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短編2
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行列が出来る公衆電話。

ある夏の暑い日のこと。会社員の岩井さんは、仕事の関係で隣町に来ていた。一通り仕事を終え、上司に一報入れておこうと鞄の中を探る。

しかし、指先に触れる固い物はない。あれっと思い、鞄の中を隅から隅まで探したが、お目当ての携帯電話は影も形もなかった。

「しまった、家に忘れてきた…!」

そういえば、今朝起きた時に電池が心許なかったので、自室で充電していたのを思い出す。どうやらそのまま置いてきてしまったらしい。

岩井さんは焦った。上司に仕事が終わった時点で報告するよう、直々に言いつかっていたのに。まさかこんな時に携帯電話を忘れてくるなんて。

しかし、そんな岩井さんの目に飛び込んできたのは、道端にポツンとある公衆電話だった。今や携帯電話の普及率が高く、撤去されつつある公衆電話だが、それでも探せば1つ2つ見つかるものだ。

ありがたい。岩井さんは慌てて公衆電話に駆け込み、電話番号をプッシュする。その時、背後に視線を感じ、何気なく振り返ると……

「うわっ…!」

いつの間にか公衆電話の後ろには、順番待ちだろうか、ズラリと人が並んでいた。岩井さんは驚愕したが、そうこうしている間にも電話は会社に繋がり、事の用件を手短に伝えた。

詳しく話せと上司に言われたが、後ろに順番待ちの人達が並んでいることを思うと気が気ではない。

あとは会社に戻ってから話しますとだけ告げて、岩井さんは電話を切り、公衆電話のボックスから出た。

「すみません、お待たせしちゃって」

そう言いながら出てきた岩井さんは、再びあれっと声を上げた。

そこには誰1人としていなかったのである。行列は嘘のように消えていた。

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