【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編4
  • 表示切替
  • 使い方

山上での無線通信

俺が20代前半頃の話です。

nextpage

趣味のアマチュア無線で知り合った60代後半の男性、仮にVさんとしときましょうか。

nextpage

ある日、そのVさんに「渋谷君さぁ、来週無線のコンテストがあるんだけど参加してみないか」

nextpage

と、お誘いいただいた。

nextpage

このコンテストというのは良く覚えていないが確か、24時間で何人と交信する事が出来るかというものだったと思う。

nextpage

Vさんが言うには、「アマチュア無線は趣味の王様、君の様な電話ごっこな使い方じゃもったい無い

nextpage

もっと沢山の楽しみ方があるんやでぇ」と、

nextpage

俺は、あまり興味が無かったが、Vさんの強いすすめもあり、渋々参加する事にした。

nextpage

その日が来た 日曜日の朝 天気は快晴 Vさん宅へ向かった。

nextpage

俺は車を出す代わり、使用する機材は全てVさんが準備してくれた。

nextpage

機材を車に乗せ、Vさんの道案内で、国道307号線を信楽方向へと進んだ。

nextpage

やがて国道から外れ、細い山道をどんどん上へと

nextpage

そして目的地に到着

nextpage

そこは、山の頂上付近、広い原っぱになっていて、はるか北方向には琵琶湖が見える景色のいい場所だった。

nextpage

機材を降ろし、設営に入った と言うよりVさんがほとんど準備していた。

nextpage

よほど好きなんだろう 

nextpage

Vさんは、張り切りながら「今日は遠距離交信をするのにワイヤーアンテナを買って来たから

nextpage

HF帯、つまり7MHZと21MHZでONAIRする」と笑顔で準備していたが

nextpage

俺は、手伝わずに双眼鏡片手に景色を楽しんでいた

nextpage

その時 Vさんが「あぁ~渋谷君、マイク忘れてきしもたぁ」と、

nextpage

あ~あ である。

nextpage

「俺が取りに帰って来るんで、準備しといて下さい」

nextpage

と、言い車を走らせた

nextpage

無事マイクを持ってVさんの待つ山へ

nextpage

途中、何回か無線でVさんを呼んだが応答が無い

nextpage

アンテナの準備で手が離せないのだろう

nextpage

しかし、呼べども、応答無し 何か様子がおかしい

nextpage

ようやく現着(到着)

nextpage

あれぇ、Vさんの姿が無い

nextpage

あたりを見渡した

nextpage

隠れる所も無いし、ひょっとしてUFOにさらわれた?それともトイレか?

nextpage

そんな事を思いながら車を降りた

nextpage

前方に高さ5m程のアルミポールの先端にくくられたワイヤーアンテナの片方が、ぶら~んと垂れ下がっているのが目に入った

nextpage

そしておどろいた、何と そのアンテナの端にVさんが、倒れていた

nextpage

最初は、ビールでも飲んで寝てるんかと思ったが・・・

nextpage

「Vさん、Vさん!」と体を揺すり

nextpage

「帰って来ましたよ 何寝てるんですか」と呼びかけました(死んでいるんかと思った)

nextpage

Vさんは目を覚まし、 いきなり俺にしがみ付いてきた

nextpage

「渋谷君、帰ろう、帰ろう、帰ろう・・・」

nextpage

ぶるぶる震えながら60のおっさんが、俺にしがみ付いてきた

nextpage

何の事か判らず???だった。

nextpage

そう言いながら、走って俺の車の助手席に乗り込み 出てこようとしない

nextpage

何かにおびえている様子

nextpage

とても尋常じゃない様子だ

nextpage

俺は 半分怒りながら「どうするんですか、この機材」

nextpage

Vさんは「渋谷君片付けてくれ」と車から降りようとしない

nextpage

俺は、機材一式、雑にトランクに積み込んだ

nextpage

内心メッチャむかついていた

nextpage

せっかくマイク取りに帰って来て そもそもこの企画Vさんが俺を誘っておいて・・・

nextpage

仕方なし、車で山を下った

nextpage

助手席では相変わらず60のおっさんがぶるぶる震えながら

nextpage

「来んかったら良かった 来んかったら良かった」と、呟いている

nextpage

俺自身どうも納得いかない

nextpage

国道に出てしばらくした所で車を止めた

nextpage

Vさんに訳を聞いた いったいどうしたのかと

nextpage

訳を聞かせろと言う俺のしつこい怒り文句でVさんが、今経験した事をしゃべり出した

nextpage

Vさんは「おまえ信じるか 信じるか」と何度も

nextpage

「信じるって何をですか?」

nextpage

すると「幽霊」

nextpage

まさかVさん俺が心霊体験豊富な人間だなんて思ってもいなかっただろう

nextpage

Vさんが言うには 俺が出発してから、アンテナを組み立ての準備をしている時だった

nextpage

「寒い、寒い」と、小さい女の声が聞こえた

nextpage

最初は空耳だと思った

nextpage

しばらくして、また「寒い、寒い」と前方より、小さく震える女の声が聞こえた

nextpage

その声はさっきよりはっきり聞こえた

nextpage

やはり誰かいるのかと思ったが、こんな山奥に?それも見渡すかぎり人がいる様子も無い

nextpage

変だなぁと思いながらも作業を続けていた

nextpage

また「寒い、寒い、」と その声は段々こちらに近づいて来ている様子

nextpage

気味が悪いなぁと思い作業していると、今度は後ろから「寒い 寒い」と

nextpage

振り返って見ても誰もいない いるはずが無い。

nextpage

幽霊やお化けなど信じていない俺は、頭変になったかと思いながらも

ワイヤーアンテナの先端を紐でくくっている時だった

nextpage

丁度、洗濯物を干す格好で手を上にしてちょうちょう結び

nextpage

その時俺の左ワキの所から女の顔がぬうっと現れた、髪の毛をだらーんと垂らし目と口は、ゴルフボール位で真っ黒、まるで骸骨そしてかすれた声で「寒い~、寒い~」とこっちを見て・・・

nextpage

それを見て気を失ったと言うのだ

nextpage

もしかして 近くに埋められているんじゃないですかねぇ、その女。

結局この一日、Vさんに振り回されて終わりました。

Concrete
コメント怖い
0
6
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ