唐突ですまないが、今から書く話は、今、この話を読んでいる貴方にとっても他人事では無い話だ。
だが、別に、この話を読むと呪われるとか、そういう類いの物では無い。
・・・貴方は、もし、所謂心霊系のチェーンメールが来たら、どうするだろう?
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回すのか、回さないのか。
「もしかしたら自分は不幸になるかもしれない。」
なのか、
「誰も不幸になっていないのだから、自分もならない。」
なのか。
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さて、どちらを選んだ人も、一度は考えた事があるかと思う。
何故、そういった怪奇現象が起こる人と、起こらない人がいるのか、と。
もう一度書かせて頂く。
これは、他人事では無い。
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事の発端は、ピザポに来た一通のメールだった。
内容は・・・
此処には書かない方がいいだろう。
これを読んでいる皆様に迷惑を掛けるかもしれない。
それだけは絶対に嫌だ。
「○人にこれを送らないと、呪われる」
という事が書いてあった、とだけ伝えておく。
よく有りがちなチェーンメールだ。
しかし・・・。
これから先は、本文で書く。
高校1年の夏休み。
これは、僕と薄塩とピザポの話。
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「あ"ーつ"ーい"ー・・・。」
薄塩が今にも死にそうな声を上げた。
僕は、最早毎年恒例となった台詞を口にした。
「夏だからな。」
「そりゃそーだけどwwwコンちゃん厳しいww」
ピザポが愉快そうに言う。
上を見上げると、大きな入道雲と青い空。
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此処は近所の神社。
僕等は、その日もそこの縁側でウダウダとしていた。
夏休みなのに人が少ないのは、連日の猛暑のせいだろう。
アスファルトには陽炎が立っている。
また薄塩がぼやいた。
「暑いなー。暑いなー。暑いなー。」
「五月蝿い。」
僕が叱ると薄塩は、ぶう、と拗ねた顔をして縁側に寝転がった。
ピザポが寝転がって目を閉じている薄塩の鼻にティッシュで作ったらしき紙撚を突っ込もうとする。
「何をする!!」
カッと目を見開き、薄塩が紙撚を掴む。
ピザポが驚いて言った。
「起きてたのか?!この卑怯者!!」
「卑怯者はそっちだ!!」
薄塩が紙撚を奪い取り、それをピザポの鼻に突っ込もうとする。
「止めろー!」
「止めるかー!」
後ろで繰り広げられている光景の、余りの馬鹿馬鹿しさに僕は、全く関係無い事を呟いた。
「雨、降らないかな。」
その時だった。
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ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・
どこかで雷鳴がしたかと思うと、ポツポツと雨が降り始めた。上を見ると、いつの間にか入道雲が頭上を覆っている。
「降った・・・。」
「降ったーーー!!!」
僕は、思わず叫んだ。
「何言ってんだ!濡れるぞ!!」
「コンちゃんどうしちゃったの?!」
二人が僕の袖を引っ張った。
袖を引っ張られるまま、僕は本殿の中に連れ込まれた。・・・せっかく、雨を降らせた(?)のに。
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「大分涼しくなったなー。」
薄塩が嬉しそうに言う。
雨はまだ、降り止みそうに無い。
「帰る頃には止むといいな。」
僕は呟いた。
ピザポがスマホを確認した。
「まだ3時だし、大丈夫だろ。・・・ん?」
「どうした?」
横を見ると、ピザポが首を捻りながら画面を覗き込んでいる。
「いや・・・。何か変なメール来ててさ。」
「誰から?」
薄塩が聞く。
ピザポは、今度は反対方向に首を捻って言った。
「いや、それが・・・分からないんだよ。」
「詐欺メールじゃないのか?開けて大丈夫か?」
僕が聞くと、ピザポは益々首を捻った。そんなに捻って、痛くないのだろうか。
「・・・登録してないアドレスからは、来ない様になってんだけどな・・・。」
「本文は?もう開けたのか?」
僕が聞くと、ピザポがスマホを此方に寄越してきた。そこにはーー
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意味不明な、文字の羅列。
そのまま書き写せないのが残念だ。
一目見れば、その異常性が分かるのだが。
「な、変だろ?」
「確かになー。」
「どれどれ。俺にも見せて。」
薄塩は、暫く画面とにらめっこをしていたが、やがて
「変だなー。」
とスマホをピザポに返した。
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それから僕等は、一時間ほどそのメールを縦読みしたり言葉を組み替えてみたりしたのだか、結局何も分からなかった。
5時位になると雨も弱まり、その日はもう帰る事になった。
あのメール・・・回さなければ呪うとか書いてあったが、大丈夫だろうか?
只のチェーンメールならいいのだが・・・。
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次の日。朝からバケツを返した様な雨が降っていた。
昼過ぎ、ピザポから、
「階段から落っこっちった☆
マジ痛いwwww
てへぺろ( v^-゜)♪」
と、連絡が来た。
顔文字にイラッとした。
夜寝る前、またピザポから、
「何か頭痛が治まらない・・・(。´Д⊂)
バカになったらどうしよwwwww
電球いきなり切れるしー・・・。
もうー・・・。」
と、連絡が来た。
もう何か全体的にイラッときた。
女子か!
お前は女子か!
いや、女子から連絡貰った事無いけど!!
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その次の日。また雨だ。
このままじゃ水害も起きかねない。
予報では夕方には晴れると言っていたが、どうなのだろう。
昨日からピザポが五月蝿い。
返事をするのも大変だ。
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ピロリロリロ♪
着信音が鳴り響く。
ピザポからだ。
「テレビ映らない~(;´д`)
今日見たい番組あるのに・・・。
本棚倒れるし、もう最悪www」
相変わらず文章はアレだが、
・・・・何だか、どんどん酷くなってないか?
いや、でも・・・気のせいか?
少しだけ心配だ。
気のせいなら、いいのだが。
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午後になると、雨は段々と弱まっていった。
ピロリロリロ♪
またピザポからだ。
「なあー。
今日家に泊まり来ない?
親、イ・ナ・イ・カ・ラ☆
きゃ♪(/ω\*)」
キャラじゃないのは、重々承知しているが、一言だけ言わせて欲しい。
ウザい。マジウザい。
何が「きゃ♪(/ω\*)」だ。
馬鹿か!
心配して損した!!
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夕方頃、漸く雨が上がった。
ピロロロロッ♪
スマホが鳴る。
・・・電話か?
・・・・ピザポだ。
またあいつか。
「・・・・・・もしもし。」
「あ、コンちゃん?今からちょっと行くから。泊めて。いやー。ごめんねー?・ャク・・面倒事抱えちゃったみたいでさ。・・・・・クソクャクソクヤ」
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ブツッッ・・・
いきなり電話が切れた。
・・・何だったんだ、さっきの・・・。
もう一度掛けてみよう。
数回のコール後、ピザポが出た。
「ピザポ!!今どこにいる?!」
「え?今?ソクヤクソクャク神社の前だけど。ャクソクャクソあ、今は全然大丈夫っぽい、クャクソクャクソクヤ」
言葉の切れ目に、何か声が聞こえる。
「・・・っっ!!今から行く!神社で待ってろ!」
僕は神社に向かって走り出した。
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走りながら僕はのり姉と薄塩に連絡を入れた。
「もしもし!のり姉?!」
のり姉が出た。落ち着いた声で言う。
「知ってる。薄塩から聞いたよ。・・・ピザポ君は今どこに?」
「いつもの神社です!!僕も今向かっています!」
「分かった。私も薄塩と向かうから。」
そこまで言うと、電話は切れた。
僕は、走る事に集中する事にした。
神社まで、あと少し。
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神社に着くと、ピザポが泣きそうな顔をしていて縁側に座っていた。
危なそうな奴はどうやらいない様だ。
「ピザポ!!」
ピザポが此方を見る。
「あ、どったのコンちゃん。いきなり。」
僕は電話の時の事をピザポに説明しようとした。
「さっきの電話・・・」
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「うぇーーーーーいwww!!!!」
僕が振り返るとそこにはのり姉と薄塩が居た。
声の主はどうやらのり姉らしい。
「ハーイ!エブリワン!!」
右手を上げながら此方に近付いてくる。
「ピザポ君ー?駄目でしょ勝手に出歩いちゃー。
危ないよー?不審者でるよー?」
ピザポは不思議そうな顔をした。
「いやいや、俺高校生ですし。男ですし。てか、何でここに居るんですか?」
のり姉が、ニヤッと笑った。
「高校生の男子だからだよー?変態を嘗めないでよー?新しい扉抉じ開けられるよー?」
「え?マジ?怖ッッ!!」
「でしょーー?」
うんうん、とのり姉は頷いた。
そして、腰に手を当てて宣言した。
「じゃ、コンソメ君家に泊まり行こーか!!」
・・・はあ?!
もう話に付いて行けない。
「・・・何を、」
「行こーーーーか!!!!」
「・・・はい。」
僕等は、何故か僕の家に行く事になった。
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そして、ここは僕の家の仏間。
勿論両親にはこってり搾られた。
あ、因みに僕の両親は僕とのり姉の関係(ほぼ主人と下僕)を知っているので、その事については何も言われなかった。
・・・話を元に戻す。
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最初に口を開いたのは、のり姉だった。
「で、何があったの?」
「実はーー(ry」
説明を聞き、のり姉は数回頷いた。
そして一言。
「バカじゃないの?」
僕&薄塩&ピザポ(゜ロ゜)
のり姉がピザポを睨み付けた。
「ピザポ君ー。もしかして、そんな下らない事でわざわざ私を呼び出したのー?」
ピザポが困った様な顔をした。
「だって、本当に・・・!」
全て言い終える前に、のり姉が言った。
「色々と起こったって?じゃ、何か見た?何か感じた?見えるんだから、分かるでしょ?」
ピザポが言葉を詰まらせる。
「・・・それは。」
フン、とのり姉は鼻を鳴らした。
「大体、チェーンメールなんて世界中に何通出回ってると思ってんの?送らなかった人が全員死んだら今頃人類何て絶滅してるってーの!出て行く幽霊も大変でしょー?バカなの?死ぬの?頭にババロアでも詰まってんのーー?!」
・・・のり姉って、こんなキャラだったっけ。
そっと薄塩に聞いてみた。
「・・・まあ、マイブームみたいなもんだから。」
マイブームで暴言を吐かれちゃ堪らない。
ピザポはもう涙目だ。
「・・・ごめんなさい。じゃあ、一連の事はメールとは全く関係無かったんですね?」
のり姉は一度大きく頷いた。
「何回も言わせないでよ。バァカ。」
ピザポは、ホッと溜め息を吐いた。
「良かった・・・。」
「もう寝なよ。昨日も録に寝てないんでしょ?明日ピザポ君全員にケーキ奢りね。」
のり姉が、ニヤッと笑った。
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ピザポがスヤスヤと寝息を立てている。
「寝顔・・・結構可愛いねー・・・。」
のり姉が、相当不穏な発言をした。
「や、止めろ姉貴!」
薄塩が必死の覚悟で止めようとする。
僕は、眠っているピザポに目をやりながら、のり姉に言った。
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「・・・何で、あんな事言ったんですか?」
のり姉が此方を見る。
一瞬の沈黙。
クスリ、とのり姉が笑った。
「・・・ああ、コンソメ君にはバレてたかぁ。流石だねー。」
僕は続けた。
「あれは・・・何だかとても嫌な感じがしました。それにあの声・・・。聞き違いだとは・・・。」
コクリ、のり姉が頷いた。
「うん。憑いてた。」
「なら何故!!ムグッッ・・・!」
僕は思わず大声を出しそうになった・・・が、薄塩に口を押さえられた。
「コンソメ。ピザポが起きる。」
のり姉が、薄く笑う。
「コンソメ君。・・・今のピザポは?」
薄塩の手を外し、僕は答えた。
「・・・何もいないです。」
「そゆこと。」
僕がそれ以上聞いてみてものり姉は何も教えてはくれなかった。
観念して、もう眠る事にする。
お休み・・・。
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ユサユサユサ
誰かに揺すぶられて起きた。
揺すっていたのは薄塩だった。
「・・・どうした。こんな時間に。」
薄塩が真面目な顔で言う。
「教えてやるよ。」
「・・・何を?」
まだ頭がハッキリしない。
薄塩はチラッとのり姉の方を見た。
「姉貴のさっきの行動の訳。」
一気に目が覚めた。
「・・・姉貴には、言うなよ。さっきのは、姉貴なりの気遣いだからな。」
「ああ。勿論。」
僕が返事を確認し、薄塩は話始めた。
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コンソメ、確かにピザポには何かが引っ付いていた。・・・恐らく、結構ヤバい感じのが。姉貴が本気出さなきゃならない位の。てか、知ってると思うけど、あんな風に相手の見える見えない関係無く干渉してくる奴って、基本ヤバいから。俺等じゃ太刀打ち出来ない。何で世間じゃ、
《幽霊=色々チート》
なのか分かるか?見えない人達に干渉出来る位の強い奴しか、出て来れないからだよ。守護霊とか相手が特定個人なら兎も角・・・・・。無差別に呪うとか祟るとかする奴は基本かなりの悪霊だ。・・・今回も、そうだったな。
「じゃあ何故・・・。どうにか消えてくれた様だけど、自衛の為にも、ちゃんと教えておいた方がいいんじゃ・・・?」
言ったろ?どうせ知っても太刀打ち出来ない。だったら、下手に知るより、知らない内に追い払った方がいい。
「追い払うって・・・。」
いいか?あっちにとって重要なのは、相手に如何にして自分を意識して貰うかだ。意識して貰う事によって縁を繋ぐんだな。ぶっちゃけ回す回さないはあんまり関係無い。取り敢えず大切なのは《意識させる》事だ。
だが、逆に言えばこれは、意識しなきゃ大丈夫って事でもある。
無差別攻撃してくる奴ってのは基本あんまり執着しないからな。まあ、勿論例外も居るけど。けど、なんてったってターゲットは何人も居るし。何も見えない聞こえない気付かない、で耐えてりゃ、結構どっか行く。で、姉貴がコンソメに教えなかったのは、もしコンソメが今回のピザポみたいになっても助かる様にって事。まあ、俺が教えちゃったけど。
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そこまで言うと、薄塩は少しだけ申し訳なさそうな顔をした。
「・・・本当は、教えない方が良かったんだけど、コンソメは知りたかったみたいだし、多分何かに憑かれる事も無いだろうから。」
僕はそっと頭を下げた。
「ああ。分かって良かった。でも、憑かれる事が無いって・・・?」
「・・・・・・Zzz」
これでは、当分起きそうに無いな。
僕はまた、目を閉じた。
《意識しない》か。
出来るだろうか?
作者紺野
どうも。紺野です。
たまには怖い話を書こうかと思ったのですが・・・
怖くないですね。
話はまだまだ続きます。
良かったら、お付き合い下さい。
・・・皆さん、回す回さないは関係無いですよ!
《意識しない》のが大切なんです!