【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編4
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BAR

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おや......これはこれは、ようこそいらっしゃいました。

お一人様ですね?

......はい?

何がなんだか分からない?

道に迷われたんですか...

お困りの様なので手助け致しましょう。いえ、お気になさらず。

こんなところに店を構えていると退屈なものでしてね。

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まあまあ、そう急がないで下さいな。そんなに幾つも質問されては落ち着きませんから。

まずは好きなところにお掛け下さい。

見ての通り、席は選び放題です。悲しいことですが。

はい、それでは、何でしたっけ?

ああ、ここは何処なのかという質問でしたね。

うーん、詳しい場所はお伝えできません。大きな川のほとりとでも言っておきましょうか。

おやおや、そう気を悪くなさらないで下さい。私だってふざけている訳ではありません。

そういう決まりなもので...。

コーヒー、いかがです?

どちらでもいい、ですね。かしこまりました。

........................はい、どうぞ。あ、ミルクは切らしてまして、申し訳ない。

え?ああ、お代は結構ですよ。

差し上げます。

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さて、お客様に一つ、助言を申し上げます。

あ、聞かれなくても結構ですが、どうなさいますか?

......そうですか、賢明な判断です。

では、「もし貴方が貴方の望む結果が得たいのならば、私の話を良く聞くとよろしい」

方法はそれだけです。

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何が言いたいのかが分かりませんか......仕方がありません。しかし助言は助言として受けておいて下さい。

さあ、砂糖はございますので冷めないうちに。

はい、何でしょう?

......。

いいえ、大きな川とは多摩川ではありませんよ。

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多摩川の近くにお住みで?

...なるほど。

多摩川.........思い出しました。今が旬のネタがあるんです。良かったらお聞きになりますか?

ついさっき仕入れた新鮮なネタでー

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ーおや、もう行ってしまわれるのですか?

やめておいた方がよろしいかと。

そんなに焦らないで下さい。

ちょっと......お客さん...!?

ーだめだ!行ってはいけない!!

おっと、驚かせてしまいましたね。

急に大声を出して申し訳ない。

ただ、もう少ししたら船が来るので、それまではここでおくつろぎ下さい。

そのための場所でもありますから。

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待っていって下さいますか?

...ありがとうございます。

今店を出ても道は見つかりませんよ......。

いえ、何でもありません。

...では多摩川の話を始めますか。

随分と口数の多いバーテンですと?

ふふ、面白い事をおっしゃいます。

私も久しぶりに若い方が来られて嬉しくて、つい。

話、聞いていただけますね?

助言に従っていただけるようで嬉しいです。

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さて、多摩川の近くに、この話の主人公となる一人の青年が住んでいました。

年の頃は19、背丈は......ちょうどあなたぐらいです。

名を_____と言います。

はい?聞き取れませんでしたか?

_____ですよ。_____君。

あれ?おかしいな...。

(もう記憶の侵食が......?)

独り言です、お気になさらず。

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まあいいでしょう、そういう子が居たんだと理解していただければ結構です。

その子はこれといって特徴のある子ではありませんでした。

唯一テニスが他の人よりも出来たくらいです。

生まれてからずっと平和な、言ってしまえば平凡な生活を送っていた彼でしたが、18の時に運命の出会いを果たします。

相手は高3で一緒のクラスになった女の子。

二人はすぐに恋に落ち、想い出を重ねていきました。

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そして話はその半年後。

秋も終わり、冬が近づく風の冷たい日でした。

彼女との約束に遅れそうになった彼は、必死に自転車を飛ばします。

約束の場所まであと少し。

ちょうど時間に間に合いそうでした。

前方には最後の交差点

信号は黄色

勢いのまま突っ切ろうと最後のペダルを踏みます

そして次の瞬間

クラクションの悲鳴

一拍置いて巨大な衝撃音

横滑りするトラックと、宙を舞う身体

交差点を青年と信号の赤が染め上げました

少年は2メートル近く吹き飛んで、頭を強打したそうです...。

......という話です。

唐突に終わってしまいましたが、こういう話なので...

その後?さあ、どうでしょう。

さすがに私にも「先」のことはわかりません。

どうかされましたか?落ち着かない様子ですが。

え?今の時間、ですか?

おや、腕時計が壊れていらっしゃいますね......。

店の時計はあれですが......短針がないものでして。

あ、ちょうど船が来る時間です。

すっかり話し込んでしまいました。

...もう店を出ても平気ですよ。

ですが!ですが、少しお待ちを。

急がば回れというでしょう。

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一つ助言を致します。

最初の助言を覚えていらっしゃるなら、どうなさるべきかは自明の理ですね。

はい、そうでございます。

では、「もし行きたいなら、店を出て真っ直ぐ左に行くとよろしいー」

って、お客様、礼を言うのはまだ早いです。

話をお聞きに......待ってください!

...お客様ーー!!

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............ああ...行ってしまわれましたか

だから助言を申し上げたというに......

これもまた運命、ということですか

助言に従っていれば、最後まで聞くことが出来たでしょうに...

『行く』なら店を出て左に、

ただもし、『帰る』なら右に......とね。

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カヤさん、コメントありがとうございます
自分でもナルシストな話し方になっていないかというのは少し不安なところでした。
まどろっこしい作品ですが、そのように言って頂き嬉しいです。

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右ですね…覚えておこう。
読んで行くうちにだんだん分かってくるのが、静かに淡々としている雰囲気とあいまってゾッとしました。
語り口ってナルシストな書き方になっている話が多いのですが、この話は現実に近い口語で読みやすかったです。
つい頭の中で再生されてしまいました…

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ウルトラマン太郎さん、コメントありがとうございます
非常に高い評価を頂き、誠にありがとうございます
投稿者として嬉しい限りです

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仰る通り新しい切り口だと思います。
短い文章のなかに凝縮されたキーワードもナイス!
軽いタッチながら奥深さもあり面白いです。
今後も注目!

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ロビンさん、コメントありがとうございます
いつも私の拙い文章を読んでいただき、感謝しております。
素敵とは、滅相もございません笑
意外にも良い評価を頂けたので、続編も考えようかと思いました。気長に待って頂けるとありがたいです......

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蘇王 猛さん、コメントありがとうございます
そのように言って頂けるとは!
感激しております。猛さんのBAR物も是非読ませて頂きたいです!

ありがとうございます。ただ、筆にムラがかなりあるのでいつになるかは分かりません......笑

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ものすごく面白かったです~

ぐんぐん引き込まれてしまいました。素敵です。

続編楽しみにしています♪

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捻りが効いてて面白いですね!こういう素敵な文章を書けるなんて、羨ましい限りですね…。実は私もBar物の話を執筆中だったのですが、こうも素晴らしい作品が出てしまうと自分の作品が見劣りしてしまいます(笑)
続編が出るとしたら楽しみです!

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ローザさん、いつもコメントありがとうございます
当たっていますよ。好きと言ってくださり、安心致しました。もしかしたら続編も出すかもしれないので、よろしくお願いします笑

匿名さん、コメントありがとうございます
なるほど、とても建設的な意見で参考になりました。今度採用させていただくかもしれません。

upaさん、コメントありがとうございます
ご配慮感謝します笑

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はいヽ(・∀・)ノ
ネタバレ防止で言いませんけど(^O^)笑

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私は帰りたい(。´Д⊂)まだ川を渡りたくない!!
なんて
大きな川を分かったつもりでいるけど、果たしてあってるのかしら?σ(^_^;)?
ぞくぞくします。私はこう言うの好きです。

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upaさん、コメントありがとうございます
そうです。どんな助言からでも何かしら得られるものがあると思っています。
ですので、その面ではコメントも同じだと考えています。
ところで大きな川とは何かお気付きになられましたか?

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せっかちは損をしちゃいますね(´・ω・`)
ドキドキする作品でした♪

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