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中編7
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河童塚《前編》

ある日の事。僕達はいつもの様に馴染みの神社でぐうたらしていた。誠に平和な事だ。だが、この平和はとある人物によって華麗に、完膚無きまでにぶち壊された。それは、暑い夏の日の事--

その日も僕等は飽きもせず怪談話に明け暮れていた。そして僕は正に今、渾身の怪談を薄塩に聞かせている所だ。

「で、その家は今も誰かが迷い混んで来るのを待っている・・・。」

どうだ!これはかなりの出来のはずだ!

「うん。35点。」

「はぁ・・・?」

かなりの低得点だ。これは理由を聞かなきゃ納得出来ない!

「薄塩・・・?何でそんな低得点なんだ・・・?」

「いやいやいや!ちょっと待って!何で百科辞典なんて持ってんの?!」

「気にするな。お前がちゃんと納得出来る説明をすればいいだけの事だ。・・・他に質問は?」

薄塩が、ブンブンと頭を振った。そして、恐る恐るといった感じで説明を始める。

「だって・・・全員が死んだら、一体誰が話を伝えんの?警察が捜査して解らなかったんだろ?」

「あ・・・。」

確かにそうだ。怖さを追及する余り、大切な事を忘れていた。

「都市伝説としては良いかもな。でも、本当にあった的なテイストで行くならちょっとリアリティーに欠けるかな。」

「むぅ・・・。」

納得だ。・・・悔しい。納得出来まる分、何だか余計に悔しい。僕は、少し意地悪く言った。

「そこまで言うなら、お前の話はさぞや怖いんだろうな?」

薄塩が、ニヤリと笑う。

「勿論。取って置きのを、話させて頂きます。」

「この話は、ただの--。」

「やあ!少年達!」

「「え?」」

声のした方を見ると高校生位の女性が、こっちに向かって手を振っていた。

「元気そうで何より!」

親しげに話し掛けながら、こっちに歩いてくる。僕の知り合いでは無い。だったら・・・と思って僕は薄塩の方を向いた。

薄塩は、何だかとってもジャスタウェイな顔をしていた。ここまで生気の無い人間の顔を見るのは、初めてだった。

「コンソメ君・・・だったよね?」

いつの間にか女性が側に来ていた。ショートカットの、キリッとした感じの女性だ。見れば見るほど、知らない人だ。だが、僕に喋り掛けてきたと言うことは、あっちは僕の事を知ってるらしい。何はともあれ、挨拶位はしておいた方が良いだろう。

「はい。そうです。今日は。」

「あ、やっぱり。それにしても、コンソメ君は肌が白いねー。羨ましいなー。」

「え?あ、はい。ごめんなさい(?)。有り難うございます。」

女性が笑いながら言う。

「なんで謝るのww あ、それにしても今日ってかなり暑いよね。熱中症対策ちゃんとしてる?ちゃんと水分補給しなきゃ、すぐに倒れちゃうよー?」

本当に・・・誰なんだこの人。僕は、暑さで若干アホになっている脳をフル回転させた。一瞬、名古屋に住んでいる従兄弟(♂)が、何かに目覚めてしまったのかとも思ったが、流石にこんなハイクオリティー女子になれる筈がない。

「コンソメ君?どうしたの?まさか熱中症?」

少しボケーッとしていると、女性が心配そうな顔でこちらを覗き込んでいた。

「あ、違います。大丈夫です。・・・御心配掛けて、すみません。」

「ううん、良かった!」

女性が、またニコッと笑った。そして、

「あ、そうだ!すっかり忘れてた!」

と、言いながらバッグから何かを取り出した。

カンペンケースだった。そして、次の瞬間・・・。

パッカーーーンッッッ

という音が神社の境内に響き渡った。薄塩が、女性にカンペンケースで殴られた音だった。

「何すんだクソ姉貴!!」

「誰がクソだゴルァ(# ゜Д゜)」

・・・何これ。どゆこと?

「友達が正体不明の女子高生に絡まれてんだ。助けんかいゴルァ(# ゜Д゜)」

「だって姉貴だろ?!」

「コンソメ君から見てって事だよバーカ(゜Д゜)」 「誰がバk・・・」

「おめーだよバーカ(゜Д゜)」

僕(´・ω・`)

どうしよう。話についていけない。

「てか何で姉貴が・・・」

「うっせえ。てか早くコンソメ君に紹介しろし。」

「横暴だ・・・。」

「あ"あ"ん?」

「・・・何でも無いです。」

僕 壁|ω・`)

薄塩が、溜め息を吐いた。

「コンソメ、これ、俺の姉貴。名前は《のり塩》」

「よろしく!《のり姉》ってよんで!(*^▽^*)」

超笑顔だ。さっきまで鬼みたいだったのに。

「ど、どうも。薄塩の友人です。コンソメです。」

「薄塩から話は聞いてるよ?怖い話、好きなんだって?」

「ちょっ、姉貴っ・・・」

「あんたは黙ってな。」

「あのさ、いっしょに肝試し、行かない?」

「肝試し?」

「そう。肝試し。お祭りのついでだけどね。」

・・・・・・のり姉が言うことには、○○県の◇◇町という所で、1週間後にお祭りがあり、そしてその祭りの会場の近くに、穴場の心霊スポットがあって、お祭りついでに少し寄ってみようという事だそうだ。

「いやー。薄塩から、怖い話とか好きな子だって聞いてたからさ。もしかしたら来るかなって。で、どうする?いっしょに行く?」

僕は即答した。

「はい!行きます!」

実を言うと僕、この夏休み中何処にも連れていってもらってないのだ。丁度いい機会だと思った。

「コンソメ君コンソメ君、でも、祭りは夜なんだよー?親御さんが許してくれるカナー?」

え?薄塩が《君》?気持ち悪い。

「別に?僕の家、そういうの結構ユルいから。」

「・・・そうかい。」

のり姉が、またニコッと笑った。

「じゃ、決定ね!細かい事は後で薄塩に伝えさせるから!じゃーねー。」

そうして、のり姉は颯爽と去っていった。

そして僕が横を見ると、薄塩が再び、顔面まるでジャスタウェイになっていた。

「・・・薄塩?」

掌を目の前でヒラヒラしてみても、反応が無い。

「薄塩ー。うーすーしーおー。」

やはり反応が無い。一体薄塩はどうなって・・・と思った瞬間、薄塩が、僕の方を向いてポロポロと涙を流し始めた。え?えええええええ!

「う、うすっ、薄塩?!」

「・・・ごめん。コンソメ。」

何の事だ!

「でも行くって言ったコンソメも悪いんだからなー!」

だから何の事だ!

「あ"あ"あ"あ"あ"もういやだぁぁぁぁ・・・。」

薄塩が、電池の切れたオモチャみたいに、どさっと崩れ落ちた。

「薄塩・・・。どうしたんだ一体。」

薄塩が、崩れ落ちた体勢のまま喋り始める。

「・・・姉貴のチョイスした心霊スポットって事は、本物なんだよ・・・。」

「本物って?」

「本当に出るって事。それはもう確実に。」

「はぁ?!」

「出る所をわざと選んでんだよ。」

「わざとって、どうやって・・・。」

薄塩が叫んだ。

「《見える》んだよ!!俺も!姉貴も!」

「・・・・・・。」

僕は絶句した。確かに、僕は幽霊とかの、《人ならざる者》の存在を信じていた。でも・・・。

「それって、《霊感がある》って事?」

薄塩が、コクリと頷いた。

「・・・何で、今まで黙ってた。」

本当か、とは、聞かなかった。踞っている薄塩が、嘘を吐いているとは思えなかった。

「気持ち悪いだろ・・・。どう考えても。」

薄塩が続ける。

「だって、普通は見えない物が見えるなんて・・・下手したら、化け物だろ。」

そんな事無い。なんて、言えなかった。薄塩の表情は、今までに見た事が無い位、暗い物だった。

「俺、実を言うとコンソメ位しか友達居なくてさ。理由は・・・分かるよな。話そうとも思ってたんだけど・・・。言えなかった。ごめん。」

「でも・・・。」

薄塩が、顔を上げた。

「今、カミングアウトしとかないと、薄塩を守れないから。」

何かを決意した様な、表情だった。

「肝試しが終わったら、俺から離れるなり何なりしてくれて構わない。でも、それまでは・・・。

頼む。友達として、守らせてほしい。」

・・・こいつは・・・。

「あのな、僕は今日まで、お前を《もしかしたら人間じゃないのかも》とか、思ってたんだ。それでも薄塩はいい友人だと思ってた。だから、だから、・・・!」

上手く言葉が出なかった。

でも、薄塩は笑ってくれた。泣きそうな顔で。

「何だかんだで優しいよなー。コンソメは。」

僕は何だか無性に恥ずかしくなって、

「大体、僕なんて将来の嫁(実は婿なのだが、この時はまだ知らない)が爬虫類だぞ!お前なんて、どんな能力があろうと、人間じゃないか!」

と、言った。そして、僕はふとある事に気付いた。

「と、いうか、お前に守って貰わなくても、僕がのり塩さんの誘いを断ればいいんじゃないか?」

薄塩が、真顔で言う。

「姉貴に逆らえる訳無いだろ?ましてや1度行くって言っちゃった身で。」

「・・・。」

何者なんだ。のり塩さん。

「大丈夫!俺がキッチリ守ってやんよ!」

薄塩が、ニヤッと笑って言った。

僕は、やっぱり薄塩はこの顔が一番馴染むな。と、思った。

決戦は、1週間後。

Concrete
コメント怖い
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カンペンイタそ~(T_T)
がんばれ!!コンソメ君、薄塩君

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自分に取って「怖い」の評価は、何度も読みたいと思う作品に付け居ます。このシリーズは、自分が大好きな「なつのさん作品」と同じ位、気に入ってます。

返信

ォォッ!のり塩は女でお姉さんだったとは..
期待を裏切らない登場でした(d゚ω゚d)オゥイェー♪

のり姉は弟に出来た怪談好きな友達に興味アリアリなんですかね?

後編が待ち遠しいです。

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これはアニメ化しても面白そうだ゚+.(◕ฺ ω◕ฺ )゚+.
思わず笑ってしまった!そして二人の友情に乾杯!!

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