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いつもお世話になっております。
つい最近始めたばかりの新参者ですが、よろしくお願いします。
何回か投稿したり、毎日皆様のお話を読ませて頂いている内に、ちょっとした事が起こるようになりました……。
パソコンに向かって、このサイトなどを読んだり執筆したり、絵を描いている作業中に必ず起こるようになったんですが。
ドアが開く音と気配がするんです。空気が流れて行くような感覚を覚え、振り返るんですがドアはきちんと閉まっている。
気にし過ぎだ、怖い話を読んだり書いたりしているからだと最初は思ったんですが、仕事としている占いの執筆中、趣味のイラストを描いている時にも感じるんです。空気がふわっと流れて行く。ギィー……っとベッドフォン越しにも開閉音が聞こええる。
ガンガンに音楽を聞いているのになぁ。
おっかしいなぁ、と思っても開いていない。
ここ数日は、女の人の気配もします。
衣擦れの音がして、私の座椅子の後ろで座ってこちらを見ているのが、画面を見ながらでも背後に目が付いたように見えてくる時もあります。
いつも同じ人です。水色の柔らかな生地で作られたスカートを履いた女の人。
どっかで拾ったのでしょうか。
まぁ、気にし過ぎなのかもしれないし、霊感なのかもしれないけれど、真偽を確かめる様な野暮は止めておくつもりです。
触らぬ神に祟りなし、昔の人は良い事を言ったと思う。
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さて、連れて来た繋がりの実体験をもう一つ。
今から8年前の話に遡ります。
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『悪霊デパートの白い店長・全3話』の体験をしたのは、八年前の秋口~翌年の春までで、今回の話はその体験をする少し前の話になります。
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忘れもしない2005年の5月の夕方、友人たちと郊外のゲームセンターで遊んだ帰りの事。
とあるファミレスの前に警官のパトカーが数台が止まっており、道路には夥しい程の血が。血溜まりや飛び散った血がファミレスの看板にまで及び、辺りは車の破片や学生の鞄などが置かれ、グチャグチャに壊れていました。
後に調べると、飲酒運転の車が学生十数人にブレーキも掛けずに突っ込み、死亡者も出た残忍なる事故現場でした。
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私「……酷い……事故かしら……」
友A「……凄いなぁ、血が……」
私「誰も死んでないと良いんだけれど」
友B「いやぁ、これは死亡者が出ているだろう。相当な量だもの」
冷静なBさんは、そう言って手を合わせた。
私「うーん……なんでこんな事になったんだろう……浮かばれないだろうに」
B「そんな事言っていると、連れて帰っちゃうぞー」
私「やめてよ……。一人暮らしなのに」
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このAとBは夫婦で二人暮らしだから良いけれど、私は一人暮らしでテレビもパソコンもない家で暮らしていた為、怖い物からは一応遠ざかっていた時期でした。
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生活音がしない家と言うものは、酷くストレスが溜まるんですよねぇ……。
音楽を掛けていても、なんかシンっとしているし、なにより昼でもかなり暗い部屋でしたし。
今思えば、事故物件だったと思います。
家賃も駅から徒歩3分の割に安かったし。兎に角、雰囲気が悪い。
でも、家賃はそこが一番安かったので決めたんです。仕方なく。
そんな部屋ですから、家に帰った後はもう怖い。
どうしても脳裏に血の映像が過って、一人が不安になる。
もう、寝てしまおう……と思い、風呂に入ってベッドで本を読み、眠気が来た所で部屋の明かりを消しました。
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ベッドに入って仰向けで天井を見つめながらウトウトしていると、
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パキパキと全身の筋肉が固まりました。
(こ、これが……これが噂に聞く金縛りって奴か……っ!)
一瞬、そんな事を思う余裕があったんですが、そんな事を考えていた自分が、本当に馬鹿だったと思い知ることになります。
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(金縛りって、指も動かないらしいし、指さえ動けば解けるって話本当かな……やってみよう)
恐る恐る指を動かしてみる。
……動く。
じゃあ、首は?
……動く。
足は、どうだろう?
……動かせる、バタバタと軽快に。
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色々動かした結果、分かった事実が。
確かめなきゃ良かったと酷く後悔しました。
指、足、首は動かせるけれど、ある一点が動かない。
そこは、腹と腕……。
こんな部分的な金縛りってありますか?
科学や医学で、金縛りの状態は解明出来ていますが、部分的に金縛りにあうなんて話は聞いたこともない。
しかも動かした事によって、一つの嫌な現実に気が付いた。
もう何も考えられなくなった。
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乗っているんですよ。誰かが。
目に見えない誰かが、私の腹に馬乗りになり、手首と腹を固定しているとしか思えない状態。
そしたら、無性に腹が立った。
何故だか、無性にムカムカする。
怖いっちゃ怖いのに。
なんか、負けたら体を盗られるんじゃないかと言う気がする。
生死がかかってる気がする、怖がってるばあじゃねぇーぞ、これは…。
うん、何か分からんけど、殺らなきゃ、殺られる!
何でだか、そんな確信じみたものさえ感じてきて、私は死に物狂いで相手に抵抗を開始しました。
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よく金縛り中は声なんて出ないと言うけれど、ガンガンに叫べる。
「くっそぉぉぉっ! どけっ! 退けよ! 降りろ、離れろぉぉぉぉぉ!」
(変だ、声も出るし……本当に金縛りなの?)
そんな事に吃驚しながらも、私は一生懸命に叫んだ。
体を『くの字』にバタンバタンと腹筋でもがき、相手に頭突きしてやろうと何回も頭を振りかぶった。
しきりに、消えろ!どけ!と怒号を飛ばし、女を忘れて必死に言う事、数分。
運動音痴の私は、腹筋がピクピクと痙攣し出したので、根を上げて暴れるのを止めた。
今度は体を左右に振ったり寝返りを打とうと言う作戦に出て、また叫ぶ。
「何なのよ! 降りてよ! さっさと降りろよ! 重いんだよ!」
脳裏には、よくこういう時に何か視るって言うよなぁ……と怯えつつも、虚勢を張り続けた。
でも、何も見えない。
腹部にあるのは、空間のみ。
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暫くの間そうしていたと思う。
初夏が近付いた夜は、明けるのも早い。
カーテンを見ると、うっすらと明るくなってきた。
もう、疲れた。疲れてしまって怖くもなくなって来た。どうやっても退かないんだな。
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ぼんやりと黄色いカーテンを見つめて、このまま寝てやろうかと考えていると、
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突如として異様な恐怖が襲ってきた。
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カーテンの外から、硝子をすり抜けてぶわぁっと何かが家に入って来る。
パニック状態で、また必死にもがいてもがいて、一瞬だけ叫びまくった。
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入って来る!
何か恐ろしいモノが入って来る!
入って来る!入って来る!
ヤバイヤバイヤバイ!
どうしよう!どうしようっ!
「どけ!退けぇ!あっち行け!」
ソレから逃げたくて、必死に馬乗り野郎を退かそうと必死だった。
死ぬと思ったら、疲れなんか一気に吹っ飛び、目を回しながら兎に角、暴れた。
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いざ入って来ると、畏怖と緊張が体と脳にじわじわと染みて来て、声すら出なくなってしまった。
入って来たモノは、長くて蛇腹の様な物がある。ソレ自体は透明なんだけど、うっすらそんなモノが見える感じ。なんか不思議だった。
硬直した私は、ソレが自分の頭上を流れているのを見つめていたんだけど、かなり長い。
龍なのか、蛇なのかは分からないけれど、兎に角長くて蛇腹のある生物だった事は確か。
多分、頭は無かったと思う。
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その時の恐怖は、蛇に睨まれた蛙の気持ちそのものだった。
ソレが絶対的に強くて、人間如きが怒鳴って退けるなんて出来ないし、何をどうしようとも敵わないって瞬時に察した。
神聖なモノかどうかも分からないのに、それだけは理解出来たというか、思い知った感じがまた不思議だった。
うまく言えないんだけど、神様に遭遇したら人間ってこんなに無力でちっぽけな塵同然だと、思い知らされるとか、そんな感じ。
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何かしちゃいけない。
黙って見ているしか出来ないし、それ以外は許されない威圧感を全身で感じる。
だけど恐怖が腹から押し出されて、小さな悲鳴がどうしても漏れる。
『ひゅひ、ひひゅ…は…ひ…』
悲鳴すら、肺が威圧感に押し潰されて麻痺し、呼吸と混じってた。
声が出ない!なんて可愛いモンじゃない。
頭が壊れそうな程に驚いて、どうしていいか分からない。
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それは、尚も頭上を流れていく。
蛇腹がスゥッと真っ直ぐに伸びていて、蛇行はしておらず、だだ、ソレを覆う空気がやたら重苦しい。
緊張と恐怖が限界を振り切ってしまった私は、意識を保てなくなってしまった。
ふぅっと意識を失い、次に目が覚めたのはお昼頃だった。
ハッとして起き上がったけれど、体は動くし、何処も痛くない。
痣も何もない。
ホッした瞬間、生々しいくらいに恐怖を思いだしてしまい、また震えました。
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あれは何だったんだろう。
龍か蛇が助けてくれたのか、それとも襲われたのか。
乗っかっている奴は『別な何か』と言う事は分かるんですが、如何せん私は『声を聞く』事は出来ないようなので、何もわからない。
でも、多分。
もがいている間の感触や手応えから想像するに、学生さんや大人の人間位の重さと大きさだったので、乗っかって来たのはきっと事故で亡くなられた方なのだろうなぁと思っています。
そして首の無い蛇腹の生物が来た瞬間、奴は居なくなりました。
今でも不思議な体験の一つです。
作者宵子
連れてきちゃった話と、金縛り。
幽霊でもない何かに遭遇した話です。
対したこともないのに長いので、お暇な方、宜しければ聞いてください。