十回目の投稿です。
僕はアルビノと呼ばれる先天的な病気です。
体毛が白金であり、肌が白く目は淡い赤色です。
それ以外は普通の人と何も変わりません。
アルビノだからという訳ではないと思いますが、物心つく頃から霊的なものを見ることや感じることができ、また簡単な除霊や霊的なものを落とすことができます。
まわりから変な目で見られ続けてきましたが、幼なじみの愛美と家がお寺の七海のお陰でさほど孤独な思いはしませんでした。
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あれは中学三年の春頃のことだった。
朝起きると、食卓にはご飯が用意されている。母は仕事でもう家を出ているため、僕は一人で朝食を食べる。学校に行く支度をして、時間に少し余裕を持って家を出る。春の爽やかな陽気を楽しみながら通学路を歩いていく。いつもと変わらない一日を過ごすはずであったが、今日は違った。
学校に着き、下駄箱に靴を入れて上履きに履き替えた。教室に向かおうと廊下に出ると、一人の女の子が目に入ってきた。
その子は小柄で髪は長く、少したれ目で可愛らしい印象だ。そして、その子は何故かここの学校の制服と違う制服を着ていた。
僕はあまり深く考えずに教室へ向かった。
「龍くんおはよう!」
教室に入ると、七海が笑顔で挨拶してくれた。僕も笑顔で挨拶し、自分の席に座った。
「キーンコーンカーンコーン」
朝礼を知らせるチャイムが鳴った。
「ガラガラガラ」
チャイムとほぼ同時に担任の先生が入ってきた。更に担任に続き、女の子が入ってきたのだ。
「あっ!」
僕は思わず声を上げてしまった。黒板の前に立っているのは、先程僕が見かけた女の子だった。
担任は黒板に何かを書き始めた。
『海藤瑠璃』
担任は手に付いたチョークの粉を叩いて落とし、咳払いをした。
「えー、今日からこのクラスに仲間入りすることになった、海藤瑠璃さんだ!みんな仲良くするように!」
教室中がざわめいた。テレビとかでこういうシーンを見たことがあったが、実際に自分のクラスに転校生が来るというシチュエーションに興奮しすぎて、今回は僕もざわめきに混じってしまっていた。
海藤さんは軽くお辞儀をして、
「初めまして。海藤瑠璃です。みなさん宜しくお願いします。」
声は小さかったが、アニメみたいな声で可愛かった。クラスの男どもはみんな興奮して、
「瑠璃ちゃーん」などと早速盛り上がっていた。女子は冷たい目で男子を見ていたと思う。
朝礼が終わった後は、海藤さんのまわりが男子だらけになっていた。根ほり葉ほりプライベートなことを聞かれていたが、嫌な顔せずに答えていた。海藤さんは父子家庭で父親の仕事上、小さい頃から何度も引っ越しを経験している。今回の引っ越しで父親の仕事も落ち着き、長く僕たちの街にいられるらしい。そして、特技は『占い』であるとのこと。
可愛くて、不思議少女的な女の子『海藤瑠璃』は、一瞬にしてクラスの男子の中で絶対的なマドンナとなった。クラスの女子は表向きは話しかけたりして仲良い雰囲気を出していたが、実際はどう彼女を見ていたのか、考えただけで恐ろしくなった。
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海藤さんが来てから、休み時間は毎回数人が海藤さんのまわりに集まり、特技の『占い』を披露してもらっていた。占いといっても簡単なもので、目をつぶって相手の頭あたりに手をかざすだけ。その後に、大切な人が見つかるだの、付き合うなら○○な人がいいだの、女子が喜びそうな恋愛占い的なことをしていた。
数日経ったある日の休み時間、いつものように数人で海藤さんを囲っていた。その様子を遠くから見ていると、いつもとは違う占い方をしていることに気付いた。
海藤さんはバッグから黒く細長い小さな袋を取り出した。その袋から綺麗なペンが出てきたのだ。そのペンは黒を基調色として、金色の模様が全体に入った、少し高そうなペンだった。更にメモ帳を取り出し、何やら文字を書き始めた。書き終わると、そのメモ用紙を一枚千切り、目の前の人に渡し、メモ用紙に書かれている文字を読んだ。
「あなたは今日、体育の授業で転んで、右膝に軽い怪我をします。」
メモ用紙をもらった子は一瞬表情が曇った。
「ただの占いよ!でも気をつけてね!」
海藤さんはにっこり微笑むと、ペンを袋にしまった。他の子たちもペンを使って占ってほしいと頼んだが、何回も使うと占いの効き目が無くなってしまうからとの理由で、使うのをやんわり断っていた。
そして、体育の授業中にその子は転んで右膝を怪我した。怪我といっても擦りむいたくらいだが、海藤さんの占い通りになり、海藤さんは本物の占い師だと、みんな騒いでいた。ペンを使った占いは一日に一回くらいのペースで行われ、ペンで書かれた内容は毎回必ず現実となっていた。最初の内はまわりも楽しんでいたが、あまりにも占いが当たりすぎるため、徐々に占いをしてもらいたがる子が減っていった。
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ある日の放課後、授業が終わり帰ろうとしたところで、海藤さんに呼び止められた。
「龍悟くんは占いとか興味ないの?」
そう言うとゆっくり僕に近付いてきた。
「興味ない訳じゃないけど。」
少し戸惑う僕の様子を見て、
「それじゃあ、瑠璃のこと嫌い?みんな占いしてって来てくれるのに、龍悟くんは一度も来てくれないよね。」
目をうるうるさせて、僕の目を見つめてくる。
「えっ?いや!嫌いだなんてそんなことないよ!占い出来るなんて凄いと思うし!」
僕は焦って、適当なことを言ってしまった。
「じゃあ占いしてあげるね!」
海藤さんは急に表情が明るくなり、僕の腕を掴み、教室から出た。
「ここだと集中できないから」
そう言って、一階の視聴覚室に連れて行かれた。教室で散々占いしてたのにと思ったが黙っていることにした。
視聴覚室にはもちろん誰もいなく、窓は黒いカーテンで外の景色は見えなくなっていた。
「ここに座って!」
海藤さんが手際良く椅子を用意して、僕は言われるがまま海藤さんと向き合う形で椅子に腰掛けた。
「それじゃあ体の力を抜いて、目をつぶって!」
僕は目をつぶって少し俯いた。
「じゃあ、始めるね!」
海藤さんがそう言った途端に、頭の辺りに何か温かさを感じた。僕の頭に手は触れていないはずだが、不思議な感覚だった。
「目を開けていいよ」
ゆっくり目を開けると、海藤さんが驚いた顔をしていた。そして占いの結果をゆっくり説明してくれた。
僕のまわりには物凄い数の姫君がいて、僕の助けを待っているんだとか。また、この先とてもよくないことが起こるけど、そばにいる人と協力すれば乗り越えられる。みたいなことを言っていた。
クラスメイトに占っていた内容と、かけ離れ過ぎていて、僕は半信半疑で聞いていた。
「あー!その目は信じて無い目だなぁ!」
心を見透かされたと思い、焦っていろいろ言い訳したが、海藤さんは笑っていた。僕は海藤さんの目を見て、
「この占いって、霊視みたいなもんなの?海藤さん幽霊とか見れるの?」
「んー、幽霊とかはあまり見たりしないんだけど、凄く感じるんだよね。霊感が強い人が近くにいるとわかるし、龍悟くんの場合は少し離れたところにいても霊力みたいのが伝わってくるよ!瑠璃の占いは、相手の頭に手をかざして集中すると、瑠璃の頭の中にイメージが湧いてくるんだよね!」
海藤さんは笑顔で説明してくれた。
「そーいえば、あのペンは?黒くて綺麗なやつ!」
「あー、これね!」
海藤さんはバッグから黒い袋を取り出した。
「このペンは瑠璃が小さいときに拾ったものなの。このペンを持つと無意識のうちに文字を書いてて、その書いた紙を相手に渡すと、書いたことが本当に起きちゃうの!ただ、このペンを使いすぎると疲れちゃうのか、体が重くなったり頭が痛くなるから、一日に一回が限度だけどね」
海藤さんは平然な顔して凄いことを言っていた。それと同時に嫌な予感が僕の頭を駆け巡った。
「今日はこのペンで一回占いしちゃったけど、特別に占いしてあげるね!」
そう言うと、黒い袋からペンを取り出した。ペンを取り出した瞬間に、海藤さんの隣に女性が現れた。その女性はペンを握り締め、海藤さんの耳元で何か囁いているように見えた。海藤さんはメモ帳を取り出し、何か文字を書き出した。書いている時の海藤さんの顔はさっきまでの表情とは違い、目は虚ろのようになっていた。書き終わると、メモ帳を見ながら俯いて動かなくなってしまった。
「うそ…」
海藤さんは小さな声で呟いた。僕は気になりメモ帳を覗いた。
『両目をえぐり取る』
背筋が凍りつく感覚が襲ってきた。メモ帳に書いてあることが理解できず、頭が真っ白になってしまった。冗談か何かかと思い海藤さんを見ると、海藤さんは震えながらメモ帳を握り締めていた。
「こんなの渡せない!」
海藤さんは涙目になりながら叫んだ。
「渡さないとどうなるの?」
僕の質問に海藤さんはただ首を激しく横に振るだけだった。僕はメモ帳を無理やり奪い、一枚千切った。
「ピーーーーーン」
激しい耳鳴りに襲われた。あまりの頭の痛さに頭を抱えていると、徐々に体が重くなってきた。海藤さんの方を見ると、両手で口を覆い、地面に座り込んでしまっていた。
体の自由が利かなくなり、両腕が勝手に動き出した。僕は必死に抵抗しているが、少しずつ腕は動いていき、自分の両手で両目を覆う形になった。
声を出そうと思っても全く出ず、更には視界が塞がれているため、恐怖を感じることしかできなかった。両目を覆っていた手は、少しずつ動き、眼球に指が触れた。
「バーン」
勢い良くドアの開く音が聞こえた。
「龍くん!」
七海の声だ!僕は少し安心した気持ちになったが、指の力は増していき、眼球に痛みが生じていた。七海は僕に駆け寄り、
「バチン!バチン!バチン!」
背中を激しく叩いた。背中に鋭い痛みが走る。その後に七海は何かを唱えだした。すると徐々に僕の体は軽くなり、目から手を離すことができた。
七海に感謝を言おうとして顔を上げると、七海は物凄く険しい表情をして、海藤さんに近付くのが見えた。
「ごめんなさい」
海藤さんの声は震えていた。
七海は右手を大きく振りかぶる。とっさに僕は七海の右腕を掴んだ。七海は怒りで震えているようだった。こんなに怒っている七海を見るのは初めてだ。七海は海藤さんをキッと睨みつけ、
「二度と龍くんに近付かないで!」
そう言うと僕の腕を掴み、視聴覚室から引っ張り出した。そのまま七海と一緒に帰ったが、お互い一言も話さなかった。僕の家の前まで来ると、七海は俯いて動かなかった。
「うち、上がる?」
僕が優しく聞くと、七海は静かに頷いた。僕の部屋で二人でベッドに腰掛けたが、二人とも何もしゃべらず、沈黙が流れた。
「心配かけてごめんね。本当に助かったよ」
僕は重苦しい空気に耐えきれず、口を開いた。七海は首を振り、静かにしゃべり出した。僕が海藤さんに誘われて教室を出て行った時に、何か胸騒ぎがしたらしい。静かに後を付けていくと、二人が視聴覚室に入っていくのを見て、視聴覚室の前で僕が出てくるのを待つことにした。少し経っても出て来ないので、もう帰ろうと思ったとき、視聴覚室のドアから黒いオーラが流れ出てくるのが見えて、不吉な予感がしてとっさにドアを開けたとのことだった。
「中見たら、龍くんが黒いオーラに包まれててビックリしたよ!あんまり危ないことしないでね!」
話してスッキリしたのか、七海の表情は少し明るくなっていた。
「それにしても、海藤さんの隣にいた女性が原因なのかなぁ。女性からは悪いオーラは感じなかったんだけどな」
「どうだろう、とにかく早めに解決してあげないとね!」
七海は少し困った顔をしたが、すぐに笑顔になり、
「龍くんは優しいね」
そう言って立ち上がり、僕にキスをした。
「私にだけ優しければいいんだけどなぁ」
少し寂しそうな顔をして帰って行った。
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次の日学校に行き、教室に入ると海藤さんと目が合った。
「おはよう龍悟くん」
海藤さんは何事もなかったように振る舞っていた。
その日の休み時間に事件は起きた。
「瑠璃のペンがない!」
海藤さんは自分のバッグの中を探しながら焦っていた。海藤さんの隣には女性の姿が見え、その女性は何かを指さしていた。その指さしている方を見てみると、うちのクラスの女子が机で何かを書いていた。手には海藤さんのペンが握られている。
海藤さんの隣には例の女性が立っていて、必死に海藤さんに何かを訴えている。僕はゆっくり海藤さんに近付いた。
「あの…して。」
声が小さくて聞き取れない。
「あのペ…わして。」
女性の霊気が小さいため、後少しで分かりそうで分からない。僕は海藤さんの隣の女性に意識を集中した。
「あのペンを壊して!あのペンを壊して!」
はっきりと聞こえた。女性は何度も何度も同じ言葉を海藤さんに呟いていたのだ。聞こえたと同時に、黒いペンを持った女子が海藤さんに近付いてきた。
「海藤さんごめんね!一度でいいから占いやってみたかったんだよね!はい!これ返すね!」
女子は海藤さんにペンとメモ帳を渡して、自分の机に走って戻っていった。メモ帳を見た海藤さんの顔がみるみると青ざめていくのがわかった。僕は海藤さんのそばに駆け寄り、メモ帳を覗いた。
『屋上から飛び降りる』
全身の血の気が一気に引いた。洒落にならない。その瞬間、海藤さんの隣にいる女性が僕に強く訴えてきた。
「この子を助けて!」
同時に海藤さんは走って教室を出て行った。
「七海!」
七海は頷き、海藤さんの机の上に置いてあるペンを取り、僕は海藤さんの後を追いかけた。海藤さんは教室を出た後、階段を駆け足で上っていった。この階段を上りきった先には屋上へ出れるドアがある。しかしそのドアはいつも鍵がかかっているはずだ。海藤さんが屋上に出ていないことを祈り、階段を上っていった。
「なんてこった」
屋上へのドアは開け放たれていた。屋上へ出ると、フェンスを上ろうとする海藤さんの姿が見えた。
「海藤さん!」
必死で叫んだが、海藤さんはフェンスを上りきってしまった。僕はフェンスにとにかく近付いた。海藤さんはフェンスの向こう側で後ろを向いて立っている。海藤さんが立っているところは、30センチ程の足場しかない。海藤さんは下を向き、今にも飛び降りそうだった。
僕は意を決してフェンスを飛び越え、海藤さんの隣に立った。怖くて下を見ることができない。フェンスに掴まりながら、海藤さんの腕を力強く掴んだ。
「間に合った!」
僕はほっとして、海藤さんの横顔を見た。何か違和感がある。
「龍くん!そっちじゃない!!」
七海の叫び声が聞こえる。声のする方を見ると、七海が屋上のドアを出たところで立っている。その横には、海藤さんが地面に倒れ込んでいるのが見えた。
じゃあ僕が腕を掴んでいる人は誰なんだ。
「イッショニイコウ」
冷や汗が体の全ての毛穴から流れ出た。恐る恐る横を見る。僕が腕を掴んだ人は、『人』ではなかった。顔が真っ黒で、目と鼻もなく、口が耳元まで裂けているのだ。とっさに腕から手を離す。
「龍くん、そこから離れて!」
七海が走って近付いてくる。しかし、もう遅かった。
「イヒイヒイヒイヒイヒイヒ」
そいつは変な声を上げながら、僕の左腕を両手で掴んできた。そして、その場から飛び降りた。
一気に体が傾き、そのまま僕も足場から落ちてしまいそうになったが、とっさに右手でフェンスを掴み、なんとか持ちこたえた。
左腕は徐々に重くなっていく。下を見るとそいつは僕の左腕を掴んだまま笑い声を上げている。フェンスを掴んでいる右手の握力が少しずつ無くなっていくのが分かる。もう長くはもちそうにない。七海がフェンスを上ろうと手をかけた時、海藤さんの隣にいた女性の言葉を思い出した。
「七海!ペンを壊して!」
必死に叫んだ。右手は痙攣していて、もう限界だ。
「パキィ」
七海がペンを二つに折る姿が見えた。折れたペンから禍々しい黒いオーラが溢れ出ている。その途端に僕の左腕軽くなった。助かったと思い七海の方を見と、七海は険しい顔をしていた。
「まだいる」
僕は七海が何を言っているのか分からなかったが、とにかく戻ろうと思い、フェンスに手をかけた。
「龍くん!早く!」
その声と共に、激しい耳鳴りと頭痛が僕を襲った。
「やぁぁっと出れた」
耳元で海藤さんの隣にいた女性の声が聞こえた。その声と同時に背筋が凍りつく。女性はケラケラ笑いながら僕をフェンスから引き離そうとしてきた。さっきまでの弱々しい姿とは対照的で、女性の体は禍々しい真っ黒なオーラで包まれている。僕は必死でフェンスを握りしめた。
フェンスを握りしめている手に、温かいぬくもりを感じる。七海がフェンス越しに僕の手を握ってくれていた。そしてお経を唱え始めた。
僕は目を閉じ、七海の声に意識を集中させた。温かいぬくもりが僕の体全体を包み込んでいく感じがした。僕の体にしがみついていた女性がゆっくりと離れる。そしてまた僕の耳元で、
「残念ねぇ。じゃあね坊や。」
そう言うと、僕達から離れようとした。僕はすかさず腕の数珠を外し、女性の腕を掴んだ。女性が振り返り、物凄い形相で睨んでくる。僕は女性の目を真っ直ぐ見つめ、意識を強く集中させた。
「その目で見るなぁ!ガキィィ!」
女性の体は赤いオーラに包まれ苦しみだし、掴まれている腕を振り払おうと暴れ出した。
「落ちろ!」
僕は迷わず叫んだ。すると、何もない空間から赤い腕が何本も伸び、女性に絡みついた。女性は呻き声を上げ、赤い腕と共に徐々に姿が薄くなる。姿が消える間際に、
「あの子は全て知ってるよ」
そう呟き、消えていった。
僕は最後の力を振り絞り、フェンスを上った。フェンスを下りると、七海が優しく抱きしめてくれた。
ドアの方に目をやると、海藤さんは立ち上がり、空を眺めている。そして不気味な笑みを浮かべていた。七海は僕の隣で海藤さんを睨みつけている。
海藤さんは僕達に気付くと表情がパッと明るくなり、
「迷惑かけてごめんね!今回は本当に助かったわ!」
海藤さんは何度も僕達に頭を下げた。
「龍悟くん、今回のお礼は絶対するからね」
海藤さんはニヤッと笑い、階段を駆け足で下りていった。七海は僕の手を強く握ってきた。
空を見ると、曇天が僕達の街を包み込むように広がっていた。
作者龍悟
今回も読んでいただきありがとうございます。
中学生時代の話は、あと二話で一旦終了します。
次回は『笹木さん』の小話を投稿予定です。