町をぶらぶらすることが日課になっている…
散歩に連れて行ってくれる主人の顔を、いつもの公園で舐めまわす…これも日課だ…
我輩はどうやら、犬という生き物として生をうけたようで、普段は鎖に繋がれ、主人のウチの庭で生活している…
たまに来る猫のユマが我輩の家を占領することがある…
別に構わないが、寒い冬ともなると迷惑の極みである…
最近、主人の『敬三氏』が慌ただしく飛び回っている…
そういえば、娘の『絵美子』の姿が見えない…どこに行ったのか…?
匂いもしない…
我輩のウチの前を行ったり来たりと、目障りではあるが…居ないとなると気になる…
だがそういえば、今日…家の中に運ばれた眠った人間から微かだが彼女の匂いがした…
でも、それは何故か血肉の匂いに混じって香っていた…
絵美子は死んだのか…
死臭の臭い…
折角なので、少し肉を分けてもらいたかったものだ。
今日はちっとも我輩の相手を誰もしてくれない…
一体、家の中で何をしているのか…
次から次と人は出入りしているのに。。。
お?彼奴は確か、リサイクルショップの店主じゃないか…
珍しいな…ここ最近姿を表さなかったが、そこは大目に見てやろう…
彼ならば我輩の頭を撫でてくれ…
…なんだおい!
素通りとはご挨拶だな…
何時ものように我輩を撫でるのが、貴様の役目だろ…?
一体今日は何事が起こったのだ?
それに、この煙の臭いは何だ?
奇妙な臭いだ…
この間、このウチの婆さんが死んだ時にもこんな臭いがしていた…
……しかし、誰一人我輩の相手をしないな………
ん?
何だあいつは…
今来た人間の雄…見たことのない奴だ…
血の匂いがする…
肉でも持っているのか?
奴が手にしている箱…あれの中身はなんだ…?
この血の匂いは、絵美子の血と同じ匂いだ…
我輩に気づいたのか、近づいてくる…
目の前にその男が立つ…
箱を開けた。
我輩の茶碗に生肉を入れた…
くれるのか?
へへへ…ありがたい…丁度腹が減っていたところだ…
我輩が肉にかじりついていると、奴は何やら話していた…言葉はよく分からないが…
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「君の主人の味わいはどうかね?ひっひっひっ…私はこれから新たに素材を採りにいくところだ…千石 美緒…あの女の肉は美味いだろうな…君にも後で分けてあげるよ…ひっひっひっ…」
作者ナコ