日。子ども達も夏休みに入ったので、家族をつれ、実家に帰ってきた。親と子どもの頃の思い出話をしているうち、ふとあの神社のことを思い出した。
「そういえば…あれからまだ見つかってないんだよな」
翌日。俺は1人でフラリと神社に出向いた。境内を回ってみたが、懐かしさが込み上げてくる。
よくかくれんぼや鬼ごっこをしたなぁと感慨に耽りながら歩いていると…御神木として祀ってある木の後ろから、小さな女の子がこちらを見つめていた。
瞳の大きい、色白の子だ。何故か、食い入るように俺のことをジッと見ている。
よくよく見ると、口元に黒子があった。その黒子…何となく見覚えがある。
「…まゆちゃん?」
すると女の子は涙をポロポロ零した。何度も手で顔を拭い、泣き腫らした目で俺を見た。
「遅いやないの…。1番に見つけてねって言ったのに、全然来てくれないんだもん」
作者まめのすけ。