化学の清水先生は、イケメンだ。黒髪に銀縁眼鏡、そ長身壮麗な容貌も手伝って、女子生徒から持て囃されている。
性格も気さくで、話しやすいタイプの先生だったので、私達はよく清水先生がいる理科室に言っては彼とお喋りしていた。
清水先生は理科室で何度も怖い体験をしているらしい。この間も怪奇現象に遭遇したと愉しそうに話してくれた。
「その日、授業で使ったビーカーを洗っていたんだよ。そしたら、サッと黒い影が横切ったんだ。
生徒の誰かが入ってきたかな、と思ったんだが、誰もいないんだ。それだけじゃない、誰もいないはずなのに、試験管が移動していたり、勝手に蛇口から水が流れたり…不思議なことばかり起きるんだ」
私達がゾッとして顔を見合わせていると、清水先生はニヤリと笑い、「この間はな、もっと凄いことが起きた」と言った。
気になった私達は、何度も「教えて!」と頼んだが、「これだけは絶対駄目だ。教えられない」と言われてしまった。
先生は理科室をグルリと見渡し、「…この部屋にいるのは嫌だなぁ」と呟いた。
作者まめのすけ。