短編1
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ママがなる木。

この間、久しぶりに友人宅を訪れた時のことだ。友人には3つになる女の子がいる。奥さん似の可愛い子だ。

だが、生憎と奥さんはいなかった。買い物かと尋ねると、友人は困ったように「嗚呼…ちょっとな」と言って笑った。

もしかしたら喧嘩して実家にでも帰ってるのかな、と思い、深くは追求しなかった。

一息ついた後、俺達は3人で散歩することにした。家の周囲をぶらついていると、近所の林檎畑に出くわした。

時期ではないので、まだ実はなっておらず、若葉色の葉が生い茂っているだけだ。すると友人の娘が林檎の木を指差して言った。

「あれ、林檎がなる木」

俺はギョッとして娘を見た。何故そんなことが分かるのだろう。林檎の実がたわわに実っていれば話は別だが…。

友人にも聞いてみたが、そんなことは教えた覚えがないと言って、奴もかなり驚いたようだ。

それからも女の子は「あれは桜の木」とか「あれは柿がなる木」と、目にした木に何の花が咲くか、何の実がなるかを言い当てた。小さい子が一生懸命喋っている姿が微笑ましく、俺達も心が和んだ。楽しい散歩日和となった。

散歩を終えて家に戻ると、庭に立っている木に目がいった。確かこの木は、何の花も咲かないし、何の実もならない木のはずだ。俺は冗談半分で娘に聞いた。

「これは何がなる木?」

女の子はすぐ答えた。

「ママがなる木」

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たくさんのママが実っていると思いました。
ママは一人で良いですよね スミマセン(+o+)

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バケモノガタリ様。コメントありがとうございます。

不思議ですよね。子どもはたまに不思議なことを言います。

私の見解では、恐らく母親はその木で首吊り自殺をしたのではないかと思うのです。枝からぶら下がる母親を見て、まるで果物が実るかのように見えたのかもしれませんね。

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木の○にいるとかそんな事でしょうか?
不思議な子ですね・・・

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