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長編10
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暗闇かくれんぼ

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これはむかし、

僕が中学生のときに、学校で体験した出来事。

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僕が入学した年は、

ちょうど新校舎の建築が大方終わった年で、

旧校舎の方は、

建物自体は残っていたが、すでに立ち入り禁止となっていた。

出来事は、その旧校舎で起こった。

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入学して一週間程たった頃。

…ある噂が、僕の耳に入ってきた。

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「旧校舎の、三階。

廊下を突き当たった左手にある、演劇部室として使われていた部屋に、

一枚の大きな"姿見"があり、

学校が閉まったあとにその姿見を覗くと、子供の霊が写るらしい」

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…そんな、何ともありきたりな、

どこかで聞いたような噂話だったのだが、

むかしTVで見た「学校の怪談」のようなものが、

自分が通う学校に存在する事が何となく嬉しかった私は、

部活の先輩に詳しい話を聞いてみることにした。

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先輩「…話すのは構わねーけどお前、

ウキウキしすぎじゃねえか?」

僕「や、そんなことないっすよ♪

いいから教えて下さいっ」

先輩「……分かった。

じゃあちょっと耳貸せ、話してやる」

以下はその時先輩から聞いた話だ。

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何でも、四半世紀以上前、

その旧校舎に当時通っていた一人の男子生徒が、

夜に、学校に忍び込んだらしい。

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忍び込んだ理由としては、

その当時すでに、

「演劇部室の姿見に、女の子の霊が出る」

という噂があったから、それを確かめるため。

さらに言えば、自身の度胸を友人達に誇示するためだった。

そしてその男子生徒はおそらく、

いや、間違いなく、その姿見を覗いた。

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…以来、その男子生徒は行方知れずとなり、

彼が消えた直後から、例の姿見には、

女の子ともう一人

「笑う少年」が写るようになったのだとか。

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話を聞き終わり、

僕は震えていた。

震えの原因の2~3割はもちろん、恐怖によるものだが、

残りの大部分はやはり、

「見てみたい」

という、好奇心によるものだった。

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しかし、一人で夜中の学校に忍び込む程の勇気は僕にはなかったので、

とりあえず、数人の友達に話してみる事にした。

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~~~~~

A「へ~、良くできた話だな」

僕「でしょ!?結構リアルだよねっ」

B「そんなに詳しく聞いたの初めてだよ(笑)

……面白そうだね~」

僕「だよね!!」

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…普段から優柔不断で、

中々自分から行ってみようと言い出せなかった当時の僕は、

とにかく話を盛り上げ、相手に行ってみたいと思わせるのに必死だった。

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C「…入りたいの?旧校舎」

僕「えっ…」

急に本心を突かれた僕は、少しうろたえた。

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C「見てみたいんでしょ?その姿見」

僕「……うん」

A「…ま、そんなこったろーとは思ってたけどな」

B「僕はオッケーだよ~(笑)」

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今思えばあのテンションで、見抜かれない方がおかしい話だったのだ。

C「でもあそこって立入禁止で閉め切られてるはずだけど、どうする気?」

A「過去に一人消えてんのに、

キモダメシしたいから鍵貸して下さい、

とでも頼んでみるか?(笑)」

僕「いや、それは…」

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B「それよりは、黙って忍び込んだ方が早いっしょ~」

A「まあそれが一番手っ取り早いよな(笑)」

C「でも夜はゴメンだよ。

明日の授業って3時までだっただよね?

行くならそのあとの、日が沈まないうちがいいよ」

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…僕なんかそっちのけで、どんどん話が進んでいく。

僕「あの、ごめんなさい…(泣)

お願いだから、入れて下さい…!」

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その後、どうにか会話に参加させてもらい、話し合いを重ねた結果、

旧校舎の裏手にあった古い体育館が、直接校舎の中に繋がっていたため、そこから入る事になった。

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僕らの年頃なら、どんな奴でもこの手の話には食い付くんだなぁ…

その日の帰り道、僕はしみじみそんな事を考えていた。

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そして翌日、

予定通り午後3時に授業を終えた僕たちは、

そのまましばらく教室に残り、他の生徒たちが帰るのを待っていた。

窓から校門を見下ろし、帰っていく生徒の数がまばらになってきた所で、

いよいよ、旧校舎へと向かった。

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A, B, C, そして僕の4人で、

旧校舎裏の体育館の入り口についた時、時刻は午後4時を過ぎていたと思う。

僕「…じゃ、開けるよ」

呟くと同時に取手に右手をかけ、力を入れる。

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古くて錆び付いているのか、扉は動かなかった。

両手で力一杯ひくが、やはりビクともしない。

B「…やっぱかかってる?」

僕「…うん、そうみたい」

C「ま、そりゃそうだよね」

A「なーんだ。つまんねー」

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薄々分かってはいたが、案の定だった。

もう帰る?というCの声も聞こえていたが、

…これで終わりと言うのは、やはりどうも納得がいかなかった。

その時、Bが呟いた。

B「…ね、あそこ。

開いてるじゃん」

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彼が指差す方向に目を向けると、

30m程先に小屋のようなものがあり、

入り口のドアがはずされ、中に入れるようになっていた。

僕は、なにかもう祈るような思いで、小走りにその小屋に向かった。

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中に入ると、

ほこりを被ったストーブ、

錆び付いたスコップなど、

雰囲気的に、昔の用務員室か何かのような場所だった。

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C「…校舎には、繋がってなさそうだね」

後ろから入ってきたCが話しかけてきた。

僕「うん……あの、さ」

C「なに?」

僕「これ使って、窓から入れないかな」

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私が指し示した物を見て、Cは目を丸くした。

C「まさか…これで体育館の窓から入る気?」

それは、古びた脚立だった。

僕「これ、開いて一直線にすれば、届くと思わない…?」

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小屋から出てこない僕たちを心配してか、

あとの2人も入ってきた。

話を聞いて、口を開く。

A「いよいよ、不法侵入だな」

B 「いいね~♪好きだよそういうの」

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C 「好きとかそういう問題じゃないよ…

窓が開いてるとも限らないし、第一危ないでしょ」

Cが言うことも、やろうとしている事の危険度も十分わかっているつもりだったが、

僕はひかなかった。

僕「僕が上がるから、下で支えてて」

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~~~~~

最近、久々にその時のメンバーの1人と会い、

酒を飲んでいたときに聞いたのだが、

この時の僕は、どこかいつもと様子が違っていたという。

普段の様子からは想像できないほど提案が無謀で、

そこまでしてその姿見が見たいのかと、多少の恐怖すら覚えたという。

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B「開いてる~?」

僕「……」

……ガリッ!

ガリガリガリガリ…

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半ば無理矢理ではあったが、

錆びた金属が擦れあう嫌な音を響かせながら、窓は開いた。

ホコリっぽさと、

何とも言えないカビの臭いが鼻をつく。

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A「行けそうかー?」

僕「ケホッケホッ……うん、何とか!」

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小さい体育館だったが、

上からの見物用と思われる細いテラスのような場所があったので、ひとまずそこに着地した。

それから僕は、これまた細い階段を降りて、うっすらホコリの積もったフロアに降り立った。

扉に近づき、鍵を開けた。

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ゴリゴリゴリゴリ…

低い音をたてて、体育館の扉が開いた。

B「うーわっ…ホコリっぽ!」

顔の前で両手をバタバタさせながらBが言った。

A「カビくせーな…」

鼻の下に片手を添えて、Aが呟く。

その時、気が付いた。

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僕「あれっ?Cは?」

A「なにを言ってもお前が聞かねーから、帰っちまったよ」

B 「気づいてなかったのー?」

僕「そっか…」

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B「あっ…ほらあそこ、校舎に繋がってそう」

僕「ほんとだっ…よし、急ご!」

A「…ああ」

B「バレないうちにねー♪」

A「…ここまでしといて、それ言うか」

そうして僕たちは、旧校舎の中へと入って行った。

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…数分後

旧校舎の三階へとたどり着いた僕たちは、

廊下が左右に伸びていたため、二手に分かれる事にした。

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突き当たりを目指し、

一人で進んでいた僕は、

数秒後には、茶色く古ぼけた"演劇部室"という貼り紙の前に立っていた。

僕「…ここだ」

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二人を呼んでから、

おそるおそる、取っ手に手をかける。

ガラガラガラガラ…

A「おぉ、開くのかよ…」

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僕もてっきり、鍵がかかっているものだと思っていたため、

しばらく、部屋の前で立ちつくしていた。

B「…入らないの?」

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その声ではっと我に返り、

とっさに、一歩踏み出した。

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新校舎が完成する直前まで、

旧校舎には人が出入りしていたとは聞いていたが、

この演劇部室に関しては、

おそらくもう十年以上、人が来ていない。

そんな感じだった。

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何もかもが厚いホコリの絨毯を被っていて、

少し歩く度にそれが舞い、

窓から射し込む西日に照らされキラッと光る。

この日僕がこのドアを開けた事によって、何年ぶりに外の空気が入ったのだろう…

まるでそこだけ別世界だった。

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A「…すげぇな」

B「とりあえず、窓開けない?」

僕「そうだね…」

A「バレッから、空気入れ換えたらすぐ閉めろよ」

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窓を大きく開けると、勢いよく風が逃げていく。

部屋の空気が入れ換わる事によって、中の時間が一気に現代に追いついた、そんな気がした。

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~~~~~

B「…見つかんないね~」

僕「うん…」

かれこれ30分は探していただろうか。

目的とする姿見は、見当たらなかった。

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A「…なぁ、ちょっとコレ見てくれ」

そう言いながらAが近づいてきて、

掌にのせた、キラリと光る物を見せてきた。

僕「…」

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A「割れちまったから、処分したみてーだな」

その小さな鏡の破片は、すでにその部屋に、

姿見が存在しないことを、

僕たちに告げていた。

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A「ここまで来といて、そりゃあねーよな」

Aが静かに笑う。

僕「…しょうがないよ」

その時、唐突にBが提案してきた。

B「ね!かくれんぼしない?」

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僕「はっ?」

…何を言い出すんだ。

おそらくAも、そう思っただろう。

B「この部屋の中だけでも結構広いし、

ただ帰るのって何か勿体ないじゃんっ

取り壊される前の記念にさ!」

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僕「…何でかくれんぼなの?」

B「ん、別に…?

カメラがあれば写真でも撮るんだけどね~

…ひょっとしたらやってる最中に探し物が見つかるかも知れないよ?」

僕「…」

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A「…ハッ(笑)

ホント、思った事をすぐ口に出しやがる。

お前とは真逆だな」

こちらを横目で見ながら、Aが言った。

僕「…そうだね、やろっか」

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先程まで眩しかった西日も、

すでに沈みかけていた。

A「もうそろそろ暗くなるな」

B「ふふ…名付けて"暗闇かくれんぼ"!

これは話のネタになるぞ~」

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~~~~~

い~ち…にーぃ…

さぁーん…

僕はじゃんけんに負け、

部屋の真ん中で両目を瞑って数を数えていた。

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…数えながら僕は、妙な空気を感じていた。

先程から何となく、僕のカウントに呼応して、

部屋の時間が、逆上ってるような…

この違和感をむりやり言葉で言い表すなら、

恐怖と、そして…「懐古」

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カウントを重ねるたび、

恐怖と共に何とも言えぬ"懐かしさ"が込み上げてくる…

ご~じゅきゅ…ろくじゅっ!

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カウントを終え、辺りを見回す。

先程と特に変わりはない、演劇部室。

日はすでに沈み、昇り始めた月の明かりでわずかに照らされたその部屋の真ん中で、

暗闇に包まれ、僕は背中に冷や汗をかき始めていた。

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僕「もういいか~い…」

当然、返事はない。

慎重に足元を確認しながら、部屋の中を見て回る。

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~~~~~

5分…10分…

感覚的にはもう、15分以上経っているのに、

一向に見つからない。

僕は嫌な予感がしていた。

まさかあの二人、先に帰ったんじゃ…

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その時、外の廊下に人の気配を感じた。

やっぱり…!

一人にして脅かそうとしてたんだ!

僕はドアを開け、外に出た。

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月明かりに照らされた廊下。

その先に、人影が見えた。

お前らふざけんなっ…!

そう言って近づこうとしたその時…

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shake

反射的に、立ち止まった。

なぜならその人影が、

こちらに向かってゆっくりと、

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"おいでおいで"をしていたからだ。

僕はとっさに後ずさった。

しかしここは廊下の突き当たり。

後ろは壁だった。

仕方なく、演劇部室にかけ戻った。

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僕「ハァ…ハァ…」

顔は見えなかったが明らかに、Aでも、Bでもない。

誰…?

一体、誰なんだ…??

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僕はパニックになりかけていた。

むりやり深呼吸をして心を落ち着かせ、

もう一度確かめるために外に出ようとした、その時、

部屋の両隅から、物音が聞こえた。

僕「…っ!!?」

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A「…おい」

B「おっそいよ~」

僕「あっ……お前ら…!!」

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A「…どした!?」

B「あれ~?何で泣いてんの?(笑)」

二人に会えた安心感から、僕の目には涙がにじんでいた。

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shake

次の瞬間、

部屋のドアを、誰かがノックした。

僕「…!!!」

B「やばっ!見つかった!」

A「…チッ」

とっさに物陰に隠れる三人。

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C「おーい、いるんだろ?」

ドアを開けて入ってきたのは、

先に帰ったはずの、Cだった。

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A「何だてめぇか…」

B「びっくりした~(笑)」

僕「なんで…?」

C「何でじゃねーよ。

何時だと思ってんだ」

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まさか心配してわざわざ来てくれたのか…?

一瞬、何ていい奴なんだと思った。

C「せんせーっ、いました!

こっちでーす!」

僕「!!?」

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A「…っ、てめ…!!」

B「ハハ、そういう感じか~…」

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その後、

先生、そして両親からも、こっぴどく叱られたのは言うまでも無い。

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結局、あの人影が誰だったのか、

あの姿見は本当になくなってしまったのか、

何もかもが未解決のままだが、

酒を飲んだ帰り道、Cに言われた、

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C「鏡の中に消えた少年が、女の子に飽きて、

一緒に遊ぼうとしたんじゃない?」

という一言。

その一言のお陰で、今は少し、いい思い出だ。

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以上が、

中学時代に体験した、

忘れられない…僕の、怖話。

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