wallpaper:118
これは、私が中学生の頃のお話。
当時の私は、若さゆえに、
何にでも積極的で、
余計な事にまで首を突っ込む、
やんちゃな少年だった。
nextpage
wallpaper:95
ある日の事。
学校帰り、友達と二人で帰っていたとき、
友1「□△山、って知ってんだろ」
突然、尋ねられた。
私「…うん」
nextpage
友1「この前じーちゃんに聞いたんだけどよ、
昔あそこで、でっけー事故があったらしいんだよ」
私「…事故?」
nextpage
友1「ああ。飛行機事故。
何百人も乗せたジャンボ機が墜落して、
一人残らず、死んじまったんだと」
私「…ふーん」
その時私は思った。
こんな悲惨な話をしているのに、
何でこいつはこんなにウキウキしているんだ、と。
nextpage
wallpaper:213
次の日、登校してみると、
昨日の友達が、
4、5人の男子たちに囲まれている。
nextpage
友2「…ホントかよ」
友1「ああ。らしいぜ」
友5「そういえば親父が、むかーしあの山で、
でっかい山火事があったって言ってたな…」
友1「マジかよ…!それ絶対そーじゃんっ」
何やらとても盛り上がっている。
nextpage
私「おはよ。昨日の話?」
友1「よう!そうなんだよっ♪」
ああ、こいつもしかして…
友1「こいつがよ、あの山でむかし山火事があったって親父から聞いたんだと!
もう間違いねーだろこれ!」
…このテンション。
間違いない…。
友1「行くしかねぇだろっ♪」
nextpage
まあこの時は実際、私自身も、
面白そう。
と思っていたのは事実だ。
この手の話は、
信憑性が高ければ高いほど、
行ってみたくなるのが、この年頃の性(さが)と言ったところか。
nextpage
その後、私たちの間でそれはそれはオカルト話は盛り上がり、
最終的には、
ただ行ってみるにとどまらず、
今度の連休にみんなでキャンプしよう!
にまで話は発展した。
nextpage
wallpaper:218
そして週末。
少しばかりワクワクしながら、
私は待ち合わせ場所である学校へ向かっていた。
正門前にはすでに、4人の友達が集まっていた。
nextpage
友1「おっせーよ」
私「ゴメンゴメンっ」
友2「…これで全員だな」
私「…あれ?友5は?」
友3「彼は病欠~♪」
…びびったなあいつ。
と、おそらく全員がこの時そう思った。
nextpage
そして私たちは、正門前からバスに乗り込んだ。
泊まりがけで行くというだけあって、みんなそれなりに大荷物だ。
友3「ちょ~楽しみ」
友1「なー♪」
nextpage
wallpaper:95
バスに揺られながら私は、
家を出る直前まで行かせる事を渋っていた母親の事を考えていた。
今思えば母は、本能的に悪い予感がしていたのだろう。
しかし当時の私の心の中には、
最終的に母親を説得して送り出してくれた父親への、
感謝の気持ちしかなかったのだ。
nextpage
wallpaper:86
1時間ほどバスに揺られ、目的地に到着したのは、
午後3時を少し回った頃だったと思う。
まだ日も沈んでいないのに、
その山のふもとは妙に静かで、薄暗かった事を何となく覚えている。
nextpage
友4「…そんなに大きな山じゃないと思ってたけど」
友2「こうしてふもとに立ってみると、意外とあるな」
確かに…。
これは少し時間がかかりそうだ。
nextpage
しかしこの時は、なんとも言えないこの不気味さが、
逆に私の冒険心をくすぐっていた。
友1「おーし、登ろうぜ」
nextpage
wallpaper:174
~~~~~
ほの暗い山道を登り始めて約1時間。
頂上まであと少しというところで私は、山道脇の森の中に、
小さな「祠」(ほこら)があることに気が付いた。
私「ねぇ…あれ何だろう」
友2「んあ?」
nextpage
wallpaper:272
友3「あ~コレ…やばいやつ?」
祠を囲むように5人で立ち、しげしげと眺めながら、友3が言った。
友4「やっぱり、あれかな。
その事故で亡くなった人たちを祀ってるとか?」
友2「…だろうな」
…いま思えば、私はこの時から、
言い様のない不安に駆られていたのだ。
nextpage
wallpaper:112
午後5時。
辺りが一層暗くなり始めた頃、私たちは頂上にたどり着いていた。
友1「うーわ…暗っ」
友2「さっさと立てちまおうぜ」
そこから20分程で、テントが2張り完成した。
nextpage
wallpaper:657
~~~~~
友2「ちげーよ…お前、
火の起こし方も知らねーのか?」
友1「炭ならべて火ィ着けるだけだろ」
友2「ちっ…どけよ」
友3「木の枝集めてきたよ~」
友2「いらねーよそんなヒョロいの。
それよりヤカンに水汲んでこい。」
nextpage
情けない話、
当時の私はキャンプに関して何の知識もなく、
それは周りもそうだったようで、何から何まで友2に任せっきりだった。
私「あ…俺は、何すれば?」
友2「知るか。草でもむしっとけ」
私「…わかった。ゴメン」
nextpage
wallpaper:517
~~~~~
そんなこんなで、無事インスタントラーメンで夕食を終え、
コーヒーを飲みながら休憩していると、
友1が切り出した。
友1「ふー…よし、ゆく?」
nextpage
私「…もしかして」
友3「キモダメシ~♪」
友2「やっぱそうきたか…」
友4「あと5分待って…
カップラ食い過ぎて…ッ!」
nextpage
これもまあ自然な流れ。
分かってはいたが、私の頭の中では、
警告音が、かすかに鳴り始めていた。
nextpage
当初、友1が提案した肝だめしのルールは、
1人1個ずつ、あの祠に、
持ってきた飴玉を供えてくる。
というものだったが、
私と友3が頑なに拒否したため、やむなく全員で行くことになった。
nextpage
~~~~~
時刻は、午後8時を回った頃だったろうか。
私たちは、あの祠へと向かった。
友2の左手には、インスタントカメラが握られている。
友1「さすが、用意がいいね」
友2「…」
nextpage
wallpaper:140
ソロソロとゆっくり歩いて行ったので、30分程かかって、
ようやく祠にたどり着いた。
懐中電灯を持っていた私が祠を照らすと、
つい4時間前にみたものが、
より気味悪く、なにか…
今にも中から声が聞こえて来そうな、
そんな不気味さに包まれていた。
nextpage
友1「うっわー…不気味っ」
友3「ねーもう帰ろ、テント戻ろうよ…」
普段は友1よりお気楽な性格の友3が、少し前からやたらと帰りたがっている。
nextpage
友2「おい、持ち前のおちゃらかさはどうした」
友3「たのむよ~、テント戻ろ…」
友2「あと少し頑張れ」
友3「テントがダメなら家帰ろうよ~」
友2「家は無理だろ」
nextpage
友3がすでに限界だったので、持ってきたカメラで記念撮影だけ済ませ、帰ることにした。
「撮るよ…」
祠をバックに一列に並び、シャッターが押された。
nextpage
shake
wallpaper:589
その瞬間、森が…
山が、ざわついた。
nextpage
wallpaper:517
それを感じたのは、私だけだったのか…。
私以外は何事もなかったように、テントへの道を戻り始めた。
しかしテントに戻ってからは、みんな何となく口数が少なく、
それほど時間もたたないうちに、全員寝袋へと入った。
nextpage
wallpaper:122
翌朝、軽い朝食を済ませ、私たちは早々に山を下りた。
一番後ろを歩いていた私だが、
祠の横を通るときは、誰もそちらのほうは見向きもしなかった。
nextpage
wallpaper:214
~~~~~
二日後、学校が終わった後の教室で、
友1が現像した写真を、みんなで見た。
私は、
いや…もはや全員が、
絶句した。
nextpage
shake
wallpaper:116
写真に写る5人が、
燃え盛る火に…囲まれている。
いや…正確には、
全身が燃え盛る人々に、囲まれている。
nextpage
苦しそうに、
助けを求めるように、
両手を前に出し、大口を開けて、
数十人の人々が、迫ってきている。
nextpage
友3「…これ、アイコラ?
…っはは、完成度たけ~」
友2「しゃべんな」
…怖い。
こわい。
nextpage
教室にいるはずなのに、
後ろを振り向きたくなるほど、怖い。
頭の中で警告音が鳴り響く。
どうすればいい…早くしないと。
なにかしないと!
謝りに行かないと…っ!!
nextpage
パニックを起こしていた私を、
友2が呟いた一言が、我に返させた。
友2「こりゃ、マジにお焚き上げが必要だな」
私「…お焚き上げ……。」
nextpage
友2「誰か知り合いに、神主はいないか」
友1「神主…?」
友2「お焚き上げと言えば、神社だろ」
友4「おれこの間、兄貴の合格祈願で〇〇神社に行って、
そこで庭掃除してた人と、話したぞ。
神主とか、よくわかんねーけど…」
nextpage
友2「一刻を争うかも知れん。
今からそこに皆で行こう」
友2の提案で、私たちはそのまま、
〇〇神社へと向かった。
nextpage
wallpaper:435
~~~~~
それから約30分後、
私たちは、神社の鳥居を全力でくぐり抜けていた。
…数秒後には、
ついさっきまで庭掃除をしていたであろう、
箒を持った老人に、
息つく間もなく喋りかけていた。
nextpage
その場で写真を見せ、
事の次第を説明すると、
老人は黙って、何故かニコッと笑い、
私たちを神社の裏へと案内した。
nextpage
wallpaper:553
裏口を抜け、拝殿と呼ばれる建物の中を進むと、
ある部屋で、若い男が正座しており、
巻物の様なものを読んでいた。
老人「〇〇よ。ちょっとよいかの」
男「はい」
nextpage
その男は、この神社の神主だった。
私たちはもう一度写真を見せ、説明した。
神主「……。
あなた方全員、よくぞご無事で」
その一言に、私たちは身震いした。
nextpage
神主「強烈な写真ですね。
…お焚き上げは可能ですが、
あなた方に憑いてる複数体の霊魂は、
今の私では祓いきれません」
この時ほど、人生に絶望した事はなかっただろう。
しかしその直後、希望がさしたのだった。
nextpage
神主「ああ、心配しなくても大丈夫。
今日は父がいますので」
そう言って神主は、横にいる老人を、
改めて紹介してくれた。
nextpage
神主「父は先代の神主なんです。
これも運命の巡り合わせ。
あなた方は運が良い。
私の代になってからは、
父は数週間に一度、境内の掃除をしに来る程度なんですよ?」
nextpage
その言葉に、どれ程救われた事か…
誠、ありがたや。
nextpage
そうして私たちは、
神主に写真をお焚き上げしてもらっている間に、
ひとりひとり、お祓いをしてもらった。
全員のお祓いが済むと、老人は、
老人「最後に一言。
…いや、言いたいことは、わかるね?」
nextpage
友1「はい。もう、
ああいった場所へは、行きません」
全員、強く頷いた。
nextpage
お礼を言って、
神社を後にしようとした、その時。
神主が、小走りに近づいてきて、
尋ねてきた。
nextpage
神主「あなた方は、あの写真に写ってた5人ですよね?」
友1「はい」
神主「撮ったのは、インスタントカメラか何か?」
友1「…そうですけど」
nextpage
私「写真が、何か…?」
神主「いや、写真自体はお焚き上げしました。
ただ、インスタントカメラなら、
あの写真を"撮った人"も、
お祓いを受けなくてはならないと思いますよ?」
nextpage
wallpaper:118
…以上が、
もう10年以上前に体験した、
私の、怖話。
作者黒
昔どこかで聞いた話。
どうも。筆者の2話目の投稿です。
記憶が曖昧なため、大部分が、
筆者の創作文となっております。
誤字脱字には細心の注意を払っていますが、もし見つけた場合、また、
読みにくい部分等ありましたら、厳しく注意して頂けると、
今後に生かせます。
それでは、コメント欄にて。