震災から数年後、少しずつ活気を取り戻す街並み。
我が家の娘もケビンのお散歩に付いてこれるくらいになりました。
ケビンのお散歩は主に実家の三人が担当でしたが、休日のお天気の良い日は、私達も連れ出しました。
ケビンはだいぶ年を取り、歩くのもゆっくりになりました。
それでも娘と一緒に日光浴したり、突堤でジャーキーを食べるケビンはまだまだ元気でした。
そんなある日。
たまたま私は休暇に入っており、実家に娘を連れて泊りに来てました。
夜になり、お散歩に連れ出そうと準備をしていましたが、いつもの元気がありません。
「ケビン、お散歩やで?」
上目遣いでチロッとみるケビン。
暫くするとそのまま寝てしまいました。
「明日、病院に連れて行こう。」
その日は夜中にお散歩をせがまれてもいいよう、ケビンの横で寝ました。
目覚めると朝。
結局昨晩はケビンも起きなかった様子。
思ったより元気なのでお散歩がてら、病院へ連れて行きました。
「ケビン君、どうぞ。」
名前を呼ばれ、診察室へ。
採血と検診、栄養剤の点滴を済ませ、帰宅しました。
暫く経ち食欲も少し戻り、お散歩も行けるまで回復したケビンを連れ、検査結果を聞く為に病院へ行きました。
「ケビン君15歳やもんね、この犬種でこの年齢はものすごい長生きよ。普通は10歳くらいやからね。」
「ゆ〜ちゃん、ケビン君は老衰の域に入ってるよ。幸い命に関わる悪い箇所はないから安心してね。でも、内臓機能が弱ってきてることは確か。ケビン君は人間の年に換算すると、90歳近いからね。」
「しかし、こぉんな(手で小さな丸を作りながら)小さかったのに、ケビン君、あんた大事にしてもろたから長生きさんなんやで。ホンマ運のええ子や。飼い主さんに感謝しいや。」
頭を撫でてもらって満足そうなケビン。
院長はこうも仰いました。
「ゆ〜ちゃん、もしかしたら夏越せんかも知れん。もしもの時は• • •」
緊急の携帯番号を教えてもらい、その日は帰りました。
あくる日、私の休暇も半分を過ぎたので、一旦自宅に帰りました。
主人に事情を話すと、出来るだけ側に居てあげなよ。といってくれました。
なので主人が出勤したら私も実家へ、夕方、帰宅する。という生活をしました。
休暇も終盤、金曜日の夜。
娘が寝てから主人と話していると、
「なぁ、俺もケビンの残り時間、少しでも一緒におらせてくれへんか?」(居させてくれないか?)
「ありがとう。ケビンも喜ぶよ。」
実は主人一族は昔、猫を病気で亡くし、その時近くにいてやれなかった事を未だに悔やんでいました。
ケビンには猫にしてやれなかった事をしてやりたい。
主人の願いでした。
そして休日は時間を決めて実家へ行くというスタイルになりました。
ケビンは緩やかではありますが、少しずつ弱っているのが分かりました。
梅雨が明け、本格的な夏に突入すると、ケビンはオシメをするようになりました。
両親や弟が中心となって介護をしてくれました。
もちろん私達夫婦も進んで参加しました。
当時大学生だった弟の彼女もケビンの目ヤニを拭いてくれたり、今思うとケビンはなんて幸せ者だったんだろう、と関わった全ての方々に感謝してもしきれません。
オシメをするようになったケビンですが、大きな身体にも関わらず、床擦れが全く出来ませんでした。
皆が不思議に思ったのは言うまでもありません。
ある日、午前様で帰宅した弟は、ケビンの様子を見ようとリビングを覗きました。
ケビンは身体の右側を下にして寝ていたそうです。
弟がお風呂から上がり、
「そうや、寝る前に向き変えとったろ。」(向きを変えてあげよう)
リビングへ行くと。
ほぼ寝たきり状態のケビンの身体が左側を下にした状態にかわっていたそうです。
「あれ?向き変わった?」
朝になり、弟が両親に聞くと、朝起きるとよく向きが変わっているとのこと。
昼間は2〜3回、向きを変えるようにしていたが、夜中は三人とも自分以外の家族が向きを変えてるものだとおもっていたのだとか。
この件に関しての真相は分からず。
和田さんが変えてくれたのかな?と思ってます。
弟が夏休みに入り、暑さも本格的になってきたある休日の夜。
父から電話がかかってきました。
「今、ケビンが急に苦しがって、動物病院の先生に往診に来てもらう手配したから。」
取るものとりあえず、車を飛ばしました。
その車の中で娘が妙なことを言いました。
「ケビンには仲良しのおじいちゃんがいるから大丈夫やで。」
私は溢れる涙を拭いながら頷くのが精一杯でした。
「娘にも見えてたんや。」
和田さんがケビンの側にいてくれる。
少し安心しました。
次で和田さんシリーズは最終回です。
ご拝読ありがとうございました。
作者ゆ〜
皆様読んでくださりありがとうございます。
なかなか文章を、まとめられず、少し伸びてしまいました。
次こそ和田さんとケビンの感動秘話クライマックスです。