結果から言ってしまおう。ドアノブは開かなかった。ガチャガチャ回してみても、押しても引いても、びくともしなかった。のり姉が言う。
「拍子抜けするねー。ま、当たり前かな?」
僕等は、今度は病室が並ぶ方へと向かった。
廊下の壁には、可愛らしいイラスト。大きなガラスの板があって、その向こうには幾つもの保育器が置いてあった。
当たり前だが、もう誰もいない。
病室を、ひとつひとつ覗いていく。
診察室と違って病室は色々な忘れ物があった。
子供からの手紙らしく、全部平仮名で
「さっかーをしたいのでおとこのこがいいです。」
等と書いてある折り紙もあった。手紙のつもりだったのだろう。
肝試しにあるまじき、和やかな空気が流れた。
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まぁ、でも、別に何もいなかった訳では無い。
只、病院というのは元々霊的な物を寄せ付けやすい。いるのは、そこら辺にもいる様な浮遊霊ばかりだそうだ。・・・僕には見えないけど。
のり姉がぼやく。
「お爺ちゃんお婆ちゃんばっかり!」
薄塩はなんだか嬉しそうだ。
「・・・目に優しい。」
僕には何も見えないけど。
「コンソメ君、あそこ、お婆ちゃんいる。」
あ、見えた。
「あっちにはお爺ちゃんね。」
出た。
「・・・これ、薄塩達にはどう見えてる?」
薄塩が嬉しそうに答えた。
「グロくない。見やすい。」
「・・・そう。」
あれだ。緊張感の欠片も無いってこの事だな。
どうやら僕は、何処に何がいるかを教えてもらはなくては見えない様だ。
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最後に僕等が着いたのは、棟の最上階の端の部屋。
引き戸に手を掛ける。
その部屋の中、《彼女》はいた。
作者紺野
どうも。紺野です。
実は、ここまででおかしい所があります。
ですが、突っ込みは厳禁でお願いします。
無論、まだまだ続きます。
良かったら、お付き合い下さい。