短編2
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卒業式

つい先日、俺は高校の卒業式を迎えた。

今思い返すと、とても早かったように思う。

思い出がたくさんありすぎてどれを話そうか迷うが今日は卒業式までの1ヶ月間で起こった不思議な話をしよう。

卒業式まで残り1ヶ月となり、俺達は思い出作りに必死だった。

勉強もろくにせず、遊び呆けていた。

俺は親友である太一、大貴、和希の4人でいつも遊んでいた。

そんな中で俺達は言葉では言い表せないくらいに悲しい出来事に見舞われた。

親友の太一が交通事故で病院に緊急搬送され意識不明の重体だとゆうことを聞かされ俺達は一目散に病院へ走った。

だが、俺達が着いたときはもうすでに息絶えていた。

どうして?

どうして太一が死ななくちゃならないんだ?

残り1ヶ月で楽しかった高校生活も終わり、これから大学へ進学して新たな自分を探しに行こうというときに。

僕はそればかりを考え前までの元気は無くなった。

遊ぶのもやめた。

そんな元気は無かった。

太一が死んで、俺達が楽しく遊んでることに罪悪感を覚えたからかもしれない。

それでも時は待ってくれるわけもなく、卒業式の練習や準備などが着々と進められて行った。

そして、卒業式1週間前の事だった。

クラス全員の意見で、卒業証書授与の時、太一の名前を呼ぼうということになった。

先生達も全員一致で賛成だった。

そして卒業式当日。

椅子には太一の写真が飾ってあり、まるで太一がいるような、何事も無かったかよように卒業式が始められた。

卒業証書授与式が始まり、次々に名前が呼ばれて行った。

太一の写真は先生が持って、卒業証書を取りに行くことになっていた。

太一の名前に近くなるにつれて式場が静かになっていくのが分かった。

そして太一の前の人が終わり、次が太一だという時には会場の全員がステージ上で笑った太一の写真を見つめていた。

校長はゆっくりと太一の名前を呼んだ。

「山岡太一」

先生が歩き始めようとした時だった。

「はい」

とどこからか返事のような声が聞こえてきた。

会場は少しざわつき、先生もどうして良いか分からなくなっていた。

僕達は何故かそれが太一の返事であると思った。

声の感じが少し太一に似ていたと思ったからかもしれない。

だがそこに太一がいるような気がして涙が出た。

会場の色んなところから鼻をすする音が聞こえた。

涙でぼやけた俺の視界には、はっきりとそこに立ち満面の笑顔で卒業証書を手に持つ太一の姿が見えた。

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黒歌さんコメントありがとうございます。
あの世でも楽しんでいると良いなと思います。

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幽李さんコメントありがとうございます。

そう言っていただいて光栄です!

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ぱっくんさんコメントありがとうございます。
卒業式で別れた友達が今どこかで頑張っていると思うと力になり元気になりますよね。笑

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ほっこり。暖かくなります。
太一さんお元気だといいですね。

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いい話ですね。

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泣(´Д` )悲しくもありさみしくもあり、みんなと一緒に卒業できてよかったねと思う気持ちもあり、それぞれ違う場所に行ってしまうけれど忘れないでねの気持ちもあり。
まさに「卒業式」、いい話でした。

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