「ねぇ…まだ起きてる……?」
「あぁ…俺はまだ起きてるぞ…」
「よかった…もう寝ちゃったかと思った」
「嫌だなぁ…お前が寝るまで、俺が寝るはずがないだろ?」
「ふふっ…そういうところ、私好きよ…」
「そうかい。それはよかった…」
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そんな内容が薄い話を2人は続けている。
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「…今日も夜空が綺麗ねぇ…」
「…そうだなぁ…いつ見ても綺麗だなぁ…」
「そういえば、あの日もこんな夜だったはねぇ…」
「…あの日…?…あぁ!あの【運命の日】かい…?確かにこんな夜空だった気がする…」
「あの日がきっかけで私たち、付き合い始めたのよねぇ…」
「そうだなぁ…。…そうだったなぁ…」
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2人は過去を思い出しながら話を続ける。
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「…あなたが私の家まで来て…。そんなあなたの手には、赤い薔薇の花束…。とても嬉しかったのが最近のようだわ…」
「そんなこともあったなぁ…。お前の驚きと感動が混じったようなあの表情。
今でも覚えてる…」
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男は今にも泣き出しそうだ。
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「…ねぇ。また私にプロポーズしてみて。
あの日みたいに…」
「…あぁ。分かった…。よく聞けよ?
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【僕は、あなたのことが大好きです。どうかお付き合いください!】」
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ピーーーーーーーーー
機会音が無慈悲に鳴り響く。
「おい…?」
返事はない。
「おい…なぁ…返事ぐらいくれよ…」
彼女は静かに笑っている。
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その姿を見て、男は膝から崩れ落ちた。
目からは涙を垂れ流している。
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…暫くの時間が経っただろう。
男は、おもむろに立ち上がりこう言った。
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「僕は言ったよな…。【お前が寝るまでは、僕は寝ない】って。」
「その約束を、今果たしてやるからな」
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男は、病院の屋上にへと足を運び始めた。
作者赤庭玖繰