三回目の投稿です。
文章力底辺ですが、宜しければどうぞご覧ください。
これは、私の友達C子が体験した話です。
*
それは、蝉が騒がしい八月の始め頃。
C子とその友達数人は、夜な夜な心霊スポットに行く事がブームとなっていた。
その日もC子と友達は、いつものゲーセンに集まり、雑談しながら今夜の行き先を決めていた。
a「昨日のトンネルヤバかったなー」
C子「あれ絶対女の声だったよね」
b「ただの風だろビビリ(笑)」
C子「風じゃないよ!絶対聞こえた!」
d子「分かった分かった(笑)」
C子は、普通の人より少し霊感が強い為、心霊スポットに行って自分だけが何かを見たり、聞いたりする事が多々ある。
なので、心霊スポット巡りは、正直あまり乗り気ではなかったのだ。
a「んで、今日どうする?」
C子「ねぇ、もう止めない?普通にカラオケとか行こうよ」
b「はぁ?何言ってんの?カラオケなんかより心霊スポット巡りのが楽しいじゃんよ」
C子「でもさぁ...あんまよくない事じゃん」
d子「C子ビビリ過ぎ(笑)ねぇねぇ、今日はさーあそこの廃屋行こうよ!」
d子の言う廃屋とは、知る人ぞ知る心霊スポットだそうだ。
他にめぼしい場所がなかった為、その日はその廃屋に行く事になった。
C子も、ここで断ってはノリが悪いと言われると思い、渋々行く事にした。
車で20分程走ると、道路脇の竹藪の中に、車一台分ぐらいの、細く整備の行き届いてない道が見えた。
車は躊躇なく竹藪に入っていく。
C子以外の三人は
「ヤベー!超雰囲気ある!怖えー!」
などとはしゃいでいたが、C子は竹藪に入った時から、目的地に近づくに連れて空気が重くなるのを感じていた。
一行は噂の廃屋に到着した。
そこは洋館の様な風貌で、一見するとお金持ちのお屋敷と言う感じだが、黒く煤けた壁に割れた窓ガラス。茶色く変色した花壇の花などを見ると、何年も人の手が入っていない事が見て取れる。
a「うおお!まさに廃屋!」
b「マジヤベーな!ここ入れんの?」
d子「大丈夫じゃない?いざとなれば窓割って入ればいいし(笑)」
C子「ここヤバいよ、やっぱあたし行きたくない」
その言葉に、C子を除く三人は『またかよ...』と顔を見合わせた。
a「じゃあ車で待ってろよ、俺らだけで行ってくっからさ」
そう言って、三人は車から降りてしまった。
C子「は?ちょ、待ってよ!置いてかないでよ!!」
慌てて車から降りて、d子にしがみつく。
(こんな所に一人なんて冗談じゃない!皆と一緒の方がまだ安心だよね...?)
こうして四人は廃屋へ向かった。
入口までくると、aがふざけて
「すいませーん!宅配でーす!」
と言いながら、扉をノックしてドアノブを捻る。
幸い鍵はかかっておらず、
「宅配便で不法侵入かよ」とか「窓割る手間が省けたねー」などと笑いながら廃屋に入った。
家の中は想像よりも荒れておらず、割れていた窓から入った枯葉や砂埃が積もっている程度だった。
a「なんか普通じゃね?」
b「予想よりキレイだしなー」
d子「えー、つまんなーい」
しかしC子は違った。
(空気が重い...寒い...)
廃屋の中は、外とは比べものにならないぐらい不気味な空気をしていた。
だが他の三人は何も感じていないのか、どんどんと奥へ進んで行く。
a「そーいやさ、ここどんな噂があんの?」
d子「んーと、あたしも聞いた話なんだけどね...」
d子の話はこうだった。
*
昔、この屋敷に住む男が政略結婚をした。
相手の女は大手企業の社長令嬢だった。
女と結婚した男は会社を譲り受け、社長となった。
女は頭脳明晰で夫をたてる事を忘れない、大変できた妻であったが、その顔には酷い火傷の痕があった。
醜い妻に嫌気をさした夫は、顔を見たくないと妻を地下室に閉じ込め、そこで生活をさせた。
ある日、日の光も入らずじめじめと環境の悪い地下室で生活をしていた妻は病気になった。
夫が食事を運んで来た時に病気になった事を伝え、出してもらいたいと懇願した。
しかし夫は聞く耳を持たず、それどころか病気が自分に移る事を恐れて、薬はもちろん食事すらまともに持って行かなくなった。
それから何週間が立ち、使用人から二.三日前から地下室から妙な物音がする。扉を爪で引っ掻く不快音や呻き声が一晩中続くので眠れないと、相談を受けた。
これは妻の嫌がらせだと考えた夫は、ある晩地下室に向かい、扉についている覗き穴から部屋の中を見た。
そこには妻の変わり果てた姿があった。
髪は抜け落ち、手足は鶏ガラの様に痩せ細り、その目は虚空を見つめている。
恐ろしくなった夫は、地下室をそのままにして、屋敷から出て行った。
それ以来、この屋敷では夜になると、女の呻き声や扉を引っ掻く音が聞こえると言う。
*
a「マジかよー!超怖えーじゃん!」
b「雰囲気あるなー」
d子「でしょー?んじゃ早速地下室行こうよ!」
こうして四人は地下室へと向かった。
程なくして四人は地下室へ降りる階段を見つけた。
そして階段の先にある通路をしばらく進むと、鉄製の扉が見えてきた。
a「お?地下室ってあれじゃね?」
d子「うわ、まさに地下室って感じだね!」
それは何の変哲もない扉だったが、異様に重い空気が扉の隙間から滲み出て来ていた。
(これ以上近づけない!)
そう思ったC子は、少し離れた場所で待っている事にした。
C子を除いた三人が扉に近づく。
d子「てか音しないねー」
b「寝てんじゃねー?」
a「ばっか死んでんだろ(笑)」
調子に乗ったaがドアノブを捻る...が、開かない。鍵がかかっているらしい。
つまんねー、などと言いながら三人が戻ってくる。
早く帰ろう、C子がそう言いかけた時だった。
ギ...ギキィィ...キィィ...
なにかが扉を爪で引っ掻く音がした。
a達が恐る恐る振り返る。
ギギィ...ゥゥ...キ...ギィ...アァ...ィィ
尚もなり続ける音。その中に呻き声が聞こえた気がした。
a「んだ...これ...ヤバ...」
顔面蒼白のaが振り絞る様な声で言う。
(逃げなきゃ!逃げなきゃ!!)
だが、金縛りにあったかの様に体が動かない。
ガタン、と音がして扉がゆっくり開いていく。
そして、その中から灰色の腕が、一本...もう一本と出てきた。
ヒューヒューと喉が鳴っている。逃げなければいけないのに、目は扉の隙間から離せないでいる。
ズ...ズル...ズズ...
腕の力だけで出てこようとしている。
(早く逃げなきゃ!!早く早く早く!!)
C子は全神経を集中させて懐中電灯を持っている指を動かした。僅かな隙間ができ、そこから懐中電灯が滑り、カシャンと床に落ちた。
その音で金縛りが解けたC子は「逃げて!!」と叫んだ。
C子の声で金縛りが解けた三人は踵を返して走り出した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁぁいゃぁぁぁぁ!!」
四人は悲鳴をあげながら屋敷の外に飛び出し、一目散に車に駆け込んだ。
a「なんだよあれ!?意味わかんねーよ!!」
d子「もういやぁぁぁぁ!」
b「知らねーよ!!とりあえずここから離れようぜ!!」
aが車を発進させようとした、その時。
〜♪〜♪〜♪〜♪
四人の携帯が一斉に鳴り出した。全員が顔を見合わせる。
d子「え...なに...?」
a「なんだよこれぇ...」
表示画面を見ると、
“着信”
とだけ映し出されていた。本来ならば発信番号が映る場所は空白になっている。
d子「ねぇ、これ切れないよ!!なんで!?」
a「...うぜぇなぁ!!こんなもん出れば解決すんだろ!!」
周りが制する暇もなく、aは電話に出た。
a「…………。」
d子「a...?大丈夫...なの?」
a「なんも聞こえねーよ、ただの誤作動かなんかだろ」
aの後に続きbとd子も電話に出たが、何も聞こえなかったらしく、ほっとした表情をしている。
d子「ほらぁ、大丈夫だからC子も出ちゃいな?」
C子「う、うん...」
通話ボタンを押して、恐る恐る耳に携帯をあてる。
ザーーーー...
聞こえてくるのは、雑音ばかり。
ほっとして切ろうとした時。
ザーー...ダ...ザー...テ...ーー
雑音に混じって何かが聞こえた気がした。
ザー…コ……ザザッ...ダ…テ…ザーー
なんで...何も聞こえない筈なのに...
ダ...ザザッ...シテ...コ...カラ...ザザー
C子「いやぁぁぁ!!何なのよー!!何が言いたいのよ!!もう止めてーー!!」
ココカラダシテ
はっきりと聞こえたそれは、携帯からではなくすぐ横から聞こえた。
*
その後、四人はすぐにお祓いに行った。
a.b.d子に憑いたものは、女の一部だった為、祓う事が出来た。
しかし、他の三人には聞こえなかった声が聞こえてしまったC子には女がしがみ憑いており、祓えないそうだ。
余程声が届いたのが嬉しかったのだろう、簡単には離れてくれないそうだ。
だが、これからかかってくる女の電話に絶対に出なければ、女は諦めて離れていくのだと、住職は言う。
ただ、一度女から電話がかかってくと、その携帯は普通の電波は受信しなくなり、女からの電話しかこなくなってしまうらしい。
「だから今はプリペイド携帯使ってるよ。大体月に一回は買い換えないといけないんだ。世間はスマホの時代なのにね。」
今は、女からの電話より毎月買い換える携帯代の方が大変だと、彼女は笑った。
作者退会会員
半分は事実で、半分は創作です。
自分はBGMや効果音は使わないので、あまり臨場感はないかもしれません。