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中編6
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April smart

小学5年生から大分飛んで、これは僕と薄塩が中学1年生の時の話だ。本当なら、時系列に沿って話を進めていくべきなのだろうが、この話はのり姉に頼み込んでやっとOKを貰えた話だし、年が明ける前に書いてしまいたい。

この話は、全く怖くはない。

でも、内容はかなり暗い。

あと、のり姉からの命で、話の最初におまじないをしておく。

これは、只の作り話だ。

4月1日が何の日かご存知だろうか。

一応書いておく。April fool だ。

一年に一度の、嘘を吐いてもいい日。

これは、4月1日に僕等が会った女性の話。

その日、僕はのり姉から呼び出しを食らっていた。だが、その呼び出しは、

「・・・嫌なら、無理しないでいいから。」

と言う物で普段の、

俺様?何様?御姉様!!

な感じとは酷くかけ離れていた。

ここまで弱気なのり姉は、始めてだった。

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待ち合わせ場所には、のり姉と薄塩がいた。

二人共、何だか暗い表情をしている。

「・・・来たんだ。」

のり姉が、うっすら笑う。

「・・・行こうか。」

僕と薄塩は、のり姉の後について歩きだした。

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着いた場所は、ある空き家だった。

「ここは?」

僕が聞くと、

「友達の家。」

と、のり姉は答えた。

扉を開ける。

鍵は掛かっていなかった。

「お邪魔しまーす。」

のり姉が、笑顔で言う。さっきの暗い表情は何処へ行ったのだろう。

僕等も、

「お邪魔します。」

と言って、中へ入った。

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家の中へ入ったのり姉は、どんどん進んで行く。

のり姉が、ある部屋の前で止まる。

コンコン、とのり姉がドアをノックした。

中から

「どうぞー。」

と言う声が聞こえた。

中には、

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一人の女性がいた。

その女性は、こちらを見てニコニコと微笑んでいた。女性が嬉しそうに言う。

「いらっしゃい!のり塩ちゃん!」

のり姉も嬉しそうに言う。

「今晩は!◯◯◯ちゃん!」

薄塩も挨拶をする。僕も慌てて挨拶をした。

「今晩は。」

「こ、今晩はー。」

女性が僕の方を見た。

「ん?のり塩ちゃんの弟君、二人も居たっけ?」

「どうも。のり姉には何時もお世話になってます。コンソメといいます。」

「あ、彼氏?」

「んな訳ねえです。絶対に有り得ません。」

薄塩が噴き出す。

「コンソメwwwおま、どんだけ嫌なんだwwいや、分かるけれどもww」

「あ"?」

のり姉が薄塩の頭を掴む。

ゴキュッッ

という、人体からしちゃいけない音がした。

楽しそうに女性が笑う。

「楽しそうだね♪」

のり姉が笑顔で答える

「うん!楽しい♪」

「いやいやいや、楽しくない楽しくない!!凹むから!頭蓋骨が!凹むから!」

薄塩がえらいことになってる。

女性がまた、こちらを向いた。

「コンソメ君っていうの?私は◯◯◯。よろしくね!さっきのは冗談。薄塩君のお友達でしょ?」

なんて可愛らしい女性だろう。

僕はそう思った。

多分僕より歳上だろうけれど。

だって、見た目は僕等と同じ位に見えても

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彼女の時間はもう、動いていないのだから。

彼女は、幽霊だ。

いくら優しい笑みを浮かべていても。

いくら生きている人間の様でも。

彼女はもう、生きてはいない。

◯◯◯さんが、楽しそうに言う。

「毎年ね、4月1日にはのり塩ちゃん達にお話を聞いてもらっているの。」

「さあ、始めましょうか。」

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◯◯◯さんが、ゆっくりと話を始めた。

それは、例えるなら童話の様な感じだった。

「私が作った話なの。」

◯◯◯さんは、恥ずかしそうに笑った。

話の内容も、話している時の演技もクオリティが高くて、僕は一気に話に引き込まれた。

薄塩やのり姉も、楽しそうに話を聞いていた。

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1時間ほど話を聞いていただろうか。

◯◯◯さんが

「はい、これでおしまい。」

と言った。

僕等は、全力で拍手をした。

「面白かった!◯◯◯ちゃん、やっぱ凄いね!」

◯◯◯さんはまた、恥ずかしそうに笑った。

その後、僕等は30分ほど話をして、空き家を出た。

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僕等はその後暫く歩いた。すると、

のり姉がいきなり、道端にしゃがみこんで泣き出した。

僕と薄塩は、取り敢えず近くに公園があったので、そこにのり姉を座らせることにした。

薄塩はどうやら慣れているらしかった。

のり姉は泣き止むと、ポツリポツリと話始めた。

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「あのね・・・あの子ね・・・。」

長くなるし、完璧には覚えていないので纏める。

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◯◯◯さんは、生前からのり姉と仲が良い友人だった。

引っ込み思案で、少しおっとりした◯◯◯さんと、男勝りで良くも悪くもハッキリしているのり姉。

二人は、何時も一緒にいた。

だが、ある日、ある事件が起こった。

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◯◯◯さんが、望まない妊娠をさせられたのだ。

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・・・詳しくは書けないが、《男に産まれた事を全力で申し訳なく思う》位ショッキングな物だった。

普通、そういう事があった場合、堕胎をするのが一般的なんだと思う。

しかし、彼女はそれをしなかった。

理由は、

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彼女も、《見える人》だったから。

のり姉は言った。

「あのね・・・堕胎する位の赤ちゃんてね、まだ人格や肉体どころか、魂も確立されていないらしいの。だからね、堕胎して降ろされた子は、水子となることも出来ないんだって。この世に存在することも出来ないまま、消えるしかない・・・。あの子、そんなのは可哀想だって。どんな形であれ、産まれて来ようとする命の、邪魔をしたく無いって。・・・全く、お人好しにも程があるよね。」

そしてまた、泣いた。

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だが、周りの人はそうはいかない。

特に両親の反対は物凄かったという。

そして彼女は、無理矢理子供を降ろさせられた。

その日から彼女は、度々嘘を吐く様になった。

元から軽い妄想癖があったらしいが、そんなの比べ物にならない位、毎日毎日嘘ばかり吐いたそうだ。

いや、話を聞くと、嘘というより、自分の妄想の中に潜り込んでしまった感じだった。

そしてある日、◯◯◯さんは、

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自ら命を絶った。

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そこまで話すと、またのり姉はまた泣き出した。

「私、見えるのに、何もしてあげられなかった。◯◯◯ちゃんの気持ちが分かってあげられたの、私位しかいなかったのに--・・・。」

僕は何も言えなかった。

薄塩は、黙って空を見た。

優しく笑っていた、◯◯◯さん。

彼女が抱えていた物は、僕の想像を遥かに越えて重かった。

僕の目からも、自然と涙が溢れた。

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ふと、のり姉が言った。

「・・・帰ろっか。」

「・・・大丈夫ですか?」

のり姉は、小さく頷いた。

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「のり姉。」

「ん?」

「何で・・・僕を呼んだんですか?」

のり姉は言った。

「あのね、・・・コンソメ君、コンソメ君には、あの子、どう見えた?」

僕は答えた。

「・・・綺麗で、優しく笑ってて、素敵な人だと思いました。」

のり姉が、こちらを振り向かずに言った。

「そっか・・・そうだよね!良い子でしょ?だからね、・・・只の、友達自慢。」

僕は気付いた。

僕が見た彼女は、優しく笑っていた。

でも・・・。

のり姉達にも、そう見えていたとは限らない。

「とっても・・・素敵な友人ですね。」

「うん。」

のり姉は、声を震わせながら言った。

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「あのね、もし、あの子が、自分の心を守るために嘘を吐いていたんだとしたら、それは、とても、とても頭の良い事だったと思うの。だからね。・・・あの子は、私の自慢の友達。」

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振り向いたのり姉は、涙を流しながら、それでも、誇らしげに笑っていた。

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前作から読んで来ました。
元妻が妊娠した時に付き添いで産婦人科に行ってましたが、そういう部屋は普通の人には解らない場所にあるんでしょうかね…

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何故のり姉さんが前作で、あれ程怒っていらしたのか分かった気がします。

日本で一番多い死亡理由が”堕胎”だと、聞いた事があります。(本当かは分かりませんが...)とても悲しい事です。

幽霊は見えなくとも、のり姉さんのお友達の様な、優しい気持ちを持った方が増える事を祈ります。

胸を打つお話、有難う御座いました。

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悲しいお話。
のり姉が何故、堕胎を凄く嫌がるかがわかったような気がします...
3人とも優しい
この前自分は優しくないとのコメントでしたがやはり充分優しいですョ(*''-'')b

何故黒執事の実写で荒ぶってるのか気になります。
来年も3人のお話楽しみにしてます!

コンソメ君、薄塩君にのり姉、皆様良いお年をお迎え下さいね!

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