リサイクルショップ〜シリーズ16 猫の捜索依頼〜

中編4
  • 表示切替
  • 使い方

リサイクルショップ〜シリーズ16 猫の捜索依頼〜

リサイクルショップの上の階に探偵事務所があると聞いたので、私はいなくなった猫の捜索を頼むために、その事務所に向かつた。

私の名前は

nextpage

『林 櫻子(さくらこ)』

nextpage

ウチの『マロン』ちゃんがいなくなったの…

そう、探偵とは思えない格好をしたチンピラ風の探偵に言うと…

nextpage

「そんなもん、てめえで探せよ…幾ら出すんだ…?」

nextpage

とこれまた探偵とは思えない事を言った。

エアコンの無い事務所は暑さのせいか、蒸し風呂のようにムンムンとした空気が流れている…

nextpage

「この部屋暑いわね…エアコンはつけないの?」

nextpage

と聞くと

nextpage

「金がねえんだよ…だから聞いてんだろ幾ら払うんだ…?それによって探し方も色々と変わるんだよ…」

nextpage

とても探偵とは思えない…

親切心が無い。

マロンちゃんは見つかって欲しいし、自分は仕事の都合があって探す暇がない…

仕方なく

nextpage

「分かったわよ…これでお願い」

nextpage

と、一万円札を二枚テーブルに置く。

すると、暑さで眉間にシワを寄せていた探偵の顔が、ニカッ…と笑顔に変わり

nextpage

「かしこまりました!あと、見つかりました時には、更に頂けますよね?…ねっ?」

nextpage

と仰いでいた扇子を閉じビシっ!テーブルのお金を叩いた…

笑顔が気持ちが悪い…

いや、怖い…

nextpage

「えっ…ええ…勿論…見つけていただいた時には、弾みます。」

nextpage

ニヤァァと笑い、では早速っ!と立ち上がり、クルッと机に向かうと紙に何やら書き始めた。

そして、明日からになってしまいます…と話しながら、紙を差しだした。

そこには、証明書と殴り書きがされていた…

nextpage

「そこに、見つけた時に支払う金額を書いてもらいます?うふふ」

nextpage

仕方がないので30,000と書き込んだ…

探偵ってこんな感じだったかしら…なんか違うような気がする…

ペンをテーブルに置く。

もう、この暑い部屋にはこれ以上いたくなかったので

nextpage

「じゃ…お願いね」

nextpage

と、立ち上がった。

お任せを…的なポーズをとり頭を下げる『お下品探偵』…

扉を開き外に出て、何と無く後悔した…

あの人…本当に大丈夫かしら…?

夏の日差しがカンカンとアスファルトに刺し、温度が更に上がる真夏の暑い日だった…

nextpage

--------------------------------

暫くすると、探偵から電話があった

nextpage

『あの…見つけましたよ…猫のマロンちゃん…』

nextpage

えっ!本当?

だが、声になんだが元気が無い…

nextpage

「今夜、仕事が終わりましたら…そちらに伺いますので…」

nextpage

と言うと…

nextpage

『え?来るんですか?いやぁ…来ない方がいいかと…』

nextpage

何を言っているのか…

見つかったのなら、マロンを迎えに行くのは当たり前だ…

nextpage

「何故ですの?」

nextpage

『手っ取り早く言っちまいます。死んでます…ズタボロになってます…見ない方がいいことは明らか。」

nextpage

なっ!?

nextpage

嘘!

嘘よ!

信じないわよ!

この男の事だ、恐らく探すのが面倒になって死んだなどと言って、仕事を放棄しようとしてるんだわ!

nextpage

「迎えに行かせて!今夜伺います!」

nextpage

『あ…そう、来ちゃうんだ…弱ったなこりゃ…分かりました。お待ちしています…』

nextpage

--------------------------------

事務所の扉の前に立ち、扉を叩く…

nextpage

『コンコン…』

nextpage

「誰だ?翔太か?」

nextpage

「いいえ…林です…猫を受け取りに参りました。」

nextpage

すると、直ぐ扉が開く…

アロハシャツの上からジャケットを羽織り、スラックスを履いた、前とは全く違う格好をした探偵がペコっと頭を下げ、どうぞ…と通してくれた。

事務所内を見ると、もう一人男がいた…

口を縛り、更に足と手にも縄が掛けられ、身動きの取れない状態…殴られたのか顔には大きな痣が所々に出来ていた。

nextpage

「何ですの?これは…」

nextpage

「そいつの家に猫がいましたよ…なので、そいつから事情は聞いてください…それから…猫の死骸はそこの黒いビニール袋に入ってます。

俺…今少し、厄介な仕事をしてましてね…あまり、かまっていられないんです…お金は結構です。その臭いもん早く持って帰ってください…」

nextpage

と、冷たく言った。

確かに、事務所内には死臭が漂っている…

袋のそばに行き、開けようとすると

nextpage

「わぁ!!…やめときな…中身は間違いなくあんたの猫だよ…首輪があったから、外してそこに置いてある…」

nextpage

と探偵はテーブルに指を指した

ブルーのティファニー製の首輪が、血塗られた状態で透明の袋に入れられていた…

間違いなくマロンのものだ…手に取り首輪の金属プレートを見た…

名前もMARONと掘られている…

震えが止まらない…

縛られた男を見た…彼も震えていた。

男に近づく…

口を塞いだ布を取ると

nextpage

「辞めて…殺さないで…」

nextpage

と、力なく涙を流した。

nextpage

「私は貴方を殺したりしません、何故ですの?私のマロンちゃんが貴方に何を…」

nextpage

すると…

nextpage

「ほ…ほんの、あ…遊びのつもりだったんです…ネット上で…写真を載せて…耳を千切れとか、目玉をくり抜けとか…皆も盛り上がってきたもんですから…つい」

nextpage

言葉を失った。

自分でも気がつかないうちに、彼の頬に平手を食らわせていた。

首輪とマロンの入った袋を手に取り、約束通り三万をテーブルに置いて事務所を後にした。

nextpage

外に出ると、月が出ているのか明るい夜だった…

裏路地が何時もよりもずっと明るい…

猫が一匹ぴょこんと出てきた…

よく見ると…

nextpage

え?

nextpage

マロンちゃん?

nextpage

嘘!?生きてる!

nextpage

急いで駆け寄る。

すると…

nextpage

「ごめんね、ママ…僕、死んじゃった…サヨナラを言いに来たんだよ…ありがとう…」

nextpage

と、すうっと消えてしまった。

nextpage

『ガタ…』

nextpage

頭上で音がした

階段の上を見ると探偵さんが、鼻を啜りながら

nextpage

「もっと早く見つけてやれれば良かったんだけどよ…すまねえ…」

nextpage

と、唇を噛み涙を堪えていた。

Concrete
コメント怖い
0
7
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ