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ファラオ(愛犬)は、御主人様が頭を強打して、苦痛で目覚めたと言うのに、気持ちよさそうに、俺の股の間にピッタリと収まり、スースーと寝息をたてている。
何だか、ドッと疲れたのに、心臓がバクバク鳴るのを止めず、その朝はもう眠りにつくことができなかった。
それでも、気持ちよさそうに眠るファラオを見ていてると可愛いな~と癒されたのだが…
ものの数分で、
『なぜ、主人の俺が眠れなくて苦しんでいるのに、こいつは気持ちよさそうに寝ているんだ?』
という、どう転んでも八つ当たりとしか思えない感情をいだき、布団をはいで、飛び起きてやった。
もちろん、ファラオも強制的に飛び起きることになったのは言うまでもない。
それにしても、腹が減った。
寝る前に食べたのに、物凄く耐えがたい空腹に襲われ…
『ファラオ、コンビニ行くぞ!!』
と、眠るのを諦めたのだった。
日の出間もない街は、寒々しく、まだ人は少ない。
買い物を済ませ、コンビニの帰り道。
リードを付けた黒猫が日向ぼっこをしている場面にでくわし、リードを握ったまま座り、日向ぼっこをしている人に話しかけた。
『おはようございます、Cさん。寒くないのですか?』
キラキラした朝日を集めてその人は答える。
『おはよう、A君。朝日って気持ちいいね、冷たかった体がドンドン温まっていくみたい。』
この人と話していると、いつも胸の奥の方でズキズキと小さな痛みを感じる。
そして、いつも、兄貴とこの人に何があったのだろうと考える。
コンビニへのこの道でCさんとちょくちょく会ううちに、世間話をするくらいの間柄にはなっていた。
少しのおしゃべりの後、空腹に背中を押され、帰ることにした。
帰り際、Cさんに呼び止められ…
『君、つかれてない?』
と、心配をされたのには少し親近感を感じた。
『元気ですよ♪ありがとうございます♪』
と、できないウィンクをしようとして、両目をパチクリしていると、
『可愛いね君は』
と、笑われたのだった。
年上の女性に可愛いと子供扱いされるのは、あまり好まないが、内心むずがゆさに早々と立ち去ることにした。
ダルいまま1日を過ごし、ひたすら長い1日を終えた。
そしてその日も夢を見た。
雰囲気のいいBARで、綺麗に丸くカットされた氷を指2本分入れられたアルコールで溶かしながら飲んでいた。
ギィ…パタン…
ドアを開き、そして閉じる、小さな音と、俺の隣に腰掛ける女の子…
グラスの氷が少し溶けて、カランと耳障りのいい音を鳴らし、俺はバーテンダーに、
『彼女に似合うカクテルを…』
と、注文をする。
洗練された大人の時間を2人で堪能し、彼女が、『お手洗いに…』と席を立つのを合図に、会計を済ませることにした。
そして固まる。
ゼロの数が伝票をはみ出てカウンターにまで表示されている。
『ちょっ!?これは高すぎませんか!?』
苦情をつけようと顔を上げると、バーテンダーは、まさに鬼の形相で包丁を振りかざしてきた。
後ろにのけぞってよけたが、体勢を崩して転けそうになる。
『うわぁ~』と情けない声をあげ、倒れそうな俺の手を引き
女の子が言う。
『こっちよ!!』
2人して扉を蹴破り、店の外へ転げ落ち…
目が覚めた。
ベッドから転げ落ち
『いってぇ…』
と、うめく俺を、ベッドの上から、うんざりそうに眺めているファラオがいた。
作者Incubus
トラブルメーカーシリーズ~セカンドシーズン~
トラブルメーカーシリーズがいわゆるセカンドシーズン突入です!!
一回り歳の離れた兄貴は死んでしまったのに、Aの中にその意思は生き残った。
彼女のNと、彼女を守るもう1人の人格S…
4人の関係はよりいっそうカオス化していくばかり…
トラブルを巻き起こしながら彼らはどこへたどりつくのでしょうか…
ホラー×恋愛
異色のストーリーをお楽しみください!
ノミネートしていただいた
『くるって』
をふくむファーストシーズンは『トラブルメーカーシリーズ』で探すか、筆者のプロフィールから投稿した話を読んでいただけます!
よかったらそちらも読んでいただけたら、セカンドシーズンをもっと楽しんでいただけると思います!
それでは今後もゆっくりですが更新していきますので、よろしくお願いいたします。