春のぽかぽか陽気、この日は午前中、奈良で仕事だった。
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ある会社経営者の方から、事務所内の盗聴器の有無確認依頼だった。
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まあ話はさておき、帰りの電車内での出来事
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多分時間は、午後2時ぐらいだったかなぁ 近鉄奈良駅より発車間近い京都行き急行に飛び乗った。
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車内は人影もまばら、俺の乗った車両は6両編成奈良方1両目つまり車掌室の車両
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優先座席に座った俺は、流れる車窓をぼぉっと眺めていた
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俺の向かいには、二十歳過ぎの女性が座っていた。
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ちょっと好みのタイプかなぁ
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その方が、携帯電話を取りだし、なにやら操作している様子
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すると、車掌室の扉が開いた
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中から車掌さんが出てきて、優先座席付近での携帯電話の使用を控える様注意していた
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その女性は、「誰も座ってへんやん」などと言いながら、ふてくされた様子で席を移動した
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丁度、俺の斜め前の席に足を組んで座り携帯を触っている様子
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ふてくされた女の顔はぶっさいく!
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しばらくすると、隣の車両より、大きなボストンバックを持った二十歳過ぎの女性が右足をびっこ引きながら歩いて来た
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その女性の顔は怒りに満ちていた、一点を見つめ つまり、車掌室に向かって歩いて来る
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この子、何怒ってるんだろう?足が悪いんだったら、止まってから移動したらいいのに、
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それと、普通の顔してたら結構可愛いのに、と思ってその子の顔をじっと見ていた
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びっこ引きながらどんどん近づいて来る
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このまま行けば、その女性と、斜め前の足を組み携帯触っている女性のつきだした足が、ぶつかる!と、思った時だった
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なんと、その足を通り抜けた「えぇぇぇ?」よく見るとそのびっこの女性の体透けている
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最初は気がつかなかったが、だんだんこっちに近づいて来るに従い色褪せて来る感じ
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その瞬間「あっ、こいつ幽霊やぁ」と思い、その子の顔を、がん見した。こいつ、俺に気がないのか、気がつかないのか、車掌室のドアにゆっくり吸い込まれる様に消えていった。
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この怒り顔のボストンバックを持ったびっこ引いた女性の幽霊、この電車に取り憑いているにか? それとも、この車掌さんに文句があるのか?
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結局、何やようわからん真っ昼間の奇妙な体験だった。 ひょっとしたら、また 会えるかも?
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この車両はVVVFインバーター3100系です。この幽霊に遭遇した車両走行区間は、多分 高の原駅~新祝園だったと思う。
作者渋谷泰志